さし)” の例文
女の方は三十二三でとこから乗り出して子供を抱えようとした所を後方うしろからグサッと一さしに之も左肺を貫かれて死んでいる。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
持て我が寢所ねどころへ來りし故怪敷あやしくおも片蔭かたかげかくれてうかゝひしに夜着よぎの上より我をさし候樣子に付き取押とりおさへて繩をかけしなり此儀このぎ公邊おかみうつたへ此者を吟味ぎんみ致さんと云ひけるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
河岸かしを廻って細川様(浜町清正公様)のさきから、火事場の裏からでなければはいれまいと父も洋服を着て出ていった(その前まではさしっ子を着るのだったが)
おほきにねえさんから小言こごと頂戴ちやうだいしたりなんかしました、へいぢやうさんらつしやいまし、うも先達せんだつての二番目狂言ばんめきやうげん貴嬢あなたがチヨイと批評くぎをおさしになつた事を親方おやかたに話しましたら
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし東京の大火の煙は田端たばたの空さへにごらせてゐる。野口君もけふは元禄袖げんろくそでしやの羽織などは着用してゐない。なんだか火事頭巾づきんの如きものに雲龍うんりゆうさしと云ふ出立いでたちである。
とがめるに及ばぬとおつしやつたお言葉が、ヒシと私の胸をさしましたの、して見ると私などでも余り世間を怨んで、ヒガミ根性こんじやうばかり起さんでも、是れからの心の持ち様一つでは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
かゝりけれどもほ一ぺん誠忠せいちうこゝろくもともならずかすみともえず、流石さすがかへりみるその折々をり/\は、慚愧ざんぎあせそびらながれて後悔かうくわいねんむねさしつゝ、魔神ましんにや見入みいれられけん、るまじきこゝろなり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……どこの通りにももう残りなく笹が立ち、そこ此処の、飾りを売るさしかけの小屋の中に、惜しげなく、あかあかとおこした炭火をかこんだ売り手たちのさし半纏はんてん、革羽織、もうろく頭巾ずきん
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
一、要諌一条につき、事遂げざるときは鯖候とさしちがへて死し、警衛の者要蔽ようへいするときは切り払ふべきとのこと、実に吾がいはざるところなり。しかるに三奉行強ひて書載して誣服ぶふくせしめんと欲す。
留魂録 (新字旧仮名) / 吉田松陰(著)
斯して置は殺生なりさりとて生返いきかへらせなば又々旅人へ惡さをなす者共なればとゞめをさして呉んと鐵の棒のさきのどあたりへ押當おしあて一寸々々ちよい/\よしで物を突く如く手輕てがるに止めを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御座りませんときくより流石さすがの段右衞門も愕然ぎよつて大いに驚きヤア然らば其時の馬士まごめで有たか扨々さて/\うんつよき奴かな頭から梨割なしわりにして其上に後日のためと思ひとゞめ迄さしたるに助かると言はなんぢは餘程高運かううんな者なりとあきれ果てぞ居たりける時に越前守殿如何いかに段右衞門金飛脚かなひきやくの彌兵衞ならびに馬士爲八を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)