出合であ)” の例文
「お出合であいなさい! お出合いなされ! 大久保家おおくぼけのご家中かちゅう方々かたがた、あやしいものがげまするぞ、早く、早く、早くここへ!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あいちやんは爪先つまさき立上たちあがり、きのこふちのこくまなくうちはしなくもそのたゞちにおほきなあを芋蟲いもむし出合であひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
もうすこしで双方がぴたりと出合であつてひとつにおさまると云ふ所で、ときながれが急にむきを換へて永久のなかそゝいで仕舞ふ。原口さんの画筆ブラツシそれより先には進めない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なかには、意外いがいてき出合であってたたかい、あやうくのがれたとみえ、つばさきずついたのもあります。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
みち出合であ老幼らうえうは、みな輿けてひざまづく。輿なかではりよがひどく心持こゝろもちになつてゐる。牧民ぼくみんしよくにゐて賢者けんしやれいするとふのが、手柄てがらのやうにおもはれて、りよ滿足まんぞくあたへるのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
出合であはせた女中ぢよちうに、きなれない、かうすこかすれたが、よくとほ底力そこぢからのある、そしてしたしいこゑおとづれたひとがある。「あ、ながしさん。」わたしこゝろづいてした。はたして松本長まつもとながしであつた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのつりせん巾着きんちゃくにいれて、そとへ飛びだそうとすると出合であいがしらに、カアーンというかね不意ふいに鳴ったので
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして格子こうしを開ける先生をほとんど出合であがしらに迎えた。私は取り残されながら、あとから奥さんにいて行った。下女げじょだけは仮寝うたたねでもしていたとみえて、ついに出て来なかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところへ、貴女あなたがおいでなすつたのに、うしてお出合であまをしたんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
恐ろしい血相けっそうで、望楼の登り口へかけよってくると、出合であいがしらに、上からゆうゆうと昌仙がおりてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
記憶きおくの、次第しだいしづんで痕迹あとかたもなくなるまで御互おたがひかほずにすごほど宗助そうすけ安井やすゐとは疎遠そゑんではなかつた。二人ふたり毎日まいにち學校がくかう出合であばかりでなく、依然いぜんとして夏休なつやすまへとほ徃來わうらいつゞけてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)