ほろぼ)” の例文
大化改新は、先ず蘇我一族をほろぼすことから始められたが、その主たる目的は、天皇家の日本支配の確立、君臣の分の確立ということだ。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
神聖たふとことば二人ふたりむすはしてくだされば、こひほろぼため此身このみ如何樣どのやうにならうとまゝ。つまぶことさへかなへば、心殘こゝろのこりはない。
人は只實心じつしんを旨とし苟且かりそめにもいつはあざむく事勿れと然るを言行相反し私欲をたくましうなす者必ず其の身をほろぼすこと古今珍しからずと雖も人世の欲情よくじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
淫慾いんよく財慾ざいよくよくはいづれも身をほろぼすの香餌うまきゑさ也。至善よき人は路に千金をいへ美人びじんたいすれどもこゝろみだりうごかざるは、とゞまることをりてさだまる事あるゆゑ也。
御自身が、謀主ぼうしゅになってもほろぼしたいほど憎悪する平家ではあるが、それほどにまた、怖ろしい平家でもあるのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに寝ていたコルマック及び愛人アイリイを砦のなかのすべてのものと合せて焼きほろぼしてしまったのである。
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
『お前ばかりではない、お前の肉親の兄も、あの女に弄ばれて、身をあやまったのだ! 身をほろぼしたのだ!』と。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
はげしい恋に身をほろぼしかねない源氏に同情してとった行為が重大性を帯びていることに気がついて、策をして源氏を宮に近づけようとすることを避けたのである。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
殊に彼の身をほろぼした原因とも想像し得る、ある深い悩み、それについては絶えず私に訴えていられたので、——何とかして救って上げたい、と心配していたんです。
むかでの跫音 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
たとへ思ひがけないはずみで捲きこまれたことだつたにしても、彼は自分の中に一脈の危険さを、彼を生かすのもそれだがほろぼすのもそれだ、といつた風なものを感じてゐた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
相馬将門そうままさかど威を東国に振い、藤原秀郷ひでさと朝敵誅伐ちゅうばつの計策をめぐらし、この神の加護によって将門をほろぼしたので、この地にいたり、喬々きょうきょうたる杉の森に、神像をあがまつったのだとある。
さうすると、その先祖は小田原にほろぼされて、それから、野州に行つて、そこで今の主人を
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ういう野蛮人種が我々大和民族と闘って、ある者はほろぼされた、ある者は山奥へ逃げ込んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その末期まつごことばに、一四〇当時信長は一四一果報いみじき大将なり。我平生つねかれあなどりて征伐を怠り、一四二此のやまひかかる。我が子孫もやがかれほろぼされんといひしとなり。謙信けんしんは勇将なり。
あんなやつは後々のために早くほろぼしてしまわなければいけない。志毘しびは今ごろはつかれて寝入ねいっているにちがいない。門には番人もいまい、おそうのは今だとお二人でご決心になりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
迷信でたちの悪いのは国をほろぼし民族を危うくするのもあり、あるいは親子兄弟を泣かせついには我身を滅ぼすのがいくらでもある。しかし千人針にはそんな害毒を流す恐れは毛頭なさそうである。
千人針 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
冬と風とにもほろぼされず
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
これ邪智じやちふかきゆゑ也。あに狐のみならんや、人も又これたり。邪智じやちあるものは悪㕝あくじとはしりながらかくなさば人はしるまじとおのれ邪智じやちをたのみ、つひには身をほろぼすにいたる。
あれほどしたたかな小角が、どうしてほろぼされたかといえば、じぶんの腹心とたのんでいた呂宋兵衛にうらぎられたがため、——つまりいぬに手をかまれたのと同じことだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして女房と番頭とが不義を働いているらしいということをお角の口から前以って吹聴させて置いて、よい頃を見測らって二人の悪人が予定の計画通りに女房と番頭とをほろぼした。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女たちの父は入婿いりむこであった。母は気強きごうな女であった。また芸妓歌吉の母親や妹も気の強い気質であった。その間に立って、気の弱い男女は、互いに可愛い子供を残して身をほろぼしたのである。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もとより雲州うんしうは佐々木の持国もちぐににて、塩冶は三一守護代しゆごだいなれば、三二三沢みざは三刀屋みとやを助けて、経久をほろぼし給へと、すすむれども、氏綱はほかゆうにして内おびえたる愚将なれば果さず。かへりて吾を国にとどむ。