“不肖:ふしょう” の例文
“不肖:ふしょう”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治26
夏目漱石3
森鴎外3
国枝史郎2
芥川竜之介2
“不肖:ふしょう”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.3%
歴史 > 伝記 > 個人伝記1.3%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
法名ほうみょう孤峰不白こほうふはくと自選いたしそろ。身不肖ふしょうながら見苦しき最期も致すまじく存じおり候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「では、何と仰っしゃいます……。不肖ふしょう藤吉郎の言をおきき容れ下さいまして、お市の方さま、和子さま達のおん身を……」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょうながら我々、未来の大望たいもうを抱いて国を去って奔走する目的は、三千や一万のところにあるのではない。
不肖ふしょうは河野久と申す者でございますが、これからお弟子になされてくださいませ、一体ここは何と云う処でございましょう」
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これ然しながら不肖ふしょう私の語ではない、実にシカゴ畜産組合の肉食宣伝のパンフレット中に今朝拝見したものである。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
たたえたほどであるが、なお決して、その父に比して、子の勝頼を、いわゆる不肖ふしょうな者とはしていなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょう黒田勇は興国塾生一同を代表して、友愛塾の諸兄に初対面のごあいさつを申し述べる光栄を有します。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「水も洩らしは致しませぬ。御明敏な重喜公、それに、不肖ふしょう三位有村が帷幕いばくにあっていたしますこと」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
潰滅かいめつちょうが見えてきた。その方面の敵は、不肖ふしょう池田勝三郎が当って蹴ちらしてみせる」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょうの眼では、あの男を敵方にまわしておいては、将来の大計にも不利と考えたので、礼を執って、今日の来訪を約しておいたのです。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——不肖ふしょう、旗下の精兵二十万、みな臣の志を体している忠良でありますから、なにとぞ、聖慮を安んぜられ
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「真実、そのお志ならば、不肖ふしょう光秀が、再び牢人いたして、ひそかにお使いいたしてもようござるが」
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人側は、かく朝野の名流の御来場を賜わりましたことは、不肖ふしょう身にとって光栄とするところでございます、テナことを言うのであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
不肖ふしょう羅門塔十郎、不才をもって、老公のお眼鑑めがねを身にうけ、ここ数年来、寝食を忘れて苦心はしておりますなれど、何せよ……」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「身不肖ふしょうながら狩野宗家、もったいなくも絵所預り、日本絵師の総巻軸、しかるにその作入れられずとあっては、家門の恥辱にござります!」
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あらゆる意味に於て不肖ふしょうの子である私は、父の生前に思わしい孝行を尽し得なかった。これからは父の死後の父に、心の限り孝行をして行きたい。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……不肖ふしょういささか学び得てお役に立ちそうなことは、今日までに、ほとんど申しあげて、あつくご会得えとくもあることと存じまする。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今から帰るでもあるまじ、不肖ふしょうしておれに附き合ひ喫み直してはと遠慮なきすすめに、おかみが指図して案内あないさするは二階の六畳
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「同慶のいたりです。ここに不肖ふしょう賢俊を以て、すなわち、光厳上皇の御院宣を、足利家へおくだしあらせられました。つつしんでお受け申されい」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、予が前で神仏しんぶつの名は申すまい。不肖ふしょうながら、予は天上皇帝の神勅を蒙って、わが日の本に摩利まりの教をこうと致す沙門の身じゃ。」
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
不肖ふしょうな子は、父の名声と遺産をになって歩くだけで精いっぱいであったのみか、到頭、それあるがために、身をも家をも、ここへ来てやぶってしまった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我身わがみ不肖ふしょうながら家庭料理の改良をもととして大原ぬしの事業を助けばやと未来の想像は愉快にみたされて結びし夢もあたたかに楽しかりき。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「また、わが君のおうえにも、かならず輝きの日がまいりましょう。いや、不肖ふしょう民部の身命しんめいしましても、かならずそういたさねば相なりませぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょうにも小野寺家の嫡孫ちゃくそんにて候、かようの時、うろつきては、家のきず、一門のつらよごし、時至らば、心よく死ぬべしと、思い極め申し候。
「こんど、不肖ふしょう藤吉郎が、炭薪奉行を仰せつかりました。どうかよろしく」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょうなりといえどもわが子はわが手にて養育せん、誓って一文いちもんたりとも彼が保護をば仰がじと発心ほっしんし、そのむね言い送りてここに全く彼と絶ち
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「さようか。では、不肖ふしょうですが、半助代刀だいとうをつかまつります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「言うまでもないこと。不肖ふしょうながら新九郎も一匹の男じゃ! ここに姿を現して試合を望む以上、きっと汝に打ち勝つ自信あればこそ。オオ、多言は無用、支度をせいッ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「一つ競作をやりましょうかな。これから尊家が一作、不肖ふしょうが一作、ともに敵討の新作を書き下ろして、どっちが世に受けるか競作というのをやってみましょう。いかが。」
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
決して、信玄公の御子として、あなたが不肖ふしょうな子というわけではない
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょうなりといえども軽少ながら鼻下にひげを蓄えたる男子に女の自転車で稽古けいこをしろとは情ない、まあ落ちても善いから当り前の奴でやってみようと抗議を申し込む
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不肖ふしょう、お相手に立ちまするが、おさしつかえございませぬか」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「悪党にも似合わぬ見下げ果てた未練者だ。東儀三郎兵衛は不肖ふしょうながら、罪人のけがれた金を受けて富もうとは思わぬ。但し、これもよい証拠にはなるから奉行所まで預っておく」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
草葉の蔭で親父が見ていたら、定めて不肖ふしょうの子と思うだろう。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「大丈夫です。不肖ふしょうながら大辻おおつじがこの大きい眼をガッと開くと、富士山の腹の中まで見通してしまいます。帆村荘六の留守のうちは、この大辻に歯の立つ奴はまずないです」
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「お心根を見とどけた。不肖ふしょうながらお手を取って進ぜよう」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「養子の口などはどうか御用捨ごようしゃに願いたい。不肖ふしょうですが万太郎は、ほかにいささか志もございます故、その辺は紀伊殿にも、いや、将軍家にもどうか御放念願いたいものです」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(あなたには、二人のご子息があるのに)と、理由を云いかけたが、それをいうとまた、重態の病人が、出来の悪い不肖ふしょうの実子のことについて、昂奮して語り出すといけないので、——玄徳はただ、
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ、お詫びせねばならぬ一事は、不肖ふしょう、守護の任にある許都の地も、何かと事繁く、秩序の維持上、兵を要しますので、折角ながら兵員をお貸しする儀だけは、ご希望にそうことができません。なお、
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さなくとも此方こなたの意中は、すでにおもとも御ぞん知に候うべし、身不肖ふしょうなれど、池田侯の家中にて、青木丹左衛門と申せば千石取りの武士もののふにて、知らぬは無之候これなくそうろう
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし上庸じょうようの孟達が旗挙げしたら、足下も成都から内応し給え。不肖ふしょう、彭義にも、充分勝算はある。足下の如き大丈夫が、いつまでも碌々ろくろく蜀門の番犬に甘んじておるわけでもあるまいが」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょうの子とは、信雄のことだ。あれは、お人よしを通り越して、馬鹿じゃよ。稀代きたいの馬鹿者じゃよ。——家康に泣きついては、家康の飾り物にされ、秀吉に抱き込まれると、秀吉のいい道具につかわれる……」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おさよ殿を従前どおりおれの手もとにおいたとて、貴様らに迷惑の相かかるようなことはいたさぬ。源十郎、不肖ふしょうなりといえども、年長者の敬すべきは存じておる。いま貴様らに見せるものがあるから庭先へまわれッ!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「今日より不肖ふしょう木下藤吉郎、君命によって、ここの御普請ごふしんを承ることになった。きのうまでは山淵右近やまぶちうこんどの、奉行に就かれていたが、今日よりは木下藤吉郎が代って奉行いたす。——ついては」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賢と不肖ふしょうともなる。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
旦那様わたくしは身不肖ふしょうにして、あだたるお國源次郎に𢌞めぐり逢わず、未だ本懐は遂げませんが、丁度旦那様の一周忌の御年囘に当りまする事ゆえ、此のたび江戸表へ立帰り、御法事御供養をいたした上
『さ。——それが大きな間違いです。環はすでに、山浦家の子ではありません。長岡家へくれた養子です。長岡の家の恥辱なら、そうして、雪ぐもよいでしょう。——だが、山浦家には、不肖ふしょうながら、真雄という者が居りまする』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがしにお任せおき下さい。このたびの儀については、不肖ふしょう官兵衛にご一任下さるとは、出立の前に、しかとお誓い下されたことではないか。官兵衛としては、このお使い、まず十分に功を見たものと、信じて疑いませぬ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相違なく家督相続さしゆるされるむね、お達しがあり、家中一同恐悦に存じておりました。その後、家老相馬志津之助と医者露斎があいついで死亡いたし、よって不肖ふしょうわたくしが家老の職につき、御養育に専念いたしておりましたところ
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
重ねて申されましたので、兵部殿は顔色を変えられ、何と云われるぞ、不肖ふしょうながら某のことを御前に於いて悪様あしざまに申すような者は、日本中に一人もいようとは存ぜぬ、たとい讒言する者があっても、上様がお用いになる筈はない
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「なる程。それは時と場合とに依る事で、わしもきっととは云い兼ねる。出来る事なら、どうにでもしてお前をその場へ呼んで遣るのだ。万一間に合わぬ事があったら、それはお前が女に生れた不肖ふしょうだと、あきらめてくれるより外ない」
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そは友人板垣伯より貴嬢の志望を聞きて感服せり、不肖ふしょうながら学資を供せんとの意味を含みし書翰しょかんにてありしかば、天にも昇る心地して従弟いとこにもこの喜びを分ち、かつは郷里の父母に遊学の許可を請わしめんとて急ぎその旨を申し送り
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
兄上、こんな時にはやはり、不肖ふしょうな弟でも、頼みになるでしょう。委細を使いの者から聞くと、取る物も取りあえず、御影みかげを立って、途中大坂の傾城町けいせいまちで旅支度や酒をととのえ、夜をおかして、駈けつけてまいったのですぞ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、父上、あなた様は、智勇兼備のお方でござって、私如き不肖ふしょうの者には推量おしはかることさえ出来ぬほどの大計略をお胸の中に絶えず蔵されておいでのはずゆえ、その父上のされた所業の善悪是非の批評など、どうして私に出来ましょうや。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「やよ左膳! なんじ一書を寄せて乾雲丸を火事装束の五人組に奪われたと申し出たが、不肖ふしょう栄三郎といえどもかかるそらごとは真に受けぬぞ! 小策をろうす奸物めッ! いずれそのうち参上してつるぎにかけて申し受くるからさよう心得ろ——はっはははは」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「僕は大佐で、まだ司令官になる柄でない、しかし、今や命令によって、不肖ふしょうながら昭和遊撃隊の司令官になったんだ。まあ、どこまでやれるか、生命のあるかぎり、やって見よう。今夜出動したら、泣いても、わめいても、後は太平洋の荒波にまかせた生命だぞ。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
既にかく鎖国と決する上は、和の一字は、永劫えいごう未来、御用部屋に封禁して、再び口外するなかれ。満坐の方も果してその覚悟あるや。余が如きは不肖ふしょうながら、一旦外患の迫るにおいては、一死以て君にむくい、武門の面目をはずかしめざるべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
不肖ふしょうじゃございますが、この近江屋平吉おうみやへいきちも、小間物屋こそいたしておりますが、読本よみほんにかけちゃひとかどつうのつもりでございます。その手前でさえ、先生の八犬伝には、なんともの打ちようがございません。いや全く恐れ入りました。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
北伐の大望は、決して今日の思いつきでなく、不肖ふしょうが先帝のご遺託をうけたときからの計画である。で自分は、その根本の力は、何よりも農にあるとなして、大司農、督農の官制をおき、農産振興に尽してきた結果、連年の軍役にもかかわらず、蜀中の農にはまだ充分な余力がある。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「貴家の御子息にも、不肖ふしょうのせがれにも、もっともっと真剣の境地を悟らしめなければ、ついには型にのみ陥ち入りましょう。死罪とする罪人の中から腕強き者を申しうけ、それに真剣を持たせて刃向わせ、斬って捨てさせることを繰返したなら、必ずよい修行になると思いますが」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょう、それがしもまた、少しは天文を心得ています。暦数を考えるに、必ずしも今年は皇叔にとって大吉ではありませんが、さりとて悪年では決してない。また恒星西方にあることも知っていますが、それはやがて皇叔が成都に入るのきざしです。むしろ速やかに、兵をおすすめあれ。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不肖ふしょう宗治は、その毛利家に属し、碌々ろくろくすなき身を、多年七千石の高禄こうろくをたまわり、一族みな恩養にあずかって、今日この変にあたり、国境の守りを命ぜられたこと、ひとえに主家の御信任によるところと、この日頃、生きがいありと、朝夕たのしく暮しておるところでござる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甥の子供を生みました。じょうぶな男の児で、洗礼のときヤーコプという名をつけられました。疑いもなく不肖ふしょうこの私を頭においてのことであります。この私のことは、甥がきっとただまったくさりげなく話しただけだと思われますが、それでさえその女の子に少なからぬ感銘を与えたにちがいありません。
火夫 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
——不肖ふしょう、忠兵衛が、いささか、六十余年の乱国のあいだにまなび得た体験のもとに、このたびの羽柴秀吉が起した四国攻略の配備を見まするに、げにも、驚くべき船数と、兵力と、物資とをもって、四国の三方面から一せいに上陸を起して、次第に、御城下まで圧縮して来ようという大規模な意図を示しております。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むなしく、その方どもが、蜂須賀村へ帰るのは、一分いちぶんが立たぬというなら、不肖ふしょう十兵衛の身を、擒人とりことして、連れて行くもよい。拙者がじかに、蜂須賀村の小六殿へお目にかかり、ようく理非をわけてお話しいたそう。——どうじゃ、さすれば、こよいの地獄も見ず、ここも互いの血を流さずにすむが」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今のおことばは柴田殿か。御注意はかたじけない。——しかし、鎧具足は神衣でござるぞ。わが神々も遠つ御世みよには、甲冑かっちゅうを召されて聖業の途に立たせられ給うた。不肖ふしょう季忠も、きょう御合戦のおん供に従うからには、大御祖おおみおやたちが具足し給うた御心をもって心をよろい、私慾私心の功名のためには戦わぬ所存でござる。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸君! 不肖ふしょう久保井克巳くぼいかつみが当校に奉職してよりここに六年、いまだ日浅きにかかわらず、前校長ののこされた美風と当地方の健全なる空気と、職員諸氏の篤実とによって幸いに大瑕たいかなく校長の任務を尽くし得たることを満足に思っています、今回当局の命により本校を去り諸君とわかれることになったことは実に遺憾いかんとするところでありますが事情まことにやむを得ません。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)