下腹したはら)” の例文
おんな皮膚ひふいろあおざめてたるんでいた、そして、水腫性すいしゅせい症状しょうじょうがあるらしくふとって、ことに下腹したはらていました。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
十分、相手にのしかからせた富田六段は、抱かれた足をモンクスの下腹したはらに当てがうとみるや、気合いするど
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
「おい、きみは下腹したはらに力がないぞ、胸のところをへこまして下腹をふくらますようにせい」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
下腹したはらに毛のないといつた、したたかものの人柄をも加味し、轉じては、當今でいへば野心家、かなり金錢慾も名譽慾も覇氣もあつて、より多く政治的でなければあてはまらない。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
たと這出はひだしたところでぬら/\とられてはおよそ五分間ふんかんぐらゐすまでにがあらうとおも長虫ながむしえたのでむことをわしまたした、途端とたん下腹したはら突張つツぱつてぞツと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
機織女はたおりおんなは、びっくりしてまどうはずみに、おさで下腹したはらいて死んでしまいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
町内てうない一の財産家ものもちといふに、家内かない祖母ばゞ此子これこ二人ふたりよろづかぎ下腹したはらえて留守るす見渡みわたしの總長屋そうながや流石さすが錠前でうまへくだくもあらざりき、正太しようたさきへあがりて風入かぜいりのよき塲處ところたてゝ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いや、よくわかりました。無論十二指腸の潰瘍かいようです。が、ただいま拝見した所じゃ、腹膜炎を起していますな。何しろこう下腹したはらが押し上げられるように痛いと云うんですから——」
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
エヽ三十七さいで。殿「何処どこか悪いところでもあるか。○「へい少々せう/\下腹したはらが痛いやうで。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
火燵こたつにあたっていながらも、下腹したはらがしくしく痛むというような日が、一日も二日もつづくと、きまってその日の夕方近くから、待設けていた小雪が、目にもつかず音もせずに降ってくる。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
北のほうへいけば、細長いどうとまるい頭が見えるし、南のほうへいくと、下腹したはらが見えるんだが、こっちのほうは、はじめは広くて、それから、だんだんせまくなり、しまいには、とがってしまうんだ。
「明け方から、持病の下腹したはらの痛みが起りまして」
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すかりとれるぞ。のこらずすべい。兵粮へうらうはこぶだでの! 宿やどへもほこらへもかへらねえで、此処こゝ確乎しつかり胡座あぐらけさ。下腹したはらへうむとちかられるだ。雨露あめつゆしのぐなら、私等わしら小屋こやがけをしてしんぜる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われは二階なる南の六畳に机を置き北の八畳を客間、梯子段はしごだんのぞむ西向の三畳を寝間ねまさだめければ、幾度となき昇降あがりおりに疲れ果て両手にて痛む下腹したはら押へながらもいつしかうとうととまどろみぬ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
成程なるほど八疊はちでふ轉寢うたゝねをすると、とろりとすると下腹したはらがチクリといたんだ。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
張肱はりひじになった呼吸いきを胸に、下腹したはらを、ずん、と据えると
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ときさん拔衣紋ぬきえもんで、自分じぶん下腹したはらおさへてつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)