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丁子
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ちょうじ
ふりがな文庫
“
丁子
(
ちょうじ
)” の例文
淋しい行燈の上、溜った
丁子
(
ちょうじ
)
をかき立てることも、いつもの癖の粉煙草をせせることさえ忘れて、八五郎と膝を突き合せるのです。
銭形平次捕物控:227 怪盗系図
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
芬
(
ぷん
)
と、
麝香
(
じゃこう
)
の
薫
(
かおり
)
のする、
金襴
(
きんらん
)
の袋を解いて、
長刀
(
なぎなた
)
を、この乳の下へ、平当てにヒヤリと、また芬と、
丁子
(
ちょうじ
)
の香がしましたのです。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの
黒方
(
くろほう
)
と云う
薫物
(
たきもの
)
、———
沈
(
じん
)
と、
丁子
(
ちょうじ
)
と、
甲香
(
こうこう
)
と、
白檀
(
びゃくだん
)
と、
麝香
(
じゃこう
)
とを
煉
(
ね
)
り合わせて作った香の匂にそっくりなのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
例の
兵部卿
(
ひょうぶきょう
)
の宮も来ておいでになった。
丁子
(
ちょうじ
)
の香と色の
染
(
し
)
んだ
羅
(
うすもの
)
の上に、濃い
直衣
(
のうし
)
を着ておいでになる感じは美しかった。
源氏物語:54 蜻蛉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
芯の先には大きな
丁子
(
ちょうじ
)
ができて、もぐさのように燃えていた。気がついてみると、小さな部屋の中はむせるような
瓦斯
(
ガス
)
でいっぱいになっていた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
丁子
(
ちょうじ
)
の
薫
(
かお
)
るに似た香煙も、その隙から、忍びやかに流れてくるのだ。お綱は、この板壁の向うにいるのが、何者であろうと考えてみる余裕もなく
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
因ってその不浄を捨てに行く
筥
(
はこ
)
を奪い
嘗
(
こころむ
)
るに、
丁子
(
ちょうじ
)
の煮汁を小便、
野老
(
ところ
)
に香を合せ大きな筆管を通して大便に擬しあったので、その用意の細かに感じ
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
ただ今申した通り時刻はちょうど宜しゅうございますからそこで清らかなる水を取ってまず昼飯を済まし、それから私は例のごとく身体に
丁子
(
ちょうじ
)
油を塗った。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
この時
丁子
(
ちょうじ
)
の花の
匀
(
におい
)
が、甘たるく二人の鼻を打った。二人ともほとんど同時に顔を挙げて見ると、いつかもうディッキンソンの銅像の前にさしかかる所だった。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
丁子
(
ちょうじ
)
や胡椒や
芥子
(
からし
)
は大概日本製の詰換です。舶来の壜へ詰め換えた品を食品屋から一壜二十銭で買う位なら
薬種屋
(
やくしゅや
)
へ行って同じ分量を一袋で買うと六銭でくれます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そうして木立ちの代わりに安価な八つ手や
丁子
(
ちょうじ
)
のようなものを
垣根
(
かきね
)
のすそに植え、それを遠い地平線を限る常緑樹林の代用として冬枯れの荒涼を緩和するほかはなかった。
芝刈り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
和尚
(
おしょう
)
の室を
退
(
さ
)
がって、
廊下
(
ろうか
)
伝
(
づた
)
いに自分の部屋へ帰ると
行灯
(
あんどう
)
がぼんやり
点
(
とも
)
っている。
片膝
(
かたひざ
)
を
座蒲団
(
ざぶとん
)
の上に突いて、灯心を
掻
(
か
)
き立てたとき、花のような
丁子
(
ちょうじ
)
がぱたりと朱塗の台に落ちた。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
少女はその石の上を
福草履
(
ふくぞうり
)
のような草履で踏んで往った。広巳はうっとりとなって少女に
跟
(
つ
)
いて往った。そこには
丁子
(
ちょうじ
)
の花のような
匂
(
におい
)
がそこはかとしていた。少女の声が耳元でした。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
こんどはにほひあらせいとう(
丁子
(
ちょうじ
)
の一種)の花を調べてみやう。此の花には四枚の萼片で出来た萼と、四枚の黄色い花弁で出来た花冠とがある。此の八つのものを取り捨てゝ了ふ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
金箔
(
きんぱく
)
銀箔
瑠璃
(
るり
)
真珠
水精
(
すいしょう
)
以上合わせて五宝、
丁子
(
ちょうじ
)
沈香
(
じんこう
)
白膠
(
はくきょう
)
薫陸
(
くんろく
)
白檀
(
びゃくだん
)
以上合わせて五香、そのほか五薬五穀まで備えて
大土祖神
(
おおつちみおやのかみ
)
埴山彦神
(
はにやまひこのかみ
)
埴山媛神
(
はにやまひめのかみ
)
あらゆる鎮護の神々を祭る地鎮の式もすみ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「そうですか……刀には
丁子
(
ちょうじ
)
の油がいいと聞きましたが、椿油でもいいのですか」
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
暁がた、男は一人で庭に降り立って、ほんのりとかかった
繊
(
ほそ
)
い月を仰ぎ仰ぎ、読経などをしながら、
履音
(
くつおと
)
をしのばせてそぞろ歩きしていた。
細殿
(
ほそどの
)
の前には
丁子
(
ちょうじ
)
の匂が夜気に強く漂っていた。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
中には
諺
(
ことわざ
)
にも申します、一口
茄子
(
なす
)
に
食
(
し
)
てやるは
可惜
(
あったら
)
もの、勿体ないと、神棚へ上げて
燈明
(
みあかし
)
の燈心を
殖
(
ふや
)
しまして、ほほう、茄子ほどな
丁子
(
ちょうじ
)
が立った
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もし誰か、
燈火占
(
とうかうらない
)
をなすものがいて、この夜の灯に対していたら、すでに何かの
凶兆
(
きょうちょう
)
が、夜霧の
暈
(
かさ
)
や
丁子
(
ちょうじ
)
の明暗にも、
卜
(
うらな
)
われていたかも知れない。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
髪の油か、何か分らないが、忍びやかな
丁子
(
ちょうじ
)
のにおいに似たものが、彼女の
鬢
(
びん
)
の毛と共にかすかに彼の
頬
(
ほお
)
にさわった。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
全体刺撃物や香料の配合は衛生上から割出してあって玉子に唐辛、豆類に
薄荷
(
はっか
)
、
無花果
(
いちじく
)
に
丁子
(
ちょうじ
)
、牛肉に
芥子
(
からし
)
、梨や芋類に肉桂という
風
(
ふう
)
な合い物という事が出来ています。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
部屋半分ほどもひたした血潮の中に、
丁子
(
ちょうじ
)
の溜った
行灯
(
あんどん
)
がほの暗く灯って、その明りの中にお勢は、細身の
匕首
(
あいくち
)
に背中を刺されて、
俯向
(
うつむ
)
いたまま死んでいるではありませんか。
銭形平次捕物控:125 青い帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
こりゃいけない、どうしようか知らんと考えて居るとふと思い付いた。かねて堺の岡村の
丁子
(
ちょうじ
)
油を持って居る。これを塗るべしと思って早速丁子油の瓶を出して身体にも足にも塗りつけたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
糸より細い煙のすじが、床の
香炉
(
こうろ
)
から夢のように立っている。そして、日蔭の
丁子
(
ちょうじ
)
に似るゆかしい香りが板一重を隔てたお綱をも
酔
(
え
)
わせて、恍惚と、身のある所を忘れさせる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この古行燈が、
仇
(
あだ
)
も
情
(
なさけ
)
も、赤くこぼれた
丁子
(
ちょうじ
)
のごとく、
煤
(
すす
)
の中に色を
籠
(
こ
)
めて消えずにいて、それが、針の穴を通して、不意に口を利いたような女の声には、松崎もぎょっとした。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分の家でタイル張りの浴室にばかり這入りつけているせいか穴蔵へでも入れられたようで、その上
丁子
(
ちょうじ
)
を
煎
(
せん
)
じてあるのが、
垢
(
あか
)
だらけに濁った
薬湯
(
くすりゆ
)
のような連想を起させるのである。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
剥
(
む
)
いて大きいのなら二十位を一斤の砂糖と一合の水と大匙四杯の西洋酢とで
丁子
(
ちょうじ
)
を
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「風が入って灯を消すとか、
丁子
(
ちょうじ
)
が溜って独りで消えるとか——」
銭形平次捕物控:026 綾吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は改めてそれを手に取り、上げて見たり、下げて見たり、廻して見たり、中の重みを測って見たりしていたが、やがて恐る/\蓋を
除
(
の
)
けると、
丁子
(
ちょうじ
)
の香に似た
馥郁
(
ふくいく
)
たる匂が鼻を
撲
(
う
)
った。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ちょうど、日かげにつつましく
匂
(
にお
)
っている
丁子
(
ちょうじ
)
の花を思わせる陰香である。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大匙四杯入れてシンナモンの粉即ち
肉桂
(
にっけい
)
の粉を小匙に軽く一杯とグローブス即ち
丁子
(
ちょうじ
)
の粉を小匙に軽く一杯加えて
皆
(
み
)
んなよく混ぜ合せてベシン皿か
丼鉢
(
どんぶりばち
)
へ入れてテンピの中で二十五分間焼きます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
かの平安朝の宮廷の美女は、色好みの
平中
(
へいじゅう
)
を魅惑するために
丁子
(
ちょうじ
)
の
実
(
み
)
で自分の排泄物を模造した逸話があるではないか。かりそめにも上﨟と云われる者にはそのくらいな
嗜
(
たしな
)
みがあったのである。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
燈火は、陣幕をもる風に、パチパチと明るい
丁子
(
ちょうじ
)
の花を咲かせた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
慈円はもう木履を
穿
(
は
)
いて、
丁子
(
ちょうじ
)
の花のにおう
前栽
(
せんざい
)
をあるいていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おや、何処かで
丁子
(
ちょうじ
)
が
匂
(
にお
)
うてる。———」
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
“丁子”の意味
《名詞》
フトモモ科の樹木チョウジノキの香りのよい花蕾。クローブ、丁香。
(出典:Wiktionary)
“丁子(チョウジ)”の解説
チョウジ(丁子、丁字)またはクローブ(en: Clove)は、フトモモ科の樹木チョウジノキ(学名:Syzygium aromaticum)の香りのよい花蕾である。原産地はインドネシアのモルッカ群島であり、香辛料として一般的に使われるほか、生薬としても使われる。漢名に従って丁香(ちょうこう)とも呼ばれる。
(出典:Wikipedia)
丁
常用漢字
小3
部首:⼀
2画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“丁子”で始まる語句
丁子屋
丁子湯
丁子乱
丁子巴
丁子頭
丁子油
丁子茶
丁子草
丁子車
丁子香