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一片
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ひときれ
ふりがな文庫
“
一片
(
ひときれ
)” の例文
輪切りにして
一片
(
ひときれ
)
をコップの底へ入れてその上から冷した紅茶を
注
(
つ
)
いで出します。紅茶は砂糖と乳とを混ぜて冷してもよし、砂糖ばかりを
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「あア
悉皆
(
みんな
)
内へ
入
(
いれ
)
ちゃったよ。外へ置くとどうも物騒だからね。今の
高価
(
たか
)
い炭を
一片
(
ひときれ
)
だって盗られちゃ馬鹿々々しいやね」
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
にんじん——うん、だけど、その前に、お隣りへ行って、パンを
一片
(
ひときれ
)
ずつと、それへヨーグルトを少し貰ってきたら?
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
甲給仕
疊椅子
(
たゝみいす
)
を
彼方
(
あっち
)
へ、
膳棚
(
ぜんだな
)
もかたづけて。よしか、
其
(
その
)
皿
(
さら
)
も
頼
(
たの
)
んだ。おいおい、
杏菓子
(
あんずぐわし
)
を
一片
(
ひときれ
)
だけ
取除
(
とっと
)
いてくりゃ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
生きる限り生きることにひけめを感じ、存在そのものに敗北しつづけてゐるやうな、その惨めな生き方を俺は
一片
(
ひときれ
)
もしたくない、見たくないのだ。……
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
どうかすると大人達は、「ほらよ。」といつて、煮えた里芋か
蒟蒻
(
こんにやく
)
の
一片
(
ひときれ
)
を、子供達にくれることがあるのである。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
それに君
如何
(
どう
)
だ、細君は殆んど僕等の喰ひ
餘
(
あま
)
しの
胡蘿蔔
(
にんじん
)
牛蒡
(
ごぼう
)
にもありつかずに
平素
(
しよつちう
)
漬物ばかりを
噛
(
かぢ
)
つてる、
一片
(
ひときれ
)
だつて亭主の
分前
(
わけまへ
)
に預つたことはないよ。
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
半分
(
はんぶん
)
煮
(
に
)
たあとが、
輪
(
わ
)
にして
雜
(
ざつ
)
と
一斤入
(
いつきんいれ
)
の
茶
(
ちや
)
の
罐
(
くわん
)
ほどの
嵩
(
かさ
)
があつたのに、
何處
(
どこ
)
を
探
(
さが
)
しても、
一片
(
ひときれ
)
もないどころか、
果
(
はて
)
は
踏臺
(
ふみだい
)
を
持
(
も
)
つて
來
(
き
)
て、
押入
(
おしいれ
)
の
隅
(
すみ
)
を
覗
(
のぞ
)
き
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
『君の方ぢや、梨をさういふ
風
(
ふう
)
にして客に出すことが
流行
(
はや
)
るのかね。』と、
小池
(
こいけ
)
は其の梨の
一片
(
ひときれ
)
を
摘
(
つま
)
んで言つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
清子はこう云いながら、二人の間にある林檎の
一片
(
ひときれ
)
を手に取った。しかしそれを口へ持って行く前にまた
訊
(
き
)
いた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そりゃいらない。だが、お前さんが『キリスト様の御名によって』とおっしゃるなら、ちょっと待ちなされ、家内に話して
一片
(
ひときれ
)
貰って上げましょうから。」
イワンの馬鹿
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
なあんだ、父親にとって、あれはもう切りとったパンの
一片
(
ひときれ
)
みたいなものさね。もとのパンの塊まりとは縁がきれてるんだ。あれに大切なのは——ご亭主だよ。……
真珠の首飾り:――クリスマスの物語――
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
「パンを
一片
(
ひときれ
)
下さいませんか。私、大變お
腹
(
なか
)
が空いてゐるのです。」彼は
呆氣
(
あつけ
)
にとられて、私を見たが、返答もせずにパンの
塊
(
かたまり
)
を
分厚
(
ぶあつ
)
に切つて、私に呉れたのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼は又、生きた蛙を
捕
(
つかま
)
えて、皮を
剥
(
は
)
ぎ、逆さに棒に差し、蛙の肉の
一片
(
ひときれ
)
に紙を添えて
餌
(
えさ
)
をさがしに来る
蜂
(
はち
)
に与え、そんなことをして蜂の巣の
在所
(
ありか
)
を知ったことを思出した。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そして、おなじ
味
(
あじ
)
の
食物
(
たべもの
)
が、毎朝、
一片
(
ひときれ
)
ずつ木の上へはこばれてゆくこともかわらなかった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喜蔵が
矢立
(
やたて
)
を持っていた。忠次が
懐
(
ふところ
)
から、鼻紙の半紙を取り出した。それを喜蔵が受取ると、長脇差を抜いて、
手際
(
てぎわ
)
よくそれを小さく切り分けた。そうして、
一片
(
ひときれ
)
ずつみんなに配った。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「……ウン。吾輩も諦らめ切れん。あの時に櫓柄へヘバリ付いていた肉の
一片
(
ひときれ
)
をウッカリ洗い落してしまったが、あれは多分、友太郎のだったかも知れない。今思い出しても涙が出るよ」
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
親の病には、子たる者は自ら
一片
(
ひときれ
)
の肉を切取ってそれを煮て、親に食わせるのが
好
(
よ
)
き人というべきだ。母もそうしちゃいけないとは言わなかった。一片食えばだんだんどっさり食うものだ。
狂人日記
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
粉挽屋の台所は大へん
暖
(
あたたか
)
です。炉のなかでは、大きな
榾
(
ほだ
)
がぱちぱちと赤く燃え、隣近所の人々は、夕飯のために焙った鵞鳥の肉
一片
(
ひときれ
)
とお酒一ぱいとにありつくために、交る交るやって来ます。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
牛肉を用うるもの、勝栗を用うるもの、白梅を用うるもの、いろいろあるが、いずれも藩の運命を賭けても秘密を守り、藩外には処法は申すまでもなく、兵糧丸
一片
(
ひときれ
)
も出さぬように心掛けている
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「いかがでございます、よく煮えました、あなた様も、
一片
(
ひときれ
)
召上れ」
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
旅人の姿をみると、悲しそうな顔をして、情けない声をしぼって哀れを訴えた。また、
正午
(
まひる
)
の野良で、一株の木のまわりに集って弁当をつかっている百姓の一団を見かけると、
一片
(
ひときれ
)
の
麪麭
(
パン
)
をねだった。
親ごころ
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
繃帯取替の間
始終
(
しじゅう
)
右に向き居りし故背のある処痛み出し最早右向を許さず。よつて
仰臥
(
ぎょうが
)
のままにて牛乳一合、紅茶ほぼ同量、菓子パン数箇をくふ。家人マルメロのカン詰をあけたりとて
一片
(
ひときれ
)
持ち来る。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
一片
(
ひときれ
)
十銭
(
じっせん
)
以上に
上
(
のぼ
)
っているものは甚だ少い。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「あんまり、
旨
(
うま
)
いものじゃない。ただ珍らしいだけだ」と宗近老人は
箸
(
はし
)
を上げて皿の中から
剥
(
は
)
ぎ取った羊羹の
一片
(
ひときれ
)
を手に受けて、
独
(
ひと
)
りでむしゃむしゃ食う。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こんな事を思いながらお源は
洋燈
(
ランプ
)
を
点火
(
つけ
)
て、
火鉢
(
ひばち
)
に炭を注ごうとして炭が
一片
(
ひときれ
)
もないのに気が着き
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
可厭
(
いや
)
な心持じゃなかったんです——それが、しかし確に、氷を
一片
(
ひときれ
)
、何処かへ抱いたように急に身を
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「まず第一にあいつ等を一文無しにしてしまいます。そして
一片
(
ひときれ
)
のパンも無くなった時分にみんなをおち合わせることにします。そうすりゃけんかするにきまっています。」
イワンの馬鹿
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
さう言つて、母はもく/\と淡紅色の御所柿の
一片
(
ひときれ
)
を前齒で噛んでゐた。奧齒の一つもない母は、馬のやうに前齒でばかり喰べるので、噛んだものが膝の上へぽろ/\とこぼれ落ちた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
そのうちに又、頭山先生のお尻の穴がムズムズして来たので、又手を突込んで引っぱると、今度は二寸ばかりの奴が切れ離れて来たヤツを、やはり眼の前の火鉢の縁へ、前の
一片
(
ひときれ
)
と並べておいた。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「ええ気を附けるともね。
盗
(
と
)
られる日にゃ
薪
(
まき
)
一本だって炭
一片
(
ひときれ
)
だって馬鹿々々しいからね」
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
けれども一口飲んで始めてその
不味
(
まず
)
いのに驚ろいた余は、それぎり重湯というものを近づけなかった。その代りカジノビスケットを
一片
(
ひときれ
)
貰った折の
嬉
(
うれ
)
しさはいまだに忘れられない。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一番小ひさな
一片
(
ひときれ
)
を自分の口へ入れ、ハンケチで手を拭きつゝ、お光は言つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「どうだね」と折の
蓋
(
ふた
)
を取ると白い飯粒が裏へ着いてくる。なかには
長芋
(
ながいも
)
の
白茶
(
しらちゃ
)
に寝転んでいる
傍
(
かたわ
)
らに、
一片
(
ひときれ
)
の玉子焼が黄色く
圧
(
お
)
し
潰
(
つぶ
)
されようとして、苦し紛れに首だけ飯の境に突き込んでいる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さうして其の羊羮といふものを
一片
(
ひときれ
)
喰べてみたくてたまらなかつた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
“一片”の意味
《名詞》
薄く小さいものの一枚。
大きな固まりのうちの一かけら。
わずか。ほんの少し。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
片
常用漢字
小6
部首:⽚
4画
“一片”で始まる語句
一片付
一片食
一片々々
一片着
一片紙
一片雲
一片餉
一片二片