-
トップ
>
-
駈𢌞
>
-
かけまは
……(下人に)やい、
汝はヹローナ
中を
駈𢌞って(書附を渡し)
爰に
名前の
書いてある
人達を
見附けて、
今宵我邸で
懇に
御入來をお
待ち
申すと
言へ。
近所には、
六歳かに
成る
男の
兒で、
恐怖の
餘り
氣が
狂つて、
八疊二間を、
縱とも
言はず
横とも
言はず、くる/\
駈𢌞つて
留まらないのがあると
聞いた。
……それから
既十一
年、
其時になァ
單身立をさっしゃりましたぢゃ、いや、
眞の
事、
彼方此方と
駈𢌞らッしゃって
如何に
流言に
憑いた
鼠でも、オートバイなどで
人もなげに
駈𢌞られては
堪らないと
思ふと、どしん、どしん、がら/\がらと
天井を
追つかけ
𢌞し、
溝の
中で
取つて
倒し
何の
事ぢや、おほゝ、
成程、
燒けとる。
𤏋と
火の
上つた
處ぢやが、
燒原に
立つとる
土藏ぢやて。あのまゝ
駈𢌞つても
近まはりに
最う
燒けるものは
何にもないての。おほゝ。
安心々々。
或ひは
兵卒の
頸筋元を
駈𢌞る、すると
敵の
首を
取る
夢やら、
攻略やら、
伏兵やら、
西班牙の
名劍やら、
底拔の
祝盃やら、
途端に
耳元で
陣太鼓、
飛上る、
目を
覺す、おびえ
駭いて、
一言二言祈をする
殆ど
形容の
出來ない
音が
響いて、
炎の
筋を
蜿らした
可恐い
黒雲が、
更に
煙の
中を
波がしらの
立つ
如く、
烈風に
駈𢌞る!……あゝ
迦具土の
神の
鐵車を
驅つて
大都會を
燒亡す
車輪の
轟くかと
疑はれた。