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香具師
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やし
ふりがな文庫
“
香具師
(
やし
)” の例文
香具師
(
やし
)
の親方の「釜無の文」は、手下の銅助を向うに廻し、いい気持に
喋舌
(
しゃべ
)
っていた。傍に檻が置いてあり、中に大鼬が眠っていた。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
香具師
(
やし
)
の口上にしては余りに熱心過ぎた。宗教家の辻説法にしては見物の態度が不謹慎だった。一体、これは何事が始まっているのだ。
白昼夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
綺麗な女の子をさらつたのは、親を
強請
(
ゆす
)
つて金にする外に、身體の良いのは、輕業娘に仕立てて、田舍向の
香具師
(
やし
)
に賣るつもりだらう。
銭形平次捕物控:171 偽八五郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
香具師
(
やし
)
の所謂五りん五たい満足な体で、類のない渡世を編み出し、旅から旅をめぐり歩いている者とは違って、一つ処にじっとしていながら
奇術考案業
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
熊蔵は彼を
香具師
(
やし
)
だろうと云った。
得体
(
えたい
)
のわからない人間の首を持ちあるいて、見世物の種にでもするのだろうと解釈した。
半七捕物帳:04 湯屋の二階
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
それらのもののうちには或る無理なもの、
香具師
(
やし
)
的なものが含まれてをり、「誤謬と強力との混淆物」と彼には思はれた。
ゲーテに於ける自然と歴史
(新字旧仮名)
/
三木清
(著)
もっとも一週間速成油絵講習会といった風の事を企てる
香具師
(
やし
)
もあるだろうけれども、先ず正直な処さような話し位い
莫迦
(
ばか
)
々々しいものはない。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
よくあるやつだ。じっさい、この
香具師
(
やし
)
のように陽に焼けて、悪ずれのしたように見える、龍造寺主計には、そんなようなところが、見えるのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
香具師
(
やし
)
はやつぱり大須を中心として活動して居るのだが、これももう追々すたれて、珍らしい芸は見られなくなつた。
名古屋スケッチ
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「仁寄せ」などと言えば、
香具師
(
やし
)
めくが、やはりここはあくまでこの言葉でなくてはならぬ。それほど、なにからなにまで香具師の流儀だったのだ。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
その場限りの
香具師
(
やし
)
的のものが段々減って、真面目な実用向きの定店が多くなったことは、
外
(
ほか
)
では知らず、神楽坂などでは特に目につく現象である。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
リストは、気高い長老で曲馬師で新古典派で
香具師
(
やし
)
、実際の気高さと偽りの気高さとの同分量の混合、晴朗な理想と
厭味
(
いやみ
)
な老練さとの同分量の混合。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「ハイカラ野郎の、ペテン師の、イカサマ師の、
猫被
(
ねこっかぶ
)
りの、
香具師
(
やし
)
の、モモンガーの、岡っ引きの、わんわん鳴けば犬も同然な奴とでも云うがいい」
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まごうなく、その日の昼、
掲陽鎮
(
けいようちん
)
の辻で、
香具師
(
やし
)
の浪人を
脅
(
おど
)
し、またさんざん自分のあとを追ッていたあの壮漢だ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ちょうど
香具師
(
やし
)
が、
娘
(
むすめ
)
をおりの
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
れて、
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せて、
南
(
みなみ
)
の
方
(
ほう
)
の
国
(
くに
)
へゆく
途中
(
とちゅう
)
で、
沖
(
おき
)
にあったころであります。
赤いろうそくと人魚
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
が、この男はまだ芸術家になりきらぬ中、
香具師
(
やし
)
一流の
望
(
のぞみ
)
に
任
(
まか
)
せて、安直に
素張
(
すば
)
らしい大仏を造ったことがある。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
浜辺の
香具師
(
やし
)
連中はみんな何かを飾つて、それを売るようなかつこうをしている習慣だつたので、老人もかなりボロボロになつた漁師の網を飾つていたが
青君の追跡
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
これは石を拳骨でわるのと共に、田舎の祭礼や縁日なぞに唐手使いと称する
香具師
(
やし
)
がやって見せる芸である。
馬庭念流のこと
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
それで
香具師
(
やし
)
の群に投じ花又組に入った。そのことは、父の「光雲自伝」の中には話すのを避けて飛ばしているが、——そうして祖父は一方の親分になった。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
六日には御田植があって終るので、四日間ぶっ通しの祭礼を当込みに、
種々
(
いろいろ
)
の商人、あるいは
香具師
(
やし
)
などが入込み、その
賑
(
にぎ
)
わしさと云ったらないのであった。
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
これに就いてはお角さんが
香具師
(
やし
)
の方へよく渡りをつけてくれ、道庵先生が大奮発で、なけなしの財布を逆さにしてくれたればこそで、この点に於ては米友も
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それは方々を渡り歩く
香具師
(
やし
)
の歯医者で、総入れ歯や歯みがき粉や散薬や強壮剤などを売りつけていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そこで、父はまことに尤もだと答えて、通りがかりの
香具師
(
やし
)
に呉れてやってしまったことがあるが、そのとき私は子熊に別れるのがつらさに、涙を流したのを記憶している。
香熊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
或人が四千五百弗まで
糶上
(
せりあ
)
げて落したそうだ。一体虎なんかは
香具師
(
やし
)
の買うものだろう。
髪の毛
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
香具師
(
やし
)
の力持ちの夫婦は肥った運動服のかみさんを先に立てゝ、のそ/\キャフェの軒の下に避難しに行く。その後に残した道のはたの大きな
鉄唖鈴
(
てつあれい
)
を子供達が靴で蹴っている。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
詐欺師や
香具師
(
やし
)
の品玉やテクニックには『永代蔵』に
狼
(
おおかみ
)
の黒焼や
閻魔鳥
(
えんまちょう
)
や
便覧坊
(
べらぼう
)
があり、
対馬
(
つしま
)
行の煙草の話では不正な輸出商の
奸策
(
かんさく
)
を喝破しているなど現代と比べてもなかなか面白い。
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
いろいろ
種類
(
しゅるい
)
のちがう
香具師
(
やし
)
や、
音楽師
(
おんがくし
)
や、屋台店が二、三日まえから出ていた。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
もし自分の家に何か
香具師
(
やし
)
のような、うろんな軽業師のような奴でも入って来たら、きっとそいつを怪しいと思ったでしょうが、それと寸分ちがわない嫌疑を僕はいだいているのですよ。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
しかし
我邦
(
わがくに
)
ではまだ臓物の食べ方を知らない人が多いため
美味
(
おい
)
しい臓物も腸と一緒に肥料屋に売られたり、あるいは胃袋なんぞは折々
香具師
(
やし
)
の材料となって縁日の
見世物
(
みせもの
)
になるそうです。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
秘術めいた薄ぺらな本などを売りつける
香具師
(
やし
)
達の姿は一つも見当らなかった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
マーサー夫人——結婚以来客間に現はれてこの奇異な人物の愚弄の的になつてゐた例のマーサー夫人ごときも大分それに肩を入れてひとつ
香具師
(
やし
)
の衣裳を着て彼の気を引いて見ようとした。
吸血鬼
(新字旧仮名)
/
ジョン・ウィリアム・ポリドリ
(著)
「むろん、そんなこといいやしません、ぼくは
香具師
(
やし
)
じゃありませんからね」
植物人間
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
売り子は
香具師
(
やし
)
の若い者で、常連になっているのが七人、一枚売れば幾らという歩合制であるが、記事のたねを持って来れば、相当な手間賃になるようで、かれらのほかにも、火事とか落雷とか
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
大学生雨谷君は、すっかり
香具師
(
やし
)
になったつもりである。
金属人間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
言って見れば、そのころの銀座は
香具師
(
やし
)
の巣である。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
よく
香具師
(
やし
)
と間違えられなかったね、アハハハハハハ
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「両国から
香具師
(
やし
)
を呼んでおいでなさいませ」
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
『いゝ
香具師
(
やし
)
もつかなかつたと見えるな』
鴉と正覚坊
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
人を集める山伏姿の
香具師
(
やし
)
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
香具師
(
やし
)
がいっぱい
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
奥州街道や中仙道、なるたけ
辺鄙
(
へんぴ
)
の個所を選び、博徒や
香具師
(
やし
)
などの頭をたより、用心棒や剣術の指南、そんなことをして日を過ごした。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
江戸のまん中にむやみに熊なんぞが
棲
(
す
)
んでいる訳のものじゃあねえ。どこかの
香具師
(
やし
)
の家にでも飼ってある奴が、火におどろいて飛び出したんだろう。
半七捕物帳:29 熊の死骸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「そんなものを出しや、生捕つて
香具師
(
やし
)
に賣るが、どうも、狐や狸の化けたのではなくて、矢つ張り人間の化けたのだから氣になるぢやありませんか」
銭形平次捕物控:306 地中の富
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夜店のたべもの、夜店の発明品だ。
香具師
(
やし
)
がいう如く、あっちにもこっちにもあるというありふれた品物ではない。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
稲荷界隈を縄張りにしている
香具師
(
やし
)
の親分が見廻りに来てここで食事をするうち、ここの内儀に目をつけた。
安吾巷談:06 東京ジャングル探検
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
深川の顔役で
香具師
(
やし
)
のほうもやっている木場の甚てえ親分とな、ちょっくらほかのかかり合いで
相識
(
しりあい
)
になったのだが、この
仁
(
ひと
)
がいってすすめてくださるのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「僕の
親父
(
おやじ
)
が、
香具師
(
やし
)
の手から買取ったのです。そして、十何年というもの、僕の
家
(
うち
)
で飼っていたのです」
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
気まぐれに、二人が人の肩ごしに
覗
(
のぞ
)
きこんで見ると、どうやら
香具師
(
やし
)
が
口上
(
こうじょう
)
を述べたてているものらしい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「待ってくんなよ、お前さんたち、この熊の子を
香具師
(
やし
)
に売るんだって、香具師に売るんなら売るんでいいけれども、そうなると、この親熊の皮はどうなるんだ」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
動物園
(
どうぶつえん
)
では、
立
(
た
)
て
札
(
ふだ
)
に
書
(
か
)
いてあるような、
猛獣
(
もうじゅう
)
の
性質
(
せいしつ
)
がなくなってしまうと、この
白
(
しろ
)
いくまの
処分
(
しょぶん
)
に
困
(
こま
)
りました。このことを、あるりこうな
香具師
(
やし
)
が
聞
(
き
)
き
込
(
こ
)
みました。
白いくま
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
“香具師”の意味
《名詞》
香具を製造する人。また、それを売る人。
(コウグシ、熟字訓:やし)縁日など、人出の多いところで見世物や物品の販売を行う者。てきや。
(出典:Wiktionary)
香
常用漢字
小4
部首:⾹
9画
具
常用漢字
小3
部首:⼋
8画
師
常用漢字
小5
部首:⼱
10画
“香具”で始まる語句
香具山
香具
香具売
香具店