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ほんろう
ふりがな文庫
“
飜弄
(
ほんろう
)” の例文
新字:
翻弄
ここまで考えると、純一の心の
中
(
うち
)
には、例の女性に対する敵意が
萌
(
きざ
)
して来た。そしてあいつは己を不言の間に
飜弄
(
ほんろう
)
していると感じた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「同感々々、全くお説の通りですよ。———それで何ですか、その連中はみんなナオミに
飜弄
(
ほんろう
)
されて、互に知らずにいたんですか?」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あなたの天才的頭脳に
飜弄
(
ほんろう
)
されて、単純な夢遊病の発作と信じてしまったに違い無いと思って、人知れず身ぶるいをしたくらいです
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
しかし、浮袋につかまって、巨浪に
飜弄
(
ほんろう
)
されているのとちがって、
飛沫
(
ひまつ
)
を浴びることもなければ、手足を動かすこともいらない。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
奇智紳士を
飜弄
(
ほんろう
)
す 暫くするとその紳士と老僧が私の所へ尋ねて来まして「時にあなたはシナ人であるというがシナはどこか。」
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
▼ もっと見る
君とあの賊とが気を合せて、僕達を
飜弄
(
ほんろう
)
している。というような感じがするのです。君の想像は、まるで神様のように的中する。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
白痴
(
ばか
)
のくせに妹分のお駒に懸想して、
蚯蚓
(
みゝず
)
ののたくつたやうな手紙を書いて、人の惡いお駒に
飜弄
(
ほんろう
)
されて居たことが判つた位のものでした。
銭形平次捕物控:037 人形の誘惑
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
これを思うさま
飜弄
(
ほんろう
)
してやるということは、単に空想するだけでも愉快なのだが、私にはどうも生得大学生というものがひどく苦が手なのだ。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
温和しい妻が夫人のために、どんなに云いくるめられ、どんなに
飜弄
(
ほんろう
)
されているかも知れぬと思うと、一刻も
逡巡
(
しゅんじゅん
)
しているときではないと思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
武士は戦争の商売人だが、農民の鉄砲戦術に
飜弄
(
ほんろう
)
された。しかもそれが拙劣な戦法によることを悟らないのである。
安吾史譚:01 天草四郎
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
同時に又彼自身の中の予言者は、——或は彼を生んだ聖霊はおのづから彼を
飜弄
(
ほんろう
)
し出した。我々は
蝋燭
(
らふそく
)
の火に焼かれる蛾の中にも彼を感じるであらう。
西方の人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其
(
その
)
富と不良な好奇心とを
以
(
もつ
)
て異邦の若き女子を
飜弄
(
ほんろう
)
する事を恥ぢない英米の偽善的男子であると想像する。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
それから早くも五十年——。今は回顧するもいやだ。私の回顧は自己嫌悪と悔恨と社会に対する
憎悪
(
ぞうを
)
と運命の
飜弄
(
ほんろう
)
にいきどほりをよびさますものにすぎないからである。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
すると、
宗助
(
そうすけ
)
にはそれが、
眞心
(
まごゝろ
)
ある
妻
(
さい
)
の
口
(
くち
)
を
藉
(
か
)
りて、
自分
(
じぶん
)
を
飜弄
(
ほんろう
)
する
運命
(
うんめい
)
の
毒舌
(
どくぜつ
)
の
如
(
ごと
)
くに
感
(
かん
)
ぜられた。
宗助
(
そうすけ
)
はさう
云
(
い
)
ふ
場合
(
ばあひ
)
には
何
(
なん
)
にも
答
(
こた
)
へずにたゞ
苦笑
(
くせう
)
する
丈
(
だけ
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
鳴雪翁は短評を以て人を
揶揄
(
やゆ
)
したり、
寸言隻語
(
すんげんせきご
)
を加へて他の詩文を
飜弄
(
ほんろう
)
したりすることはむしろ大得意であつたのであるが、今この俳句選の評を見ると如何にも乳臭が多くて
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
慧鶴はこんな、さまざまな今までには覚えたことのない気持に
飜弄
(
ほんろう
)
されながら坐禅を続けた。続けざるを得なかったのだ。富士と自分は、いま絶体絶命の試錬を受けつつあるのだ。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それはエーテルの
大海
(
おおうみ
)
に、木の葉のように
飜弄
(
ほんろう
)
せられるシグナルでありました。
壊れたバリコン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は散々に
飜弄
(
ほんろう
)
せられけるを、劣らじと
罵
(
ののし
)
りて、前後四時間ばかりその座を起ちも
遣
(
や
)
らで
壮
(
さかん
)
に言争ひしが、病者に等き青二才と
侮
(
あなど
)
りし貫一の、
陰忍
(
しんねり
)
強く立向ひて屈する
気色
(
けしき
)
あらざるより
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
到底
(
たうてい
)
自分は此の苦境を逃がれることの出来ぬ何等過去の業果と思ふから、此の肉体をば
餓鬼
(
がき
)
の如き男子の
飜弄
(
ほんろう
)
に一任するが、
然
(
し
)
かし
郎君
(
あなた
)
を
良人
(
をつと
)
と思ふ心に
曾
(
かつ
)
て変動を見たることの無いのは
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
風も無いのに海がにわかに荒れ出して、船は木の葉の如く
飜弄
(
ほんろう
)
せられ、客は恐怖のために土色の顔になって、思う女の名を叫び出し、さらばよ、さらばよ、といやらしく
悶
(
もだ
)
えて見せる者もあり
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は蕩揺する波に全く
飜弄
(
ほんろう
)
されつつある。
赤蛙
(新字旧仮名)
/
島木健作
(著)
その秘密がこの事件の裏面に潜んでいて、二人を自由自在に
飜弄
(
ほんろう
)
しているために、こんな矛盾を描きあらわす事になったのではないか……待てよ……。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
手記に
依
(
よ
)
れば、青年を
飜弄
(
ほんろう
)
し、彼をして、形は奇禍であるが、心持の上では、自殺を遂げしめた彼女なる女性が、瑠璃子夫人であるようにも思われた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ナオミの
奴
(
やつ
)
、顔が剃りたいのでも何でもないんだ、
己
(
おれ
)
を
飜弄
(
ほんろう
)
するつもりで湯にまで這入って来やがったんだ。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
妖
(
あや
)
しい含み笑ひ、香氣
馥郁
(
ふくいく
)
たるものを殘して、女は何處ともなく消えてしまひました。錢形平次はまさに、不用意に近づいたばかりに、存分に
飜弄
(
ほんろう
)
された形です。
銭形平次捕物控:283 からくり屋敷
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
池内が気の毒にさえ思われた。芙蓉は、池内に対しては、普通の人気女優らしい態度で、意地悪でもあれば、たかぶっても見せた。相手を
飜弄
(
ほんろう
)
する様な口も利いた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
松永
弾正
(
だんじやう
)
を
飜弄
(
ほんろう
)
した例の
果心居士
(
くわしんこじ
)
と云ふ男は、この悪魔だと云ふ説もあるが、これはラフカデイオ・ヘルン先生が書いてゐるから、ここには、御免を
蒙
(
かうむ
)
る事にしよう。
煙草と悪魔
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕も、水夫も、巨浪に
飜弄
(
ほんろう
)
されながら、懸命に、本船から遠ざかろうと努めた。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
どんなに、相手が美しい夫人であるとは云え、男性たるものが、こうも手軽に、人形か何かのように
飜弄
(
ほんろう
)
せられることは、何うにも
堪
(
たま
)
らないことだと思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
滅茶々々に
飜弄
(
ほんろう
)
した女、それは四千五百石取の大旗本の妾お勝が、たま/\奔放な野性の
赴
(
おもむ
)
くまゝ、名題の錢形平次を
弄
(
もてあそ
)
んだ積りの
惡戯
(
いたづら
)
に外ならなかつたのでした。
銭形平次捕物控:035 傀儡名臣
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
宗俊は、斉広が
飜弄
(
ほんろう
)
するとでも思ったのであろう。丁寧な語の
中
(
うち
)
に、鋭い
口気
(
こうき
)
を籠めてこう云った。
煙管
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何十人という警官隊が、このたった一挺のおもちゃのピストルの為に、思うが
儘
(
まま
)
に
飜弄
(
ほんろう
)
されたかと思うと、馬鹿馬鹿しさ、
口惜
(
くちお
)
しさに、笑いどころではなかったのだ。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「しかし、あの人をなぜ呼び戻すのだ!」前川は、全く夫人に、
飜弄
(
ほんろう
)
されている形だった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
これだけ曲者に
飜弄
(
ほんろう
)
されると、我慢の角も折れて、錢形平次が唯一の頼りだつたのです。
銭形平次捕物控:046 双生児の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、服装による一種の錯覚から、さも自分が妲妃のお百だとか蟒蛇お
由
(
よし
)
だとかいう毒婦にでもなった気持で、色々な男達を自由自在に
飜弄
(
ほんろう
)
する有様を想像しては、喜んでいるのです。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
のみならず金は必しも我々人間を
飜弄
(
ほんろう
)
する唯一の力ではないのである。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
(
案
(
あん
)
の
定
(
じょう
)
、彼はこの事件では、一時は
全
(
まった
)
く犯人の
為
(
ため
)
に
飜弄
(
ほんろう
)
され、死と
紙一重
(
かみひとえ
)
の
瀬戸際
(
せとぎわ
)
まで追いつめられさえした)のみならず、彼がこの事件に
乗気
(
のりき
)
になったのには、もう一つ別の理由があったのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
所が、同僚の侍たちになると、進んで、彼を
飜弄
(
ほんろう
)
しようとした。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
飜
漢検1級
部首:⾶
21画
弄
常用漢字
中学
部首:⼶
7画
“飜”で始まる語句
飜
飜然
飜訳
飜々
飜案
飜筋斗
飜譯
飜刻
飜牌
飜斗