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靉靆
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たなび
ふりがな文庫
“
靉靆
(
たなび
)” の例文
面影も、色も
靉靆
(
たなび
)
いて、欄間の雲に浮出づる。影はささぬが、香にこぼれて、後にひかえつつも、畳の足はおのずから
爪立
(
つまだ
)
たれた。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
早や夜明け方となつて東はほんのりと白んで、空を見ると二十三日の片はれ月が傾ひて、雲はヒラ/\と
靉靆
(
たなび
)
き、四面は
茫乎
(
ぼんやり
)
して居るのです。私は月を見もつて行きました。
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
しかし大抵の場合にはその不安の上に、より大いなる慈愛の雲が
靉靆
(
たなび
)
いていた。彼は心配よりも
可哀想
(
かわいそう
)
になった。弱い
憐
(
あわ
)
れなものの前に頭を下げて、出来得る限り機嫌を取った。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
錦
(
にしき
)
の帯を解いた様な、
媚
(
なま
)
めかしい草の上、雨のあとの
薄霞
(
うすがすみ
)
、山の
裾
(
すそ
)
に
靉靆
(
たなび
)
く
中
(
うち
)
に
一張
(
いっちょう
)
の
紫
(
むらさき
)
大きさ
月輪
(
げつりん
)
の如く、はた
菫
(
すみれ
)
の花束に似たるあり。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
全く三保の浦から松の枝ぐるみ霞に
靉靆
(
たなび
)
いて来たようでしたよ。……すぐわきの築山の池に、鶴が居たっけ、なあ……姉さん。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
緑
(
みどり
)
の
髮
(
かみ
)
、
桂
(
かつら
)
の
眉
(
まゆ
)
、
皓齒
(
かうし
)
恰
(
あたか
)
も
河貝
(
かばい
)
を
含
(
ふく
)
んで、
優美
(
いうび
)
端正
(
たんせい
)
畫
(
ゑ
)
と
雖
(
いへど
)
も
及
(
およ
)
ぶべからず。
紫
(
むらさき
)
の
帔
(
かけ
)
、
繍
(
ぬひ
)
ある
※
(
したうづ
)
、
珠
(
たま
)
の
履
(
くつ
)
をはきて
坐
(
ざ
)
しぬ。
香氣
(
かうき
)
一脈
(
いちみやく
)
、
芳霞
(
はうか
)
靉靆
(
たなび
)
く。いやな
奴
(
やつ
)
あり。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
あの
方
(
かた
)
の
魂
(
たましひ
)
の
行
(
い
)
らつしやる
処
(
ところ
)
も、それで
知
(
し
)
れます。……
紫
(
むらさき
)
の
雲
(
くも
)
の
靉靆
(
たなび
)
く
空
(
そら
)
ぢやあなくつて、
友染
(
いうぜん
)
の
霞
(
かすみ
)
が
来
(
き
)
て、
白
(
しろ
)
いお
身体
(
からだ
)
を
包
(
つゝ
)
むのでせうね——あゝ、それにね。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
されば、音にも聞かずして、摂津、摩耶山の忉利天王寺に摩耶夫人の御堂ありしを、このたびはじめて知りたるなり。西本の君の詣でたる、その日は霞の
靉靆
(
たなび
)
きたりとよ。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寂
(
しん
)
として、谷の
筧
(
かけひ
)
の趣あり。雲
山岫
(
さんしゅう
)
に
湧
(
わ
)
くごとく、白気
件
(
くだん
)
の欄干を籠めて、薄くむらむらと
靉靆
(
たなび
)
くのは、そこから下りる地の底なる蒸風呂の、
煉瓦
(
れんが
)
を漏れ
出
(
いづ
)
る湯気である。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あわれ、その胸にかけたる繃帯は、ほぐれて
靉靆
(
たなび
)
いて、
一朶
(
いちだ
)
の細き霞の布、
暁方
(
あけがた
)
の雨上りに、
疵
(
きず
)
はいえていたお夏と放れて、眠れるごとき姿を残して、
揺曳
(
ようえい
)
して、空に消えた。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かつて文壇の
梁山泊
(
りょうざんぱく
)
と称えられた
硯友社
(
けんゆうしゃ
)
、その星座の各員が陣を構え、
塞頭
(
さいとう
)
高らかに、
我楽多文庫
(
がらくたぶんこ
)
の旗を
飜
(
ひるがえ
)
した、
編輯所
(
へんしゅうじょ
)
があって、心織筆耕の花を咲かせ、
綾
(
あや
)
なす霞を
靉靆
(
たなび
)
かせた。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
路々
(
みちみち
)
拝んだ仏神の
御名
(
みな
)
を忘れようとした処へ——花の梢が、低く
靉靆
(
たなび
)
く……藁屋はずれに黒髪が見え、すらりと肩が浮いて、
俯向
(
うつむ
)
いて出たその娘が、桃に立ちざまに、目を涼しく
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一帯の霧が
細流
(
せせらぎ
)
のやうに
靉靆
(
たなび
)
いて、空も野も幻の中に、
一際
(
ひときわ
)
濃
(
こま
)
やかに残るのである。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これより
前
(
さき
)
、湯屋の坂上の
蒼空
(
あおぞら
)
から
靉靆
(
たなび
)
く菊の影の中、路地へ乗り入れたその車。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
塵
(
ちり
)
も置かず、世の
創
(
はじめ
)
の生物に似た
鰐口
(
わにぐち
)
も、その明星に影を重ねて、
一顆
(
いっか
)
の
一碧玉
(
だいへきぎょく
)
を
鏤
(
ちりば
)
めたようなのが、棟裏に凝って紫の色を
籠
(
こ
)
め、扉に
漲
(
みなぎ
)
って
朧
(
おぼろ
)
なる霞を描き、舞台に
靉靆
(
たなび
)
き、縁を
廻
(
めぐ
)
って
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
羽衣が三保の浦に
靉靆
(
たなび
)
くか、どうかを見るんだ、しかし、お悦さん、……
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
師走の末の
早朝
(
あさまだき
)
、
藍
(
あい
)
の雲、
浅葱
(
あさぎ
)
の浪、緑の
巌
(
いわ
)
に霜白き、伊豆の山路の
岨
(
そば
)
づたい、その
苞入
(
つといり
)
の初茄子を、やがて霞の
靉靆
(
たなび
)
きそうな乳の
辺
(
あたり
)
にしっかと守護して、小田原まで使をしたのは、お鶴といって
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手を
曳
(
ひ
)
いたの、一人で大手を振るもあり、笑い興ずるぞめきに
交
(
まじ
)
って、トンカチリと
楊弓
(
ようきゅう
)
聞え、
諸白
(
もろはく
)
を
燗
(
かん
)
する
家
(
や
)
ごとの煙、両側の
廂
(
ひさし
)
を
籠
(
こ
)
めて、
処柄
(
ところがら
)
とて
春霞
(
はるがすみ
)
、神風に
靉靆
(
たなび
)
く風情、
灯
(
ひ
)
の影も深く、浅く
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日はまたかげって尾花白く、薄雲空に
靉靆
(
たなび
)
く見ゆる。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
靉靆
(
たなび
)
き渡る霞の中に慈光
洽
(
あまね
)
き
御
(
おん
)
姿を拝み候。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
靉
漢検1級
部首:⾬
25画
靆
漢検1級
部首:⾬
24画
“靉靆”で始まる語句
靉靆垂布
靉靆朦朧
靉靆模糊