“たなび”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:タナビ
語句割合
棚引37.2%
棚曳30.8%
靉靆19.2%
6.4%
揺曳1.3%
棚曵1.3%
軽靡1.3%
1.3%
1.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
空を横切るにじの糸、野辺のべ棚引たなびかすみの糸、つゆにかがやく蜘蛛くもの糸。切ろうとすれば、すぐ切れて、見ているうちはすぐれてうつくしい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東洋の端にある日本のことなどかすみ棚曳たなびいた空のように、空漠くうばくとしたブランクの映像のまま取り残されているのだと梶は思うと、その一隅から
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
早や夜明け方となつて東はほんのりと白んで、空を見ると二十三日の片はれ月が傾ひて、雲はヒラ/\と靉靆たなびき、四面は茫乎ぼんやりして居るのです。私は月を見もつて行きました。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
どちらの空を見ても、清朗和順せいろうわじゅんの気がただよっているのに、金座の上だけに、なにやら悪湿あくしつの気がたなびいている。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
余が桜の杖にあごささえて真正面を見ていると、はるかに対岸の往来おうらいい廻る霧の影は次第に濃くなって五階だての町続きの下からぜんぜんこの揺曳たなびくもののうちに薄れ去って来る。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで梅野十伍は、左手を伸ばして缶の中から紙巻煙草ケレーブンを一本ぬきだし口にくわえた。そして同じ左手だけを器用に使ってマッチを擦った。紫煙が蒙々と、原稿用紙の上に棚曵たなびいた。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まつかしはは奥ふかくしげりあひて、二一青雲あをぐも軽靡たなびく日すら小雨こさめそぼふるがごとし。二二ちごだけといふけはしきみねうしろそばだちて、千じん谷底たにそこより雲霧くもきりおひのぼれば、咫尺まのあたりをも鬱俋おぼつかなきここちせらる。
光は雲にたなびきて
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
それが、群青ぐんじょうなまの陶土に溶かし込んだような色で、粘稠ねっとりよどんでいる。その水面に、みずちの背ではないかと思わせているのが、金色を帯びた美しい頭髪で、それが藻草のようにたなびいているのだよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)