たなび)” の例文
恐と望とに狂ひ歡ぶ無數の眼が髣髴として乳色の光を放ち天の一方にたなびいてゐる。多くの魂はこの眞珠の光を散らしてあまがはを登つて行く。
さしあげた腕 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
どちらの空を見ても、清朗和順せいろうわじゅんの気がただよっているのに、金座の上だけに、なにやら悪湿あくしつの気がたなびいている。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
姫は、緑青を盛って、層々うち重る楼閣伽藍がらんの屋根を表した。数多い柱や、廊の立ち続く姿が、目赫めかがやくばかり、朱でみあげられた。むらむらとたなびくものは、紺青の雲である。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
いくら子供でも、男と女は矢張男と女、學校で一緒に遊ぶ事などは殆ど無かつたが、夕方になると、家々の軒や破風に夕餉の煙のたなびく街道に出て、よく私共は寶奪ひや鬼ごッこをやつた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いくら子供でも、男と女は矢張男と女、学校で一緒に遊ぶ事などは殆んど無かつたが、夕方になると、家々の軒や破風に夕餉ゆふげの煙のたなびく街道に出て、よく私共は宝奪ひや鬼ごツこをやつた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
山腹の紫は、雲となってたなびき、次第次第にさがる様に見えた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)