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軟
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やわ
ふりがな文庫
“
軟
(
やわ
)” の例文
軽い寝息、吐いて吸う
軟
(
やわ
)
らかな女の寝息、すういすういと竜之助の魂に糸をつけて引いて行くようです。ややあって寝返りの音。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
頸
(
くび
)
を
剃
(
そ
)
ったり、
爪
(
つめ
)
を切ったり、細かい面倒を見てくれる若い葉子の
軟
(
やわ
)
らかい手触りは、ただそれだけですっかり彼女を幸福にしたものだったが
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
塵
(
ちり
)
一つすえずにきちんと
掃除
(
そうじ
)
が届いていて、三か所に置かれた鉄びんから立つ
湯気
(
ゆげ
)
で部屋の中は
軟
(
やわ
)
らかく暖まっていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それがおそろしく変形して厚い多肉部が生じ種子はまったく
不熟
(
ふじゅく
)
に
帰
(
き
)
して、ただ果実の中央に
軟
(
やわ
)
らかい黒ずんだ
痕跡
(
こんせき
)
を存しているのみですんでいる。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「なーに大丈夫。ほらごらん、ここに三つの足跡が、この
軟
(
やわ
)
らかい土の上についている。これを一つ調べておこう」
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
この不自由なのに反して、増減自在でかつ幾日経っても
軟
(
やわ
)
らかなままであるという「脂土」のことを考えると、どうも、その土が至極のものと思われる。
幕末維新懐古談:36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
ブラ下げた長い長い二本の
縄
(
なわ
)
の
脚
(
あし
)
を
軟
(
やわ
)
らかに空中に波うたして、
紙鳶
(
たこ
)
は
心
(
こころ
)
長閑
(
のどか
)
に
虚空
(
こくう
)
の海に
立泳
(
たちおよ
)
ぎをして居る。ブーンと云うウナリが、武蔵野一ぱいに響き渡る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それに
違
(
ちげ
)
えねえやな。でえいち、
外
(
ほか
)
にあんな
匂
(
におい
)
をさせる
家業
(
かぎょう
)
が、ある
筈
(
はず
)
はなかろうじゃねえか。
雪駄
(
せった
)
の
皮
(
かわ
)
を、
鍋
(
なべ
)
で
煮
(
に
)
るんだ。
軟
(
やわ
)
らかにして、
針
(
はり
)
の
通
(
とお
)
りがよくなるようによ
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
どうしたらいいかと
思
(
おも
)
って、まごまごしていますと、その
中
(
うち
)
に
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
がさしてきました。
雪
(
ゆき
)
はしだいに
軟
(
やわ
)
らかくなって、
弟
(
おとうと
)
は、もう一
歩
(
ぽ
)
も
身動
(
みうご
)
きすることができなくなりました。
白すみれとしいの木
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
薄い
軟
(
やわ
)
らかげな裏の白い、桑のような形に
裂
(
き
)
れこみの大きい葉の出ているものがあった。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
まるで
瘧
(
おこり
)
の発作のような、異常に烈しいふるえかたであった。そうしてやがて、そのふるえが止ったと思うと、女の躯からふいに力がぬけ、全身が
軟
(
やわ
)
らかく、溶けてしまいそうになった。
鵜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
路
(
みち
)
のかたわらなる草花は
或
(
あるい
)
は赤く或は白い。
金剛石
(
こんごうせき
)
は
硬
(
かた
)
く
滑石
(
かっせき
)
は
軟
(
やわ
)
らかである。牧場は緑に海は青い。その牧場にはうるわしき牛
佇立
(
ちょりつ
)
し羊群
馳
(
か
)
ける。その海には青く
装
(
よそお
)
える鰯も泳ぎ
大
(
おおい
)
なる鯨も
浮
(
うか
)
ぶ。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
軟
(
やわ
)
らに
音
(
おと
)
なく
濺
(
そゝ
)
いで
わなゝき
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
格別これといって情愛の
徴
(
しるし
)
を見せはしなかったが、始終
軟
(
やわ
)
らかい目色で自分たちを見守ってくれていた父のほうだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
長い
葉柄
(
ようへい
)
を
具
(
そな
)
え、
葉面
(
ようめん
)
は
楕円形
(
だえんけい
)
で
重鋸歯
(
じゅうきょし
)
があり、
葉質
(
ようしつ
)
は
軟
(
やわ
)
らかくて
皺
(
しわ
)
がある。四月ごろ
花茎
(
かけい
)
が葉よりは高く立ち、
茎頂
(
けいちょう
)
に
繖形
(
さんけい
)
をなして
小梗
(
しょうこう
)
ある数花が咲く。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
午後は
画
(
え
)
はがきなど書いて、館の表門から陸路停車場に
投函
(
とうかん
)
に往った。
軟
(
やわ
)
らかな砂地に下駄を
踏
(
ふ
)
み込んで、
葦
(
あし
)
やさま/″\の水草の
茂
(
しげ
)
った入江の仮橋を渡って行く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そして
軟
(
やわ
)
らかいパンヤの
蒲団
(
ふとん
)
のなかに独り体を
埋
(
うず
)
めていると、疲れた頭脳も落ち着くのだし、衰えた神経の安めにもなるのであったが、彼にはこの
醜陋
(
しゅうろう
)
な情痴の世界をこえて
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ありし次第をわが田に水引き水引き申し出づれば、痩せ皺びたる顔に深く長く
痕
(
つ
)
いたる法令の
皺溝
(
すじ
)
をひとしお深めて、にったりと
徐
(
ゆる
)
やかに笑いたまい、
婦女
(
おんな
)
のように
軽
(
かろ
)
く
軟
(
やわ
)
らかな声小さく
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
古藤ははいって来た時のしかつめらしい様子に引きかえて顔色を
軟
(
やわ
)
らがせられていた。葉子は心の中で相変わらずの simpleton だと思った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
このオランダイチゴ、すなわちストローベリの実の
食
(
く
)
うところは、その
花托
(
かたく
)
が放大して
赤色
(
せきしょく
)
を
呈
(
てい
)
し味が甘く、
香
(
にお
)
いがあって
軟
(
やわ
)
らかい肉質をなしている部分である。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
其翌晩、妻が雨戸をしめに行くと、今度は北の戸袋に居た。妻がまたけたゝましく呼んだ。往って繰り残しの雨戸で
窃
(
そっ
)
と当って見ると、確に
軟
(
やわ
)
らかなものゝ
手答
(
てごたえ
)
がする。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
父はルムペンかと思うような
身装
(
みなり
)
も平気だが、母は
軟
(
やわ
)
らかい羽織でも引っかけ、印台の金の
指環
(
ゆびわ
)
など指に
箝
(
は
)
めて、お
詣
(
まい
)
りでもして歩きたいふうで、家の暮しも小楽らしく何かと取り繕い
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
汽車は徐々に進行をゆるめていた。やや荒れ始めた三十男の皮膚の
光沢
(
つや
)
は、神経的な青年の
蒼白
(
あおじろ
)
い膚の色となって、黒く光った
軟
(
やわ
)
らかい
頭
(
つむり
)
の毛がきわ立って白い額をなでている。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
葉子の口びるは暖かい桃の皮のような定子の
頬
(
ほお
)
の膚ざわりにあこがれた。葉子の手はもうめれんすの弾力のある
軟
(
やわ
)
らかい触感を感じていた。葉子の
膝
(
ひざ
)
はふうわりとした軽い重みを覚えていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして列車が動かなくなった時、葉子はその人のかたわらにでもいるように
恍惚
(
うっとり
)
とした顔つきで、思わず知らず左手を上げて——小指をやさしく折り曲げて——
軟
(
やわ
)
らかい
鬢
(
びん
)
の
後
(
おく
)
れ
毛
(
げ
)
をかき上げていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
軟
常用漢字
中学
部首:⾞
11画
“軟”を含む語句
柔軟
軟弱
軟風
御柔軟
軟文学
軟柔
軟泥
軟化
軟禁
軟打
軟体
海軟風
軟毛
手軟
軟禁程度
軟派
軟派青年
軟水
軟玉
軽軟
...