しょう)” の例文
寺の僧侶が毎朝まいちょう早起そうききょうしょうし粗衣粗食して寒暑の苦しみをもはばからざれば、その事は直ちに世の利害に関係せざるも、本人の精神は
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
女流詩人らが息を切らし汗を流しながら、シュリー・プリュドンムやオーギュスト・ドルシャンの詩句を、朦朧もうろうたる調子でしょうした。
その俳句文章にはしょうすべきものがすくなくない。子は別に不願醒客と号した。白氏の自ら酔吟先生といったのにならったのであろうか。
梅雨晴 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
時に五七の句調など用ひて、趣向も文章も天晴あっぱれ時代ぶりたれど、これかへつて少年には、しょうしやすく解しやすからんか。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
といえる有様の歴々ありありと目前に現われ、しかも妾は禹の位置に立ちて、禹の言葉を口にしょうし、竜をしてつい辟易へきえきせしめぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
賽児さいじ蒲台府ほだいふたみ林三りんさんの妻、わかきより仏を好み経をしょうせるのみ、別に異ありしにあらず。林三死してこれを郊外にほうむる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
陸上競技のやりなどを買いもとめてバルヂンという彼の作中人物の愛吟を高らかにしょうしつつアテナイの市民、アテナイの選手を気どって我が家に帰る。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「よし、行こう。漢陽に行こう。連れて行ってくれ。逝者ゆくものかくの如きかな、昼夜をてず。」てれ隠しに、はなはだ唐突な詩句をしょうして、あははは、と自らをあざけった。
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
わたしはこの春酒に酔い、この金鏤きんるの歌をしょうし、この好日を喜んでいれば不足のない侏儒でございます。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今度は笈摺おいずりに向って何やら頻りに呪文のようなことをしょうしながら珠数をじゃら/\み鳴らしています。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「もののふの矢なみつくろふ」の歌の如き、鷲を吹き飛ばすほどの荒々しき趣向ならねど、調子の強き事は並ぶ者なく、この歌をしょうすればあられの音を聞くが如き心地致候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
また、人の書を読み経をしょうするに当たり、そのはじめは心を用い意を注ぎてこれをなし、数回反復の後は口に任せて自然に読誦することを得るに至るも、この一例なり。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
温は一しょうしてしと称した。温はこれまで七たび挙場に入った。そしてつねに堂々たる男子が苦索して一句を成し得ないのを見た。彼輩かのはいは皆遠くこの少女に及ばぬのである。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
清三はその時女にその詩の意味を解いて聞かせて、ふたたび声を低くしてしょうした。二人の間にそれがあるかすかなしかし力ある愛情を起こす動機となったことを清三は思い起こした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
文八は、口のうちでいちど読んでから、低声こごえしょうした。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この詩をしょうする者は、その財を盗まるることなからむ。
しょうすべくして解すべからずでよろしい。
宣揚は二度も三度も朗朗としょうした。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
シュルツはゲーテとメーリケとの詩句をしょうした。クリストフは詩がたいへん好きだった。しかしその詩を一句も聞き止めることができなかった。
わたくしは齠齔ちょうしんのころ、その時代の習慣によって、はやく既に『大学』の素読そどくを教えられた。成人の後は儒者の文と詩とをしょうすることをたのしみとなした。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「もののふの矢なみつくろふ」の歌のごとき鷲を吹き飛ばすほどの荒々しき趣向ならねど、調子の強きことは並ぶものなくこの歌をしょうすればあられの音を聞くがごとき心地致候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
かつ貴州きしゅう金竺きんちく長官司羅永菴しらえいあんへきに題したまえる七律二章の如き、皆しょうす可し。其二に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と言い、それから、そのバイロンの詩句を原文で口早にしょうして、私のからだを軽く抱いた。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
抽斎は『れい』の「清明在躬せいめいみにあれば志気如神しきしんのごとし」の句と、『素問そもん』の上古天真論じょうこてんしんろんの「恬惔虚無てんたんとしてきょむならば真気従之しんきこれにしたがう精神内守せいしんうちにまもれば病安従来やまいいずくんぞしたがいきたらん」の句とをしょうして、修養して心身の康寧こうねいを致すことが出来るものと信じていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
の如き艶体えんたいの詩をしょうし得るなり。またかつて中国に遊び給ひける時姑蘇こそ城外を過ぎてに贈り給ひし作多きがなか
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
牧師が来ていて、彼のために最後の祈祷をしょうしていた。老人は枕の上に助け起こされた。重々しく眼を開いた。その眼ももはや意のままにならないらしかった。
しょうするにもへぬ芭蕉の俳句を註釈して勿体もったいつける俳人あれば、縁もゆかりもなき句を刻して芭蕉塚ととなへこれを尊ぶ俗人もありて、芭蕉といふ名は徹頭徹尾尊敬の意味を表したる中に
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
静軒は滑稽諧謔こっけいかいぎゃくの才あるに任せややもすれば好んで淫猥いんわいの文字をもてあそんだが、しかしその論文には学識すこぶる洽博こうはくなるを知らしむるものすくなからず、またその詩賦には風韻極めてしょうすべきものが多い。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
クリストフはがんとしてき入れず、二人の友の幸福なさまをうれしげにながめてる人のよいモークが腹をたてるのも構わずに、フランスの古いことわざを勝手に意地悪くもじってしょうしてきかした。
雨の小息こやみもなく降りしきる響を、狭苦しい人力車のほろの中に聞きすましながら、咫尺しせきを弁ぜぬ暗夜の道を行く時の情懐を述べた一章も、また『お菊さん』の書中最もしょうすべきものであろう。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかしクリストフがいかに願っても、それをしょうする気にはなりかねた。けれどもついに、感動のあまりむちゃくちゃな口調でその二、三句を聞かした。クリストフはそれを崇高なものだと思った。
彼はシルレルの有名な一節のある句をしょうした。