すえ)” の例文
業政は在五中将業平なりひらすえであり、智謀すぐれた人物で、七年このかた武田氏に攻められながら、好防善戦かたく守ってゆるがなかった。
一人ならじ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あなたはトルストイの名を其様そんなに軽いやすっぽいものに思ってお出なのでしょう乎。「吾未だ義人ぎじんすえの物乞いあるくを見し事なし」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「我も亦高皇産霊たかみむすびすえなれば、其の中程はとにもかくにも」の歌は、遺憾なく我ら国民の祖先に関する信念を語ったものである。
遠祖は、敏達びたつ天皇のすえたちばな諸兄もろえからと、いわれているが、そんな遠くの血は、水分川の水上のしたたりが知れないように、彼にも分らない。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくのごとく汝らも外は正しく見ゆれども、内は偽善と不法とにて満つるなり。蛇よ、まむしすえよ、なんじらいかで、ゲヘナの刑罰を避け得んや。
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかしおんなすえよりずる者がサタンのかしらを砕くであろうと、その時すでに神は宣言せられたのであった(創世記三の一五)。
忠兵衛の家は、この二人の内いずれかのすえであるか、それとも外に一豊の弟があったか、ここににわかさだめることが出来ない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
われむかし年わかくして今おいたれど義者のすてられ或はそのすえかてこいあるくを見しことなし。(詩篇三十七の二十五)
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
また祖母 Lady FItzgerald は有名なボイル(Robert Boyle)の兄弟のすえだそうである。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
男はそのかみ、神武御東征のとき、偽者にしもの土蜘蛛と呼ばれ、来目くめの子等によって征服されて帰順した、一党のすえであった。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
キリストも「天国にあるものはめとらず、嫁がず」といっている。あるいは罰せられたるもののすえなるわれらには絶対的の聖潔に達することは不可能かもしれない。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それだけの焔硝を作り得る者は、名人一夢斎のすえ、喜太夫の倖、稲富喜三郎のほかにはありません。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
大物主神は素戔嗚尊すさのおのみこと脚摩乳あしなつち手摩乳てなつち夫妻の女をめとって生んだ子ともすえともいう(『日本紀』一)。この夫妻の名をかく書いたは宛字あてじで、『古事記』には足名椎手名椎に作る。
赤んぼは自分がジョン・フィールドのあわれなせこけた餓鬼ではなくて、貴い家柄のすえであり世界の希望であり嘆賞の的であるのに、それを知らないでいるといったふうである。
ことの起りは、脇本さんがかねて藤懸静也教授に会われた際、同教授が『雪華図説』の著者土井利位の家老であった鷹見泉石のすえと姻戚の間に在ることをきかれていたのに始まった。
上杉征伐に功のあった三河の鈴木伝助のすえで、榊原さかきばらに仕えて代々物頭ものがしら列を勤めてきたが、伝内は神田お玉ヶ池の秋月刑部ぎょうぶ正直の高弟で義世流の達人であり、無辺無極流のやりもよく使うので
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
河野家じたいがこの「豪族」の一つで、伊予いよの名族河野氏のすえ加藤嘉明かとうよしあきに仕え、嘉明が伊予松山から会津に転封され、嘉明の子明成が徳川からつぶされるや、土着して「東北の豪族」となった。
加波山 (新字新仮名) / 服部之総(著)
さらに新人のゆうなるものは、道昭、智通、定慧じょうえなどの僧侶である。道昭は古い帰化人のすえであり、定慧は鎌足かまたりの子であるが、共に唐に入って玄弉三蔵げんじょうさんぞうに学び、当時の世界文化の絶頂をきわめて来た。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
お前達もやっぱりルチフェルのすえではないか。11770
パートロクロス、神のすえ、すぐれし騎將、ああいそげ!
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
そして、経久のすえ尼子勝久をようして、しきりと山陰に風雲の日を呼ばんとしている者は、勝久の股肱ここう山中鹿之介幸盛やまなかしかのすけゆきもりであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すがたかたちやさしき白髪のおきなにて、ダンテの神曲ヂウイナ・コメヂア訳したまいきというヨハン王のおんすえなればにや、応接いとたくみにて
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
先生はまた言いました。「なにも乞食のすえを惧れることはないでしょう。一度は土に流れてごらんなさい。きっとそこから新鮮な魂が見出されて来ますから」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まむしすえよ、誰が汝らに、来らんとする御怒を避くべきことを示したるぞ。さらば悔い改めにふさわしき果を結べ。斧ははや樹の根に置かる。されば凡て善き果を
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
そして清盛に反抗するいっさいの手段は尽きたけれど、ただ一つ呪うことはできる、それで平氏の子孫のすえにまで呪詛じゅそを遺して死ぬところを、その呪詛を眼目にして描こうと思っています。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
英国の学者までもドイツ人を匈奴きょうどすえののしり、その身に特異の悪臭あり全く英人と別種なるよう触れ散らすを見ては、学説の転変猫の眼もあきれるべく、アリア種の馬の名が、一番高尚とかいう説も
「いや、一概にそうとばかりは言うまいぞ。……痩せても、枯れても川崎了斎かわさきりょうさいすえ、鬼畜に祟りなし、ぐらいのことはちゃんと心得ておる。……しかし、なんと言っても、現在、正眼まさめで見たからは……」
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
サブスのすえの魔術師で、ノルチアに住んで
すがたかたちやさしき白髪のおきなにて、ダンテの『神曲』訳したまひきといふヨハン王のおんすえなればにや、応接いとたくみにて
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「足利家も源氏の御嫡流、佐々木殿も頼朝公以来の名族。申さばおなじ流れのおすえ、ここでお会いなされる御縁が、自然待っていたものとぞんずる」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まむしすえよ、誰が汝らに、来たらんとする御怒りを避くべきことを示したるぞ。さらば悔い改めにふさわしきを結べ」(マタイ三の七、八)と叫びし預言者の声は忽焉こつえんとして絶え
こどものとき小学校へ送り迎えをして呉れたり、わたくしの好きないなのおへそを焼いて呉れたり、母がわたくしを乞食のすえと罵るのを庇って呉れたり、想い出せば親切だったと思うことも沢山あります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
……なんでも、上総で名のある和学者のすえだそうで……
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
わたくしは香以のすえの芝にいる女の名を問いその夫の名をもたしかめようと思ったが、二人共何一つ知らなかった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あなたは八幡殿からの正しいおすえ。けれどまた、野州足利ノ庄で生れたままの田舎冠者いなかかじゃ、少しは他人の情や憂き目にもお会いになってみなければ……と。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足利あしかが一族のすえである。室町将軍の血統ちすじが絶えたときは、吉良氏が世継ぎを出すことになっていたものだと云うことが、上野介のよく持ち出す自慢話であった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿部の屋敷の裏門に向うことになった高見権右衛門はもと和田氏で、近江国おうみのくに和田に住んだ和田但馬守たじまのかみすえである。初め蒲生賢秀がもうかたひでにしたがっていたが、和田庄五郎の代に細川家に仕えた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この青春の黒髪をろしてまで詫びせよとは、八幡殿のすえと口ぐせにほこる、父もいうまい、母も願うまい。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元秀の養子完造かんぞうもと山崎氏で、蘭法医伊東玄朴の門人である。完造の養子芳甫ほうほさんはもと鳴海なるみ氏で、今弘前の北川端町きたかわばたちょうに住んでいる。元秀の実家のすえは弘前の徒町かちまち川端町の対馬鈆蔵しょうぞうさんである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
アラビヤ石油を掘る楠氏の一孫と、しずかに鎌倉に住む吉田大納言のすえと、そして現実の近代日本と、こう照合してみると、日本という国はじつにおもしろい。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが漢室のわかれた者のすえである——玄徳はちん外叔がいしゅくにあたるものぞと、勿体ない仰せをこうむりました。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖先は瓊州けいしゅうの出で、軍官のすえであり、いまでも実兄の孫立そんりゅうは、登州守備隊の提轄ていかつ隊長の職にある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大江匡房まさふさすえが、壬生みぶにおる。いまでも居るとおもう。ひとまずそこへ送ってくれい」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしらを初め、村々の者は、代々ここの土に住み着いて百姓しておりまするが、いずれも遠い大祖おおおやは、伊勢の大神おおかみさまにしたごうて諸国にわかれた御先祖がたのすえでござりまする。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元々、上古の久米部くめべの兵士のすえでもある。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)