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行爲
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かうゐ
「
貴樣達はあの
時の
中根の
行爲を
笑つたかも
知れん。
然し、
中根は
正しく
軍人の、
歩兵の
本分を
守つたものだ。
豪い、
豪い‥‥」
彼は
反目して
居るだけならば
久しく
馴れて
居た。
然し
彼は
從來嘗てなかつた
卯平の
行爲に
始めて
恐怖心を
懷いたのであつた。
それからまた
彼女は、
自分自身のことよりも、
子供の
行末を
計つたのだつたといふ
犧牲的な(
自ら
思ふ)
心のために、
自ら
亡夫の
立場になつて
自分の
處置を
許した。
結極男の
不徳な
行爲が
責められた。
然るに、
中根は
身の
危急を
忘れて
銃を
離さず、
飽くまで
銃を
守らうとした。あの
行爲、あの
精神は
正に
軍人精神を
立派に
發揚したもので、
誠に
軍人の
鑑である。
偶然に
起つた
彼の
破廉耻な
行爲が
俄に
村落の
耳目を
聳動しても、
兎にも
角にも一
家を
處理して
行かねばならぬ
凡ての
者は、
彼等に
共通な
聞きたがり
知りたがる
性情に
驅られつゝも
然しそれは
分別ある
壯年の
間にのみ
解釋し
記憶された。
其の
事件の
内容は
勘次のおつぎに
對する
行爲を
猜忌と
嫉妬との
目を
以て
臆測を
逞しくするやうに
興味を
彼等に
與へなかつた。