“経帷子:きょうかたびら” の例文
“経帷子:きょうかたびら”を含む作品の著者(上位)作品数
国枝史郎6
ヴィクトル・ユゴー6
泉鏡花4
林不忘2
野村胡堂2
“経帷子:きょうかたびら”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語17.3%
文学 > 日本文学 > 戯曲1.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「私が死んだら、姉さん、経帷子きょうかたびらも何にも要らない、お嬢さんに頂いた、この半襟を掛けさしておくれよ、頼んだよ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
嵐は益〻え狂い、雪は滝のように降りそそぎ、硫黄ヶ滝の絶壁は経帷子きょうかたびらで蔽われたように、白一色の物凄さ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この妖僧へ着せようが為めか、経帷子きょうかたびらのような雪が、レニングラード(その頃ペトログラード)の大都会に降っていた。
世界の裏 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おう、仕立ものの用はねえか。羽織はおりでも、はかまでも。何にもなきゃ経帷子きょうかたびらを縫ってら。勘定は差引だ。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——君! マダム・ハヤミの奴、大理石の経帷子きょうかたびらきこんで昨夜おそく神戸へ行ったぞ、おい、君。女の肉体讃美はよさないか。
飛行機から墜ちるまで (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
そして、死骸しがいの上へ最後の愛撫あいぶをしていたが、経帷子きょうかたびらに包まれた腕に触れたとき、
宝石の序曲 (新字新仮名) / 松本泰(著)
どちらを見ても、板小屋や白堊はくあ塗り、喪布のような古い黒壁や経帷子きょうかたびらのような新しい白壁。
雪におおわれたやぶが、経帷子きょうかたびらを着た幽霊のように彼の路を取りまいているのを見て、なんどもなんども彼はぞっとしたものだ。
そとに立って、戸を叩いている「物」の、白い着衣——経帷子きょうかたびらが風にひらひらして、見えるのだ。
それが、妙なことには全身ずぶ濡れの経帷子きょうかたびらを着て、壁に面してさむざむと坐っているのである。
それはちやうど、本堂のすそから垂れてゐる経帷子きょうかたびらの裾を踏んで行くやうな気持だつたと言つたら、母さまはお笑ひになるでせうか。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
と老人は眼で叱り、「経帷子きょうかたびらがお通りになる。そうだ血染めの経帷子がな。声を立てて見付けられたら私もそなたも命がない。黙って黙って」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼は二つの無限なるものによって同時に葬られたごとく感ずる、すなわち大洋と天との二つによって。一つは墳墓であり、他は経帷子きょうかたびらである。
それらの大きな明るい窓、そのうるわしい日の光、その清らかな空、そのかわいい花、どれもこれもただ白く色あせて、経帷子きょうかたびらの色になった。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
その姿は経帷子きょうかたびらに包まれて彷徨ほうこうし、おぼろなるうち震う上衣にくるまって直立し、死の世界の恐ろしい生命に生きてるがようである。
棺の蓋は開かれました。中は型のごとく経帷子きょうかたびらに、薄化粧をさせた女主人お釜の死骸。
元来小柄な伯父の、経帷子きょうかたびらを着て横たわった姿は、ちょうど、子供のようであった。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
驚きと恐れと一つにしたような異様の叫び声が、人々の口をいて出た。風呂敷につつまれた物というのは、白い新しい経帷子きょうかたびらであった。
経帷子の秘密 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
死んで行く人へ着せる経帷子きょうかたびらに螢の光がさしたような、陰気の晩でござりました。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
穴の底に、ボーッと白く経帷子きょうかたびらが見え、そこから生えている死人の首は、闇に溶け込んでいて、併し、それ故に、どんなに怖くも想像出来るのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それを思う時にはいかなる人も、人間の発明になった二つの経帷子きょうかたびらたるその道服と面紗かおぎぬとの前に、必ずや戦慄せんりつを覚ゆるであろう。
女子 あの真先に小さく見える白い色のかけぎぬは、柩を包んだ経帷子きょうかたびらか?
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
紙帳は、闇の中に、経帷子きょうかたびらのように、気味悪く、薄白く、じっと垂れている。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
羽ばかり秋の蝉、ひぐらしの身の経帷子きょうかたびら、いろいろの虫の死骸しがいながら巣を引挘ひんむしって来たらしい。それ等が艶々つやつやと色に出る。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
喪布の下には、まっすぐなこわばった姿が大きいのと小さいのと二つ見えており、二つの顔は経帷子きょうかたびらの冷ややかなひだの下にぼんやり浮き出していた。
その女性も、当日、七つ松の辻で斬られたうちの一人であるが、車から引きずり降ろされてもわるびれず経帷子きょうかたびらのうえに色よき小袖を着、いざ、処刑となると、
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
瞬間に、紙帳の中の燈火ともしびが消え、紙帳は、経帷子きょうかたびらのような色となり、蜘蛛の姿も——内側から描かれていたものと見え、燈火が消えると共に消えてしまった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女連は、別の部屋の方で、経帷子きょうかたびら頭陀袋ずたぶくろのようなものを縫うのに急がしかった。母親はその傍でまた臨終の時のたよりなかったことをこぼしはじめた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
経帷子きょうかたびらにでも着換えるのか、そんな用意はねえすべい。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その日は女がみんなして宵子の経帷子きょうかたびらを縫った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夢想家の目より見れば、史上のあらゆる虐殺者らがそこにいて、恐ろしい薄暗がりの中にひざをかがめ、経帷子きょうかたびらの一片を前掛けとし、悲しげにおのれの所業をぬぐい消している。
如何どうにかして助けてやりたいが、ハテ難物じゃ、それともいっそ経帷子きょうかたびら吾家わがや出立しゅったつするようにならぬ内追払おっぱらおうか、さりとては忍び難し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「それなら、私を葬る経帷子きょうかたびらにしておくれ。」
「だアれがつくる、経帷子きょうかたびらをつくる」
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
「おお血染めの経帷子きょうかたびらだな?」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
棺の中は空っぽ——と思いきや、昨夜卒中で死んだ主人の孫右衛門が、白い経帷子きょうかたびらを着たまま、入棺した時と少しの変りもなく、差し寄せた灯の中に寂然じゃくねんとして死顔を俯向うつむけているのです。
経帷子きょうかたびら、 三枚。
凍りつくような寒い夜、雪が積って月光の下に広い経帷子きょうかたびらのように白く横たわって寂莫せきばくたるサルペートリエールの一郭、そのすごい大通りと黒いにれの並み木の長い列とを所々赤く照らしてる街灯の光
おまんらが集まって吉左衛門のために縫った経帷子きょうかたびら珠数じゅず頭陀袋ずだぶくろ編笠あみがさ藁草履わらぞうり、それにおくめが入れてやりたいと言ってそこへ持って来た吉左衛門常用のつえ
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と着た浴衣は経帷子きょうかたびら、使った行水は湯灌ゆかんとなる事とは、神ならぬ身の萩原新三郎は、誠に心持よく表を閉めさせ、よいの内から蚊帳かやを吊り、其の中で雨宝陀羅尼経うほうだらにきょうしきりに読んで居ります。
棺にも入れずに死骸許りを捨てるとなると、棺の窮屈という事は無くなるから其処は非常にいい様であるが、併し寐巻の上に経帷子きょうかたびら位を着て山上の吹き曝しに棄てられては自分の様な皮膚の弱い者は、すぐに風を引いてしまうからいけない。
死後 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
十日間の病苦におもやせてはいたが信のかおにはどこか稚らしい可愛い俤が残って、大人の死の様に怖い、いやな隈はすこしもなく、蝋燭を灯して湯灌ゆかん経帷子きょうかたびらをきせると死んだ子の様にはなく、またしてもこの小さい魂の飛び去った遺骸を悼たんだのであった。
梟啼く (新字新仮名) / 杉田久女(著)
梅はおおかた散りつくし、彼岸の入りは三日前、早い桜は咲こうというのに、季節違いの大雪が降り、江戸はもちろん武蔵むさし一円、経帷子きょうかたびらに包まれたように、真っ白になって眠っていたが、ここ小梅の里のあたりは、家もまばらに耕地ひらけ、雪景色にはもってこいであった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)