“私(わたく)” の例文
夫だけでは確(しか)と分らぬ何か是と云う格別な所が有そうな者だ女「有ますとも老人の室の掃除向(むき)と給仕とは私(わたく)しが引受けて居ましたもの、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
爲(なし)居(ゐ)たり然るに此時江戸へ出訴(しゆつそ)の事組頭(くみがしら)出府致すべき處種々(いろ/\)取込(とりこみ)のことあるにより飛脚(ひきやく)を村方より立ると云を九助は聞込何卒私(わたく)しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私も驚ろいて精(くわ)しく様子を聞いて見ますと、私(わたく)しの逢ったその晩から急に発熱して、いろいろな譫語(うわごと)を絶間なく口走(くちばし)るそうで
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「はい、私(わたく)しは当年五十七になりますが、丁度(ちょうど)四十一の年からここに雇われて居ります」と云う。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私(わたく)しばかりでありません、誰でもお米を食べる人が一度その事を聞いたらなるほどと感心して生涯忘れる事はありますまい。しかるに私どもは今まで頓(とん)と知りませんでした。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何(なに)ごとぞ飽(あ)くまで優(やさ)しき孝行(かう/\)のこヽろに似(に)す、父君(ちヽぎみ)母君(はヽぎみ)が苦勞(くらう)の種(たね)の嫁(よめ)いりの相談(さうだん)かけ給(たま)ふごとに、我(わが)まヽながら私(わたく)し一生(いつしやう)ひとり住(ず)みの願(ねが)ひあり、仰(おふ)せに背(そむ)くは罪(つみ)ふかけれど
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
のっそり十兵衛と口惜(くや)しい諢名(あだな)をつけられて居る奴(やっこ)でござりまする、しかしお上人様、真実(ほんと)でござりまする、工事(しごと)は下手ではござりませぬ、知っております私(わたく)しは馬鹿でござります
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
願(ねが)はれ何卒(なにとぞ)私(わたく)し儀(ぎ)御役御免下(ごめんくだ)さるべしと云(いは)れしかば何故退役(たいやく)を願(ねが)はるゝやと申さるゝに大岡殿此度(このたび)煙草屋(たばこや)喜八裁許(さいきよ)違(ちが)ひ科(とが)なき者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私(わたく)しが船頭の仮色(こわいろ)を使って、ようやく調子づいてこれなら大丈夫と思って得意にやっていると、……つまり身振りがあまり過ぎたのでしょう
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余所目(よそめ)にも羨(うらや)まるゝほど親(したし)げに彼れが首に手を巻きて別れのキスを移しながら「貴方(あなた)、大事をお取(とり)なさい、内(うち)には私(わたく)しが気遣うて待て居ますから」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
別亭(はなれ)の洒落(しやれ)たるがありて、名物(めいぶつ)の松(まつ)がありてと父君(ちヽぎみ)の自慢(じまん)にすがり、私(わたく)し年來(としごろ)我(わ)が儘(まヽ)に暮(くら)して、此上(このうへ)のお願(ねが)ひは申(まうし)がたけれど、とてもの世(よ)を其處(そこ)に送(おく)らしては給(たま)はらぬか、甚之助樣(じんのすけさま)成長(おうきう)ならば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「私(わたく)しの名は越智東風(おちとうふう)ではありません、越智(おち)こちですと必ず断りますよ」「妙だね」と雲井(くもい)を腹の底まで呑(の)み込む。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見て驚(おどろ)きたる體(てい)なりしが其盜賊は全(まつた)く私(わたく)しなり那(あ)の者は御助(おんたす)け下さるべしと申けるを聞(きゝ)伊兵衞は喜(き)八に對(むか)ひ汝は我が先達(さきだつて)の寸志(すんし)を報(むくは)んとて命を捨(すて)て我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
目科は最(い)と厳格に「はい警察署から送られました、私(わたく)しは其筋の探偵です」と答う探偵との返事を聞き倉子は絶望せし人のごとく元の椅子に沈み込み殆ど泣声(なみだごえ)を洩さんとせしも、思直(おもいなお)してか又起上(たちあが)り
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「ホホホホそうですか。あれは私(わたく)しの従弟(いとこ)ですが、今度戦地へ行くので、暇乞(いとまごい)に来たのです」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)