トップ
>
猶更
>
なおさら
ふりがな文庫
“
猶更
(
なおさら
)” の例文
「それに二三日、
負傷
(
けが
)
をする者がありますから、
猶更
(
なおさら
)
、此の礁は竜王様がおるとか、竜王様の
惜
(
おし
)
みがかかっておるとか申しまして」
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
平岡の方から見れば、
猶更
(
なおさら
)
そうであった。代助は
必竟
(
ひっきょう
)
何しに新聞社まで出掛て来たのか、帰るまでついに問い詰めずに済んでしまった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
死んだと思ったなら
猶更
(
なおさら
)
幽霊に違いない、其のマア女が糸のように
痩
(
や
)
せた骨と皮ばかりの手で、お前さんの首ッたまへかじり付くそうだ
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
知っている人だと思うと、彼女は
猶更
(
なおさら
)
ゾッとした。今にも思い出せそうで、なかなか思い出せぬのが、非常に不気味であった。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その法令が、無事な一万何千日間の生活に甚だ不便なものである場合は
猶更
(
なおさら
)
そうである。政党内閣などというものの世の中だと猶更そうである。
津浪と人間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
兎角
(
とかく
)
男は不愉快らしく、人家の壁に沿うて歩いていて、面白げに
往来
(
ゆきき
)
する
人達
(
ひとたち
)
に触れないようにしているので、
猶更
(
なおさら
)
押し隔てられ
易
(
やす
)
いのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
「今更切れるの、別れるのと、そんな仲じゃあるまい。冗談もいい加減にしな。」と甘く持ちかけたから
猶更
(
なおさら
)
いけない。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ことにとやかくと、人が噂にのぼせたがるものがそうした姿かたちをするのは、
猶更
(
なおさら
)
注意をひきやすいと思っていた。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
だが彼は妙に気が
急
(
せ
)
いた。無理をしまいと思うと
猶更
(
なおさら
)
焦々
(
いらいら
)
した。時々箕島刑事の方に横眼を流して見ると、それとなく
此方
(
こっち
)
を警戒して居る風があった。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
個人については
猶更
(
なおさら
)
のこと、身の廻りのものを限りなく変えて、あらゆる美しさを見せなければならないのである。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
またよしんばそうでないにしても、かような場合に立ち至って見れば、その汚名も受けずには
居
(
お
)
られますまい。まして、余人は
猶更
(
なおさら
)
の事でございます。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『なぜ、無断に役目の持場を離れて来たか。左様な非常の折と分って居れば
猶更
(
なおさら
)
のこと。はやく、山へ帰られいっ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
殊
(
こと
)
にその日が、カラリと晴れた明るい日であったならば
猶更
(
なおさら
)
のこと、恋猫のように気がせかせかとして、とても家の中に
籠
(
こも
)
ってなぞいることは出来なかった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「私の
今日
(
こんにち
)
の境涯では
猶更
(
なおさら
)
そうです——しかし、叔父さん、そういう感じのする時が、一番心は軟かですネ」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
普通に嬉しと思ふ時嬉しといはば俳句は無味になりをはらん、まして嬉しさよと長く言はんは
猶更
(
なおさら
)
の事なり。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
……その門前にあたかもこんな事件が
出来
(
しゅったい
)
したので、
猶更
(
なおさら
)
いろいろの風説が高くなって、なにかその屋敷にも関係があるように云い触らすものが出て来たので
半七捕物帳:34 雷獣と蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
家康
上洛
(
じょうらく
)
を心掛けなば此の飛騨が之有る、即時に喰付て箱根を越えさせ申すまじ、又諸大名多く洛に在りて事起らば、
猶更
(
なおさら
)
利家の味方多からん、と云ったと云う。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
左の手に附て置けば誰も老人の仕業とは思わず、
去
(
さ
)
ればとて現に藻西の名を
書
(
かい
)
て有るから
真逆
(
まさか
)
に藻西が自分で自分の名を書く程の馬鹿な事を仕様とは
猶更
(
なおさら
)
思われず
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
今茲
(
いまここ
)
へ来て何を考えたって役には立たない。未だ雨も降らないのに、出水を心配するなどは
猶更
(
なおさら
)
無駄な話だ。こう思いつつ何も考えない事にして、
仰向
(
あおむけ
)
に踏んぞりかえった。
大雨の前日
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
では何処かの景色とか街とかはどうであろう、併しそんなものは
猶更
(
なおさら
)
むだであった。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「いや、あきらめてよいものかね。男はあゝ云う目に遭わされると、
猶更
(
なおさら
)
恋しさが
募
(
つの
)
るものだ。あれからお伺いしなかったのは、そう/\うるさく附き
纏
(
まと
)
うのも失礼だと思ったからだよ」
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
若
(
も
)
し命の親とすればです、
猶更
(
なおさら
)
その者に
裹
(
つつ
)
み隠す事は無いぢやありませんか。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
流
(
ながれ
)
が急であると
猶更
(
なおさら
)
其感が深い。勿論水嵩が増せば奔放の
勢
(
いきおい
)
は倍加するに相違ないけれども、水の運動の見える所は表面だけに
止
(
とどま
)
るので、
謂
(
い
)
わば臆病者の長刀と同様、真の恐ろしさに欠けている。
渓三題
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
お神さんの方は先年
死亡
(
なく
)
なりまして、今では大師匠一人なんですが、今の師匠の虎松は、実子で有りながら、どうも
邪慳
(
じゃけん
)
で、ちっとも大師匠の面倒を見ませんので、私は
猶更
(
なおさら
)
気の毒で成りません。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
猶更
(
なおさら
)
いつまでもそうしてお
上
(
あげ
)
申したいのです。9505
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
「
預
(
あづ
)
かつて置いて頂戴」と云つた。三四郎は
聊
(
いささ
)
か迷惑の様な気がした。然しこんな時に争ふ事を好まぬ男である。其上往来だから
猶更
(
なおさら
)
遠慮をした。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
飯「これ國、貴様は一番孝助を疑り、膝を突いたり何かしたから余計に謝まれ、己でさえ手をついて謝ったではないか、貴様は
猶更
(
なおさら
)
丁寧に詫をしろ」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
科学的常識は
猶更
(
なおさら
)
である。しかし適当な科学的常識は、事に臨んで吾々に「科学的な
省察
(
せいさつ
)
の機会と余裕」を与える。
流言蜚語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ここを
叩
(
たた
)
いて開けて頂こうかしら。いやいや、この夜更けに、そんなことをしたなら、はしたない心の内を見すかされ、
猶更
(
なおさら
)
疎
(
うと
)
んじられはしないかしら。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と思うと、
猶更
(
なおさら
)
新太郎は是非とも行先を尋ねて、むかし世話になった礼を言いたいと云う心持になる。あの時分景気のよかった芸者やお客の姿が目に浮ぶ。
羊羹
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
殊
(
こと
)
にその当時わたしは新聞記者生活をやめて、小一年ほど浪人していたので、
猶更
(
なおさら
)
なんにも聞くべき便宜を持たなかったのであるが、ただ一度、同座の
榎本虎彦
(
えのもととらひこ
)
君に
逢
(
あ
)
った時に
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あの勝気な松井須磨子が、人気のある盛りの身で、一人になれば、
猶更
(
なおさら
)
自由でありそうなものに思われてさえ、先生
抱月
(
ほうげつ
)
氏に別れては、
楯
(
たて
)
なしでは突進も出来なかったではないか。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と、藤左衛門は、
臍
(
ほぞ
)
に
誓
(
ちか
)
った。血を見たら、衆は衆を呼ぶだろうし、駅路の規定にも触れ、吉良方に
加担
(
かたん
)
の役人でも出たら
猶更
(
なおさら
)
の事だ。遅れた上にも、
日数
(
ひかず
)
に暇どってしまうだろう。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
帳場格子
(
ちょうばごうし
)
の後へ坐りましたが、さあここ二日の間に自分とお敏との運命がきまるのだと思うと、心細いともつかず、もどかしいともつかず、そうかと云って
猶更
(
なおさら
)
また嬉しいともつかず
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
石を建てても碑文だの碑銘だのいうは全く御免
蒙
(
こうむ
)
りたい。句や歌を彫る事は七里ケッパイいやだ。もし名前でも彫るならなるべく字数を少くして
悉
(
ことごと
)
く
篆字
(
てんじ
)
にしてもらいたい。楷書いや。仮名は
猶更
(
なおさら
)
。
墓
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
猶更
(
なおさら
)
躊躇しない訳にいかなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お父様お母様に
猶更
(
なおさら
)
済みませんぞよ、必ずとも道中にて悪い物を食して、腹に
中
(
あた
)
らぬ様にしなさるが
宜
(
よ
)
いのう、お照
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その起因する所が文芸その物と何らの交渉なき政府の威力に
本
(
もと
)
づくだけに、
猶更
(
なおさら
)
の悪影響を一般社会——ことに文芸に
志
(
こころ
)
ざす青年——に与うるものである。
文芸委員は何をするか
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あるいはまた津田君の寡黙な温和な人格の内部に燃えている強烈な情熱の
焰
(
ほのお
)
が、前記の後期印象派画家と似通ったところがあるとすれば
猶更
(
なおさら
)
の事であろう。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
だが、こんな可愛い子供を残して死んで了った、いや、殺されて了った母親こそ
猶更
(
なおさら
)
可哀相だった。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
慶三はお千代の行方が知れなくなったかと思うと急に名残惜しいような気がし出した。折から横町を通りかかる芸者の姿を見れば
猶更
(
なおさら
)
以前の淫楽が思返されてならぬ。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
廿九歳で
後家
(
ごけ
)
になってから
猶更
(
なおさら
)
パリパリしていた養母の亀吉は、よき芸妓としての守らねばならぬしきたりを可愛い
養娘
(
むすめ
)
であるゆえに、小奴に
服膺
(
ふくよう
)
させねばならないと思っていた
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
修理は、宇左衛門を親とも思う。兄弟とも思う。親兄弟よりも、
猶更
(
なおさら
)
なつかしいものと思う。広い世界に、修理がたのみに思うのは、ただその方一人きりじゃ。さればこそ、無理な頼みもする。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『江戸は、
猶更
(
なおさら
)
、油断がならない筈だ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
船宿では
猶更
(
なおさら
)
知らなかった。
半七捕物帳:32 海坊主
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
鼻を
殺
(
そ
)
ぎ耳を斬って馴染だから御免とそれで済むか無礼至極な奴、女の足に刀を踏まれては
猶更
(
なおさら
)
汚
(
けが
)
れた、浄めて返せ
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
たまに横町へでも曲ると、すぐ
迷児
(
まいご
)
になってしまう。論理の地盤を
竪
(
たて
)
に切り下げた坑道などへは、てんから足も踏み込めない。彼の神経系に至っては
猶更
(
なおさら
)
粗末である。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ホウ、そんなことがあったのですか。それでは
猶更
(
なおさら
)
、あの化物を引捕えなければならん。しかし、一体どうして消失せてしまったのか、少しも見当がつかぬのです」
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
手をかえ品をかえ、温顔に
恐面
(
こわおもて
)
に、さまざまの人が、さまざまの策略をめぐらして訪問するのであった。慰問使、
媾和
(
こうわ
)
使、降伏説得使なのである。鯉の頭は
猶更
(
なおさら
)
下ろうとはしない。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ましてやアフリカ大陸の自然の
棲所
(
すみか
)
で撮った河馬の映画となれば
猶更
(
なおさら
)
のことである。
教育映画について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
猶
常用漢字
中学
部首:⽝
12画
更
常用漢字
中学
部首:⽈
7画
“猶”で始まる語句
猶
猶予
猶太
猶太人
猶々
猶豫
猶且
猶子
猶與
猶大