独逸ドイツ)” の例文
そのなかには独逸ドイツの古典的な曲目もあったが、これまで噂ばかりで稀にしか聴けなかった多くの仏蘭西系統の作品がもたらされていた。
器楽的幻覚 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
独逸ドイツ屹度きつと最後の独逸人となるまで戦ふだらう、露西亜ロシア人もまた最後の露西亜人となるまで戦ふだらうが、唯英吉利イギリス人は——さうさ
私は十四世紀の独逸ドイツの神秘家の一人であるエックハルト Meister Eckhart の次の言葉を忘れることができません。
民芸の性質 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そこで私は、忘れぬうちにと思って“ゾンネンベルグ”に備え付けの楽書帳に、たよりない独逸ドイツ語で、この独断を書きつけておいた。
乳と蜜の流れる地 (新字新仮名) / 笠信太郎(著)
「地下鉄会社が買入れた独逸ドイツ製の穴掘り機械だ。地底の機関車というやつだ。三トンもある重い機械が綺麗きれいになくなってしまったんだ」
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は巨大な、横にもたてにも大きな男で、黒の夜会服にすっかり身を包んでいた。白髪を、独逸ドイツ人風に綺麗にうしろへ撫でつけていた。
そして次の年には独ソ不可侵条約が締結され、秋にはもうポーランド問題をめぐって、英国が独逸ドイツに対して宣戦を布告したのである。
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
独逸ドイツ公使伯爵ワルライ氏 Von Arco Valley〈明治三十四年から明治三十九年まで独逸公使であった〉の演説があり
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「ルンプが急に独逸ドイツへ帰つたよ。君によろしくと云つて、其れから写真代の取替とりかへとか割前わりまへとかを君に渡してれつて預けて行つたよ。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
岸本が毎日食堂で見る顔触かおぶれは、産科病院わきの旅館から通って来る柳博士に隣室の高瀬の二人で、若い独逸ドイツ人の客は最早もう見えなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
〇〇〇金マルクという天文学的数量の賠償金であり、そうして、その後に来たものは独逸ドイツと、その国民との悲惨きわまる飢餓であった。
世界の裏 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いかに戦争だとて人と生れたからには此の度独逸ドイツ人が白耳義ベルギーに於てなしたような罪悪を敢てし得るものではないと思っていたのだ。
花火 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
独逸ドイツに於ても、諸君が丸善へ行ったら一見してわかるように黄色本という奴が流行している。イギリスでは大衆文芸が全盛である。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
レンゲというのは独逸ドイツ人で長くオギワル村に住んでいる宣教師だが、中々教養のある男で、それに相当医薬の道にも通じていたらしい。
南島譚:03 雞 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ことに露西亜ロシアは日露戦争に於て受けたる創痍そういのために、墺地利オーストリアがボスニャ・ヘルチェゴビナを併合せるとき、独逸ドイツに威嚇せられて
世界平和の趨勢 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
その男が使う独逸ドイツナマリの英語は実にわかりにくくて弱った。しかし大体の要点だけは、暫く話しているうちにヤッと呑み込めた。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
独逸ドイツでは、スプリイ河と魚類の意識が凍って、浮浪人はその無機物化した魚を発掘して来ては湯桶バス・タブに放して蘇生させて売っていた。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
自分には独逸ドイツ語のほうが、英語よりも洋学の中核に近いように漠然と感じられていたので、それもまたうれしい事の一つであった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
所謂いわゆる一等室の真ン中には、ノートルダームの塔の上から盗んで来た様な独逸ドイツ人がたった一人、船をわがもの顔にそっくりかえっている。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
列車はいよいよ、丁抹デンマーク領最終端の、ヴェステルバーゲンの駅へ入って来た。この駅から西独逸ドイツの国境駅フレンスブルグまで、約四十分。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
この頃伯林ベルリン灌仏会かんぶつえ滔々とうとうとして独逸ドイツ語で演説した文学士なんかにくらべると倫敦の日本人はよほど不景気と見える。(五月二十三日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ところで君達は、十一世紀独逸ドイツのニックス教(ムンメル湖の水精でニクジーと云う、基督教徒を非常に忌み嫌う妖精を礼拝する悪魔教)
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だから、独逸ドイツの潜水艦だってそのへんの水の中にくぐっていないわけのものではない。国籍の方はあげて数えるのも愚かである。
独逸ドイツなどは目下特別の事情にあるから問題にならぬが、それさへ、材料の優秀さによつて、露骨に形式的統制をカムフラジユし得てゐる。
日本映画の水準について (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そのあげくが和作はやはりの寄宿学校で独逸ドイツ語の授業のほかに、少年寮の図書係といふ呑気のんきな役目を世話してもらふ事になつたのである。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
カアライルが独逸ドイツ文の翻訳に誤訳指摘を試みしはデ・クインシイがさかしらなり。されどチエルシイの哲人はこの後進の鬼才を遇する事|
稲妻のように、目を射られたのは、へや一杯に並んだ書架に、ぎっしりと並んだ、独逸ドイツ語じゃろうね、原書の背皮の金文字ですわ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
音楽の勉強をしたいと思えば、独逸ドイツで出来ている、点字のオーケストラやピアノの曲の譜面があるので、それを手で探り探り読むのである。
山の声 (新字新仮名) / 宮城道雄(著)
独逸ドイツ人は不正な、人類、人道主義の敵であるから殺せと命じられて来た彼等は、帰って来た土地で、同様の不正と、逆徳とを発見致します。
C先生への手紙 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
まして日本詩壇の一方に英語詩や独逸ドイツ語詩が場所を占めて創作されるというのでもなかったのに、何故大化改新の方では、それを境にして
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
近世において国民皆兵主義を極端に実行したのは独逸ドイツの官僚政治家です。独逸はこれがためににわかに腕力の強者となりました。
三面一体の生活へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
折も折、独逸ドイツの方では、戦後の救恤きゅうじゅつに対する大功労者として、提琴家クライスラーのために、国民的大感謝祭が行われている最中であった。
すると戦争のまだ落着しないうちから、年来独逸ドイツによつて標榜へうばうされた軍国的精神なるものは既に敵国を動かし始めたのである。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それへ独逸ドイツが色々の山の樹を、日本から取寄せて植えている。巣箱はなくとも巣をかけるにちがいないと思うような処だった。
ずっと後にある独逸ドイツの青年学徒と、しばらく係り合っていたといううわさと照らし合わせてみても、すべてのモダアンな若い女性の例にれず
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この露西亜には外国の人は幾らも来て居る、就中なかんずく独逸ドイツの人などは大変に多い、そのほか和蘭オランダ人も来て居れば英吉利イギリス人も来て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今迄も忘れないのは独逸ドイツ語の時間に久米が独逸ドイツ語の何とか云ふ字(古い鉄砲の名)を、「種ヶ島」と訳したので皆の大喝采を博した事である。
学生時代の久米正雄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
僕はあの独逸ドイツの盲目の機械師の、フォン・ヘルダーを知っていたが、この銃は彼が、死んだ、モリアーテー教授の注文で、組み立てたものだ。
「パパもいいが独逸ドイツの話だけはしてれないといいなあ、ベルリンのことを平気でペルリン、ペルリンというんだもの、傍で気がさしちまう」
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
Ersteエルステ Eindruckアインドルツク(第一印象)と、独逸ドイツ語で其上に書かれた。それは然し、何の事やら静子には解らなかつた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
現に僕は伊国いこくに於ても仏国にでもかくの如き人あることを知っている。また独逸ドイツにも同様の人が今は追放同様の身になっているのを知っている。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
意味は判らなかったけれども、それはたしかに独逸ドイツ語であった。男の細い上体は、黒いズボン吊りにしめつけられ、あえいでいるように見えた。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
蘆屋の家の隣家、と云うよりは背中合せの庭つづきになっている家に、半年ほど前からシュトルツと云う独逸ドイツ人の一家が移って来て住んでいた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
第二回戦セカンドヒイトは、独逸ドイツ加奈陀カナダ新西蘭ニュウジイランドとぶつかり、これも日本は、第三着で、到頭とうとう、準決勝戦に出る資格を失ったのでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
後進を誘掖いうえきするに到りては、今の独逸ドイツ文学に酔へる青年幻想家、いかでか一鞭をふるふて、馬を原頭に立るの勇気無らん。
劇詩の前途如何 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
それが或る日その医者を訪ねて来て、自分は音楽研究のために二三年独逸ドイツにゆきたいと思ふが少し調子が変だから精神鑑定をやつてくれと云つた。
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
同じ年の十月頃、僕は本郷壱岐坂いきざかにあった、独逸ドイツ語を教える私立学校にはいった。これはお父様が僕に鉱山学をさせようと思っていたからである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
多分独逸ドイツ物であったと思うが、或る映画の試写会で、青山喬介あおやまきょうすけ——と知り合いになってから、二カ月程後の事である。
デパートの絞刑吏 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
弁慶という独逸ドイツ人(父は発音が似ているとそんな風に言って了う。)なども、横浜の商会の手代でちょいちょい来た。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「これの兄が独逸ドイツから帰る時、ついでに買って来たんです。こゝへ持ち込むのに大変でした。そら、畳が少し凹んでいるでしょう。根太ねだが抜けたんです」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)