かは)” の例文
至善其物の内容如何は、學者によりて必ずしも説を同うせずと雖も、道徳の判斷が、是の地盤の上に立てるの一事は、古今を通じてかはらず。
美的生活を論ず (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
普通の都会人は、よりすくなき程度に於て、みんな芸妓ではないか。代助はかはらざる愛を、いまの世にくちにするものを偽善家ぎぜんかの第一位にいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かはらぬちぎりのれなれや千年せんねん松風しようふう颯々さつ/\として血汐ちしほのこらぬ草葉くさばみどりれわたるしもいろかなしくらしだすつき一片いつぺんなんうらみやとぶらふらん此處こゝ鴛鴦ゑんあうつかうへに。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ことに晩年にのぞみて、教法の形式、制限を脱却することますます著るしく、全人類にわたれる博愛同情の精神いよいよ盛なりしかど、一生の確信は終始ごうかはること無かりき。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
かく、百姓は即ち万民の意味にして、農耕業者に限りたる約束は更になしといへども、百姓の基本業が則ち農耕に存すること、万世かはることあるべからざる也。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
頼山陽歿後の里恵の操持さうぢは久しきを経てかはらなかつた。後藤松陰撰の墓誌に、「君既寡、子皆幼、而持操屹然、凡事皆遵奉遺命、夙夜勤苦、教育二孤、終致其成立」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
なかなか消えもやらで身に添ふ幻を形見にして、又何日いつかは必ずと念懸おもひかけつつ、雨にも風にも君が無事を祈りて、心はつゆも昔にかはらねど、君が恨を重ぬる宮はここに在り。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おくなにやら、かしましいこゑがする。こひしいおかた、さよなら……あいあい、乳母うばいますぐに!……モンタギューどの、かならかはらず。ちょとってゝくだされ、すぐまたもどってう。
ぢよにとつてかはらぬ人生であり、真実であるのを思はぬ訳にかなかつたらう。
我等は酒家オステリアに入りぬ。客は一間に滿ちたれども、別に我等に目をくるものあらざりき。隅の方なる小卓に倚りて、共に一瓶の葡萄酒を酌み、友誼の永くかはらざらんことを誓ひて別れぬ。
いまも かはらぬ かの 黒旗よ。
不思議だ! どうか、まあかはらず一生かうしてお附合つきあひを為たいと思ふ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼等かれら人並ひとなみ以上いじやうむつましい月日つきひかはらずに今日けふから明日あすへとつないできながら、つね其所そこかずにかほ見合みあはせてゐるやうなものゝ、時々とき/″\自分達じぶんたちむつまじがるこゝろを、自分じぶんしかみとめることがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
始めにかはらず文をはこぶは只〻二人のみぞ殘りける。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あさこゝろ思召おぼしめすか假令たとひどのやうなことあればとてあだびとなんのその笑顏わらひがほせてならうことかはやまほどのうらみもくるすぢあれば詮方せんかたなし君樣きみさま愛想あいさうつきての計略たくみかとはおことばながらあまりなりおやにつながるゝつみおなじと覺悟かくごながら其名そのなばかりはゆるしたまへよしや父樣とゝさまにどのやうなおにくしみあればとてかはらぬこゝろわたしこそ君樣きみさまつまなるものを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)