武張ぶば)” の例文
内面の羞耻と、外面の堂々さと、———此の矛盾を抱いた子供が肩を怒らして武張ぶばって立っている様子は、幾分滑稽こっけいだったであろう。
けれども自分じぶんでそれをやったおぼえはございませぬ。きょうとはちがって東国とうごく大体だいたい武張ぶばったあそごと流行はやったものでございますから……。
そういう気持を現わすのにも彼らは武張ぶばった言葉しか知らないのだ。従って、恐る恐る顔を出した土民には通じるわけが無かった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
或日、武張ぶばった様子をした五十五六の立派な男が、広教寺へ墓参に来た。土地の豪家で北辰一刀流の達人、橋本久五郎という人物である。
私はそれを受取って、パラパラとくって見たが、そこには、昔風な武張ぶばった名前が、朱線でつらねてあるばかりであった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのくせ武張ぶばってみせるのだ。ちょうに上っても、柔軟な公卿を、その小柄で下に見る風があるので、見られる者は何となく
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
剣術の全盛かく癸亥みづのといの前後と云うものは、世の中は唯無闇に武張ぶばるばかり。その武張ると云うのもおのずから由来がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そして下唇は上唇に覆われて縮みあがっているのを無理矢理に武張ぶばろうとして絶間なくゴムのように伸したがっていた。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
頭髪かみっ返しにして、鼠紬ねずつむぎの小袖、茶がかったはかまをはいて、しずかに坐ったところは、少しも武張ぶばったところがない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
五文の木戸銭は高価たかくはないが、芸人は劉ひとり、それも、刀操術などと大きく、武張ぶばったところで、能とする演技は、例の小刀投げのいってんばりだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
助太郎は武張ぶばった男で、髪を糸鬢いとびんに結い、黒紬くろつむぎの紋附を着ていた。そしてもう藍原氏あいばらうじかなという嫁があった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
麻は冷たい、さっくりとしてはだにも着かず、肩肱かたひじ凜々りりしく武張ぶばったが、中背でせたのが、薄ら寒そうな扮装なり、襟を引合わせているので物優しいのに、細面ほそおもてで色が白い。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そもそも武張ぶばった歴史を持ったもので、日本武尊やまとたけるのみことが秩父の山に武具をおさめたのがその起源と古くより伝えられていますが、御岳山の人に言わせると、それは秩父ではない
昔のスパルタ人の教育法は無やみに武張ぶばって、勇ましくいさましくとのみ教えた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さすがにかっぷくがよくて挨拶にもどこか武張ぶばったところがあるとはいうもののこれが昔二龍山の戦いにわずかに生き残った二人のうちの一人で、二龍山のぬしと綽名あだなされて感状や金鵄勲章きんしくんしょうを授与され
結婚 (新字新仮名) / 中勘助(著)
武張ぶばった事を御好みになりましたが、若殿様はまた詩歌管絃しいかかんげんを何よりも御喜びなさいまして、その道々の名人上手とは、御身分の上下も御忘れになったような、隔てない御つき合いがございました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御家人ごけにん旗本はたもとの間の大流行は、黄白きじろな色の生平きびらの羽織に漆紋うるしもんと言われるが、往昔むかし家康公いえやすこうが関ヶ原の合戦に用い、水戸の御隠居も生前好んで常用したというそんな武張ぶばった風俗がまた江戸にかえって来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
弓馬きゅうばみちれる、武張ぶばったひとではございましたが、八十人力にんりきなどというのはうそでございます。気立きだても存外ぞんがいさしかったひとで……。
平生へいぜいは短い脇差わきざしして大名にもらっ縮緬ちりめんの羽織を着てチョコ/\歩くと云うのがれが坊主の本分であるのに、世間が武張ぶばるとこの茶道坊主までが妙な風になって
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と僕は、もう一度眼ばたきをしてつぶやいた。その人だかりの中には七郎丸の祖父と父親が紋付の羽織を着て控えている。僕の父親も同じような姿で、ひど武張ぶばった顔つきをしている。
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
武張ぶばった家柄だけに、名剣名槍などとともに、馬には逸物いつぶつがそろえてある。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
天狗てんぐ本来ほんらい中性ちゅうせいではありますが、しかし性質せいしつからいえば、非常ひじょうおとこらしく武張ぶばったのと、また非常ひじょうおんならしくさしいのとの区別くべつがあり、ばけ姿すがたもそれにじゅんじて、あるいおとこになったり