とめ)” の例文
徳蔵おじがこんなうわさをするのをききでもしようもんなら、いつもしかとめるので、僕なんかはきいても聞流しにしちまって人に話した事もありません。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
炉のすみに転げて居る白鳥はくちょう徳利どくりの寐姿忌〻いまいましそうにめたるをジロリと注ぎ、裁縫しごとに急がしき手をとめさして無理な吩附いいつけ、跡引き上戸の言葉は針
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
元禄拾六未年九月松平紀伊守殿御所司の時分、水谷信濃守申談、京都町餌指之儀、殺生御停止に候間、相とめ候様餌さし三十四人え申渡、証文申付候。
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
一人の大将の家来が、或る街の処刑場しをきばの獄門の下を通りかかるとおい/\と家来を呼びとめるものがありました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
不平があれば出て仕舞しまうい、出なければ不平をわぬがよいと、毎度とめて居たことがあるが、れはマア私の生付うまれつきの性質とでも云うようなものでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ところこの九月でした、僕は余りの苦悩くるしさに平常ほとん酒杯さかずきを手にせぬ僕が、里子のとめるのもきかず飲めるだけ飲み、居間の中央に大の字になって居ると、なんと思ったか
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
さりながら徃日いつぞや御詞おんことばいつはりなりしか、そちさへに見捨みすてずば生涯しやうがい幸福かうふくぞと、かたじけなきおほうけたまはりてよりいとゞくるこゝろとめがたく、くちにするは今日けふはじめてなれど
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とぐべしと存ずるなり何とていつはりを申べきと問答の中にはやあけがたちかくなりければ安五郎はいそ立去たちさらんとしけるをお粂はまづまたれよと引とめる故安五郎は面倒めんだうなりと突飛つきとばすを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
サア降りろと云わぬばかりに車はとめてある。あたりは敵にとっておあつらえ向きの淋しい工場裏だ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
半五「とめるってとめねえとってわたくしも男だから云うなといえば口が腐っても云やアしねえ」
それに乗って十六日の夜の十二時頃小樽の越中屋に帰着した、それから先はあるいは札幌の方に足をとめられた人もあるし、あるいは東京に急いで帰られた人もあるから、思い思いに分れてしまったが
利尻山とその植物 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
かげではつめあかほどのことをとめひとりでぶつ/\としてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
敵が押し寄せたり、神達がおとめなさるからだ。8590
全体小癪こしゃく旅烏たびがらすと振りあぐるこぶし。アレと走りいずるお辰、吉兵衛も共にとめながら、七蔵、七蔵、さてもそなたは智慧ちえの無い男、無理にうらずとも相談のつきそうな者を。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今迄はゆるさゞりしが夫程迄に思ひつめし事なればとめたりとも止るまじ因て只今身のいとまつかはすべし其方出家しゆつけ致すからは此以後對面たいめんかなはぬぞさりながら女の身にて遠路の處身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
も少しおとめ申したいのですが
見聞みきゝして大いに悦びしとは雖も是までも萬事後藤の世話になりしことゆゑせめ旅籠代はたごだいだけは衣類を賣て拂はんといふに夫をもとめられ猶亦二十兩の資本金もとできんまで長兵衞に預けし後藤の深切しんせつ何と禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)