楕円形だえんけい)” の例文
旧字:楕圓形
直径が一メートルきょうもあって、非常に重かった。そしてその上には、楕円形だえんけいの穴が明いていた。十五センチに二十糎だから、円に近い。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もう少し詳しく水に浮かんでいる木切れか何かの運動を注意していると、波が一つ通るごとに、楕円形だえんけいの輪を描いている事がわかります。
夏の小半日 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その日と時間に合わせてばんをまわすと、そのとき出ているそらがそのまま楕円形だえんけいのなかにめぐってあらわれるようになっており
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さし渡し十四、五メートルはあろうか、庭園の中心を占めた不規則な楕円形だえんけいの池である。黒い水が、じっと静まり返っていた。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
楕円形だえんけいのわくの中に入れられた二つの肖像が寝台の両側に壁にかけられていた。画布の余地に像の横に小さな金文字がその名をしるしていた。
ストーンパインの実のなかには楕円形だえんけいのかたいがあって生のまま食うとかんばしい、またこれから油をとることもできる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
街の高層建築はその両側からいまにも倒れそうな鋭角の傾斜を見せて、円形・三角・楕円形だえんけい・四角、さまざまな帽子の陳列のように頭を並べていた。
猟奇の街 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
上の方の二つの黒い点は、のように見えるし、え、そうだろう? それから下にある長いのは口に見えるし、——それに、全体の形が楕円形だえんけいだからね
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
その前に置かれた楕円形だえんけいのテーブルと、窓と窓との間の壁に据えられた鏡つきの化粧台と、壁ぎわの椅子数脚と
それが這っているのを見つけたのは、大分おおいた空港を発って、やがてであった。豆粒まめつぶのような楕円形だえんけいのものが、エンジンから翼の方に、すこしずつ動いていた。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
月はさやかに照り、これらの光景を朦朧もうろうたる楕円形だえんけいのうちに描きだして、田園詩の一節のように浮かべている。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
長い葉柄ようへいそなえ、葉面ようめん楕円形だえんけい重鋸歯じゅうきょしがあり、葉質ようしつやわらかくてしわがある。四月ごろ花茎かけいが葉よりは高く立ち、茎頂けいちょう繖形さんけいをなして小梗しょうこうある数花が咲く。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
上から下方へ、また下から上方へ、絶えず楕円形だえんけいを描きつつ流転るてんしているわけだ。同様のことは小仏ながら、たちばな夫人念持の白鳳仏にもうかがわれると思う。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
春慶塗の、楕円形だえんけいをしている卓の向うに、翁はにこにこした顔をして、椅子いすり掛かっていたが、花房に「あの病人を御覧」と云って、顔で方角を示した。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
楕円形だえんけいの中の肖像も愚鈍ぐどんそうは帯びているにもせよ、ふだん思っていたほど俗悪ではない。裏も、——ひんい緑に茶を配した裏は表よりも一層見事である。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それに中学生くらいならば、地球はそれらの凹凸を平均しても、やはり完全に円くはないので、南北方向に縮んだ楕円形だえんけいになっていることを知っているであろう。
地球の円い話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
客間をも居間をも兼ねた八畳は楕円形だえんけいの感じを見る人に与えた。女の用心深さをもってもうストーヴが据えつけてあった。そしてそれが鉛墨えんぼくでみごとに光っていた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あのかよわそうなえだぶりや、繊細せんさい楕円形だえんけいやわらかな葉などからして私の無意識の裡に想像していた花と、それらが似てもつかない花だったからであったかも知れない。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
船体の白いペンキはいつも塗ったばかりのようにみえたし、楕円形だえんけいの船尾板にある(東・17号)という文字は、入念に描かれた青いペンキの唐草模様で囲まれていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
というがはやいか、ケンドンにほうり出した、巻煙草の火は、ツツツと楕円形だえんけいに長く中空なかぞらに流星の如き尾を引いたが、𤏋ぱっと火花が散って、あおくして黒き水の上へ乱れて落ちた。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はとこの上に起直おきなおって見ていると、またポッと出て、矢張やっぱりおくの方へフーと行く、すると間もなくして、また出て来て消えるのだが、そのぼんやりとした楕円形だえんけいのものを見つめると
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
牡丹刷毛ぼたんばけのかわりの、これはまた見るからに色気のない楕円形だえんけいのスポンジがつるしてある横に、——映画雑誌から切り抜いたらしい美男の外国俳優の写真が貼り付けてあり、たまには
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
生徒は楕円形だえんけいの円陣をつくっていた。一番奥の方に三枚だけ座ぶとんがしいてあったが、それが朝倉先生夫妻と俊亮の席だった。朝倉先生をまん中に、夫人と俊亮とがその左右に坐った。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そのガラス天井は、よごれてくもっていたが、そのガラス天井の上を、黒い楕円形だえんけいのものがゆっくりと動いているのであった。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
組み合わした剣のついてる小さな楕円形だえんけいの赤ラシャを胴につけ、その上、上衣の片袖かたそでには中に腕がなく、あごには銀髯ぎんぜんがはえ、一方の足は義足だった。
船体の白いペンキはいつも塗ったばかりのようにみえたし、楕円形だえんけいの船尾板にある(東・17号)という文字は、入念に描かれた青いペンキの唐草模様で囲まれていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「また雨らしいな……」と溜息ためいきをつきながら私が雨戸を繰ろうとした途端に、その節穴ふしあなから明るい外光がれて来ながら、障子しょうじの上にくっきりした小さな楕円形だえんけい額縁がくぶちをつくり
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それはあだかも昔の七つさがり、すなわ現今いまの四時頃だったが、不図ふと私は眼を覚ますと、店から奥の方へ行く土間のすみの所から、何だかポッとけむの様な、楕円形だえんけい赤児あかんぼの大きさくらいのものが
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
それから頭のまん中には楕円形だえんけいさらがあり、そのまた皿は年齢により、だんだんかたさを加えるようです。現に年をとったバッグの皿は若いチャックの皿などとは全然手ざわりも違うのです。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
見ると、いつの間にか、中天に楕円形だえんけいに見えるお月様が姿を現わしていた。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
間もなく次の電光は、明るくサッサッとひらめいて、にわ幻燈げんとうのように青くうかび、雨のつぶうつくしい楕円形だえんけいの粒になってちゅうとどまり、そしてガドルフのいとしい花は、まっ白にかっといかって立ちました。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
司令艇の側壁そくへきの一部が、するすると動きだしたと思うと、それは引戸のように艇の外廓がいかくのなかにかくれ、あとに細長い楕円形だえんけいの穴がぽっかりとあいた。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき出ているそらがそのまま楕円形だえんけいのなかにめぐってあらわれるようになってりやはりそのまん中には上から下へかけて銀河がぼうとけむったような帯になってその下の方ではかすかに爆発ばくはつして湯気でもあげているように見えるのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その大根を、胴中からすぱりと切り、その楕円形だえんけいの切り口の面だけを見ていると同じことだ。つまり“ほほう、これは真白な、じくじく水の湧いた楕円形の面だ”と思う。
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鉄蓋の上には楕円形だえんけいの覗き穴が明いていた。縦が二十センチ横が十五センチほどの穴である。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
というわけは、その茶褐色ちゃかっしょく楕円形だえんけいの島みたいなものの横腹に、とつぜん窓のようなものがあいたからである。その窓みたいなものが、密林のしげみをもれる太陽の光線をうけて、ぴかりと光った。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは、巨体の周囲に楕円形だえんけい輪廓りんかくが見えることであった。これが巨体といっしょに、しずしずともちあがっていく。まるでメリー号を楕円のがくぶちに入れたように見えたといったらわかるであろう。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)