昼夜ちゅうや)” の例文
旧字:晝夜
昼夜ちゅうやをわかたず看病かんびょうした、このゆきとどいた慈母じぼの愛は、かれんな病人にとっては、医薬よりもなによりもまさるものであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もちろんこちらの世界せかいには昼夜ちゅうや区別くべつも、歳月つきひのけじめもありませぬから、わたくしはただかみさまからうかがって、るほどそうかとおもだけのことにぎませぬ。
ただしろ荒寥こうりょうとした鉛色なまりいろひかこおり波濤はとう起伏きふくしていて昼夜ちゅうや区別くべつなく、春夏秋冬はるなつあきふゆなく、ひっきりなしに暴風ぼうふういている光景こうけいかぶのでした。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
別封第一 片側は濃き納戸地に茶色の模様ある友禅モスリン地片側は黒色の毛繻子地よりなる昼夜ちゅうや女帯の一部
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ステーションまでの二百ヴェルスタのみちを二昼夜ちゅうやぎたが、そのあいだうま継場々々つぎばつぎばで、ミハイル、アウエリヤヌイチは、やれ、ちゃこっぷあらいようがどうだとか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
幸にして医師の診断によればわが病はかかる恐しきものにてはなかりしかど、昼夜ちゅうやたゆひまなく蒟蒻こんにゃくにて腹をあたためよ。肉汁ソップとおも湯のほかは何物もくらふべからず。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
黒襟かけた三すじ縦縞たてじまの濃いお納戸なんどの糸織に包んで、帯は白茶の博多と黒繻子くろじゅす昼夜ちゅうや、伊達に結んだ銀杏返いちょうがえしの根も切れて雨に叩かれた黒髪が顔の半面を覆い、その二
時は昼夜ちゅうやてず流れる。過去のない時代はない。——諸君誤解してはなりません。吾人は無論過去を有している。しかしその過去は老耄ろうもうした過去か、幼稚な過去である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その後暴人ぼうじん江戸市街しがい横行おうこうし、良家りょうか闖入ちんにゅうして金銭をかすむるのうわさありし時も、先生すこぶる予が家を憂慮ゆうりょせられ、特に塾員じゅくいんめいじ、きたって予が家に宿泊しゅくはくせしめ、昼夜ちゅうや警護けいごせられたることあり。
項中には去る日曜日に六十九歳をもってかるとあるから、指を折って勘定かんじょうして見ると、ちょうど院長の容体ようだいがしだいに悪い方へ傾いて、はたのものが昼夜ちゅうやまゆひそめている頃である。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
戸口とぐちからだい一のものは、せてたかい、栗色くりいろひかひげの、始終しじゅう泣腫なきはらしている発狂はっきょう中風患者ちゅうぶかんじゃあたまささえてじっとすわって、一つところみつめながら、昼夜ちゅうやかずかなしんで、あたま太息といきもら
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたくしとして真先まっさきに工夫くふうしたことは一にち区画くぎりけることでございました、本来ほんらいからいえばこちらの世界せかい昼夜ちゅうや区別くべつはないのでございますが、それでは現界げんかい人達ひとたちせっするのにひどく勝手かってわる
来往無昼夜 来往らいおうすること昼夜ちゅうやなみするや
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
われらはただ二つのっている。そうしてその二つの眼は二つながら、昼夜ちゅうやともに前を望んでいる。そうして足の眼に及ばざるを恨みとして、焦慮あせり焦慮あせって、汗を流したり呼息いきを切らしたりする。