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性急
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せっかち
ふりがな文庫
“
性急
(
せっかち
)” の例文
その養子というのは、日にやけた色の赤黒い、
巌乗
(
がんじょう
)
づくりの
小造
(
こづくり
)
な男だっけ。何だか目の光る、ちときょときょとする、
性急
(
せっかち
)
な人さ。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
世の中にこれ位
性急
(
せっかち
)
な(同時に、
石鹸玉
(
しゃぼんだま
)
のように張りつめた、そして、いきり立った老人の姿勢のように隙だらけな)心持はない。
性急な思想
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
何者か、
性急
(
せっかち
)
に彼の実行をせき立てるのが感じられました。機会が到来したという考えが、彼の雑念を立所に
一掃
(
いっそう
)
して了いました。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は自分の
性急
(
せっかち
)
に比べると約五倍がたの
癇癪持
(
かんしゃくもち
)
であった。けれども一種
天賦
(
てんぷ
)
の能力があって、時にその癇癪を
巧
(
たくみ
)
に殺す事ができた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まあ!
貴君
(
あなた
)
も、
性急
(
せっかち
)
ですのねえ。
妾達
(
わたくしたち
)
には約婚時代というものが、なかったのですもの。もっと、こうして楽しみたいと思いますもの。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
性急
(
せっかち
)
で汗っかきの圓太郎は丸顔いっぱいの汗をしきりにこぼれ松葉の手拭で拭きながら、薄暗い山城屋の店先へ腰を下ろした
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
と仙夢さんは
動
(
やや
)
もすると立ち上りそうになる。余程
性急
(
せっかち
)
だ。休憩させた以上は疲労を認めている筈だのに、催促の積りか知ら?
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
酒が来ると、さあさあと
性急
(
せっかち
)
に私につぎ、つぎ終るや間髪を入れず、すでに左手に用意していた盃にカチリと銚子を当てる。チュウとすすって
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
四十男の理三郎は、用心深い代りに、いざとなると
性急
(
せっかち
)
でした。八五郎を案内に、神田の平次の家へ来たのは、事件があってから三日目の昼過ぎ。
銭形平次捕物控:093 百物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
藤吉郎は、逃げるように座敷へ駈けこむ。暁までも聟を
擒人
(
とりこ
)
にして帰すなと、
悪戯
(
いたずら
)
好みの友たちは円坐を作って、酒々と
性急
(
せっかち
)
に呼び立てたりする。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分のやうに
性急
(
せっかち
)
にしてはいけないのだと知りながら、何とかして食べるところを見届けたさに、無理に窓際から引き離して、部屋のまん中へ抱いて来て
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ままさんが
性急
(
せっかち
)
ですからね、急にお詣りをおさせしてお宅のほうへもお寄りさせようと、こんなことを
独
(
ひと
)
りぎめにきめてお宅へ言ってあげたのがよくないと思います。
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「初めはあんなに躊躇していらしたくせに、今になって、どうしてそう
性急
(
せっかち
)
なことを仰言るの?」
子を奪う
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
性急
(
せっかち
)
に進んだかと思うと、突然手を休めたり、また思いだしたように遣りはじめたりするのであった。うつ向いて、口を堅く結んで、額にはむずかしそうな八の字をよせていた。
麦畑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
相も変らぬ「のろま」でしたから
性急
(
せっかち
)
な主任のS教諭は、私の遣り方を見て、他の助手や看護婦の前をも憚からず
Stumpf
(
スツンプ
)
,
Dumm
(
ドウンム
)
,
Faul
(
ファウル
)
などと私を罵りました。
痴人の復讐
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「おい! 前川さん、あんたは何て
性急
(
せっかち
)
なんだ。私はまだ話を終っていないよ……」
罠を跳び越える女
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
性急
(
せっかち
)
な私は彼女の話の最中に、便所に行く振りをして、ソッと茶の間に来た。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
性急
(
せっかち
)
の父が先ず
狼狽
(
あわ
)
て出して、座敷中を
彷徨
(
うろうろ
)
しながら、ソレ、風呂敷包を忘れるな、行李は
好
(
い
)
いか、小さい方だぞ、コココ
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
は
己
(
おれ
)
が持ってッてやる、と
固
(
もと
)
より見送って呉れる筈なので
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼の父は秋成又左衛門といって、身分は寄合、
運上所
(
うんじょうしょ
)
元締をしていた。又四郎は父が四十歳のとき生れた一人息子である。又左衛門は
稀
(
まれ
)
にみる
性急
(
せっかち
)
な人で、「せかちぼ」という綽名があった。
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は歯を喰いしばって、ステッキを
性急
(
せっかち
)
にふりながら、近づいて行った。
青玉の十字架
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
私のそういう
性急
(
せっかち
)
な印象が必ずしも
贋
(
にせ
)
ではなかったことを、まるでそれ自身裏書きでもするかのように、私のまわりには、この庭を一面に
掩
(
おお
)
うて草木が生い茂るがままに生い茂っているのであった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
抱え主も
性急
(
せっかち
)
には催促もしず、気永に帰るのを待つことにしていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あるとき、豊国は蔵前の
札差
(
ふださし
)
として聞えた
某
(
なにがし
)
の老人から、その姿絵を頼まれました。どこの老人もがそうであるように、この札差も
性急
(
せっかち
)
でしたから、絵の出来るのを待ちかねて、幾度か催促しました。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
珪次にいわせると「そう
性急
(
せっかち
)
に利益を挙げようたって無理だ」
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「貴方は妙なところに
性急
(
せっかち
)
ね、ふだんは、のんきな癖に。」
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
と
性急
(
せっかち
)
に詰め寄るのを、警保局長はマアマアと手でおさえ
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
奥さんは
性急
(
せっかち
)
な、しかし良家に育った人らしい調子で
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「ほ、ほ、これはまた、
性急
(
せっかち
)
な方!」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そうして、最も
性急
(
せっかち
)
ならざる心を以て、出来るだけ早く自己の生活その物を改善し、統一し徹底すべきところの努力に従うべきである。
性急な思想
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
(
読本
(
よみほん
)
は絵のとこが出て子に取られ)少年はきれいな
婦
(
おんな
)
の容易ならない身の上が案じられますから、あとを
性急
(
せっかち
)
に開ける、とどうです。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「おおかたもうじきでしょう。叔父さんはあんな
性急
(
せっかち
)
だから。それに継子さんはあたしと違って、ああいう
器量好
(
きりょうよ
)
しだしね」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と野崎君は
憤
(
おこ
)
っていた。
尤
(
もっと
)
もこの男は学生時代から荒かった。
性急
(
せっかち
)
で
吃
(
ども
)
る癖があって、詰まると手の方が先に出る。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
自分のやうに
性急
(
せっかち
)
にしてはいけないのだと知りながら、何とかして食べるところを見届けたさに、無理に窓際から引き離して、部屋のまん中へ抱いて来て
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ほんとに
性急
(
せっかち
)
な赤ちゃんね。今教えてあげますからおとなしくしているんですよ。」
掠奪せられたる男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
性急
(
せっかち
)
そうに歌っている父橘家圓太郎の高座姿がアリアリと目に見えてきた、いや、
下座
(
げざ
)
のおたつ婆さんの凜と張りのある三味線の
音締
(
ねじめ
)
までをそのときハッキリと次郎吉は耳に聴いた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
カッフェの戸口から女が
性急
(
せっかち
)
に声をかけると、
女将
(
おかみ
)
が鍵と燭台をもって来て
碧眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
私は彼の説明を待ち切れなくて、
性急
(
せっかち
)
に次の質問に移って行った。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
性急
(
せっかち
)
の鶴さんは、蒲団の上にじっとしてはおらず、縁側へ出てみたり、隠居の方へいったりしていたが、おゆうも落着きなくそわそわして、時々鶴さんの傍へいって、
燥
(
はしゃ
)
いだ笑声をたてていたりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
今が今——というように、小六から
性急
(
せっかち
)
にいいつけられて、鍛冶小屋へ飛んで戻るなり、鉄砲の関金を
鍛
(
う
)
ち直していた国吉は、邸のうちに何が起ったのも、時が経ったのも、物音も一切知らなかった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やゝ
性急
(
せっかち
)
だと思われる位口早に訊いた。
神の如く弱し
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
件
(
くだん
)
の婦人は落着払い、その
冷
(
ひやや
)
かなる
眼色
(
めつき
)
にて、ずらりと
四辺
(
あたり
)
を見廻しつ、「さっさとしないか。おい、お天道様は
性急
(
せっかち
)
だっさ。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
意地の悪い言い方をすれば、今日新聞や雑誌の上でよく見受ける「近代的」という言葉の意味は、「
性急
(
せっかち
)
なる」という事に過ぎないとも言える。
性急な思想
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
兄の神経の鋭敏なごとく自分は熱しやすい
性急
(
せっかち
)
であった。平生の自分ならあるいはこんな返事は出なかったかも知れない。兄はその時簡単な一句を射た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分のように
性急
(
せっかち
)
にしてはいけないのだと知りながら、何とかして食べるところを見届けたさに、無理に窓際から引き離して、部屋のまん中へ抱いて来て
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「えゝ。あの通り
性急
(
せっかち
)
ですから、
快
(
い
)
いとなるともう
凝
(
じ
)
っとしていられないのです。その節は
種々
(
いろいろ
)
とお世話を戴きまして、宜しくお礼を申上げてくれと言いつかって参りました」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
庸三は
性急
(
せっかち
)
に言い出した。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
性急
(
せっかち
)
なことをよく覚えている訳は、
桃
(
もも
)
を上げるから一所においで。
※
(
ねえ
)
さんが、そう云った、
坊
(
ぼう
)
を連れて行けというからと、私を誘ってくれたんだ。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の
性急
(
せっかち
)
にも子供のうちから
善
(
よ
)
く
馴
(
な
)
らされていた。落ちつかない自分は、電話でもかけて、どうしたのかこっちから父の都合を聞いて見ようかと思った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「それは/\。お
草臥
(
くたび
)
れでしょう。常子は
性急
(
せっかち
)
だからね。大抵のお客さまは
辟易
(
へきえき
)
するよ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「マアオ待チナサイ、アナタハイツモ
性急
(
せっかち
)
ナンダカラ」
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
“性急”の意味
《名詞・形容動詞》
せっかちなこと。気が短いこと。また、そのさま。
物事の進みが急でゆとりのないこと。また、そのさま。
(出典:Wiktionary)
性
常用漢字
小5
部首:⼼
8画
急
常用漢字
小3
部首:⼼
9画
“性”で始まる語句
性
性質
性根
性分
性懲
性来
性悪
性癖
性情
性來