まもり)” の例文
『越後軍紀』に「信玄西条山へ寄せて来て攻むるときは、彼が陣形常々のまもりを失ふべし、その時無二の一戦を遂げて勝負すべし」
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
我若しかの非情の目、そのまもりきびしきために高き價を拂へる目が、シリンガの事を聞きつゝ眠れるさまを寫すをうべくば 六四—
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
刷毛はけ先を散らして左へ曲げた、色の淺黒い兄哥あにい唐棧たうざんの胸をはだけて、掛けまもり袋の紐と、腹帶に呑んだ匕首あひくちの脹らみを見せようと言つた種類の人間です。
安産のおまもりを受けたり、御神籤おみくじを引いている人もあります。御賓頭盧おびんずるの前で、老人がその肩やひざでては自分のその処をさすることを繰返しています。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「こうやって、おまもりにしておくの。そうしちゃあっためておいて、いらっしゃる時敷かせますからね、きっとよ。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ御札のほかに萩原さまのふところに入れていらっしゃるおまもりは、海音如来かいおんにょらい様という有難い御守おまもりですから、それが有っては矢張やッぱりお側へまいる事が出来ませんから
何と心得ているか。子供とはいえシテはシテである。シテは舞台の神様で能のまもり本尊である。そのシテを
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
建文帝けんぶんてい如何いかにせしぞや。伝えていわく、金川門きんせんもんまもりを失うや、帝自殺せんとす。翰林院編修かんりんいんへんしゅう程済ていせいもうす、出亡しゅつぼうしたまわんにはかじと。少監しょうかん王鉞おうえつひざまずいて進みてもうす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これに対しては子育てのまもりとして、巨大なる山杓子を授けた社もあったという。越前湯尾ゆのお峠の孫杓子を始めとし、今でも杓子には小児安全の祈祷きとうを含むものが多い。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すなわち眼を閉じ頭顱かしらを抱えて其処そこへ横に倒れたまま、五官を馬鹿にし七情のまもりを解いて、是非も曲直も栄辱も窮達も叔母もお勢も我のわれたるをも何もかも忘れてしまって
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
まもりが割れたおかげで無事だった。衝突したなア先へ行くバスと円タクだが、思出してもぞっとするね。実は今日はといちへ行ったんだがね、妙な物を買った。昔の物はいいね。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と云って、死霊除しりょうよけのおまもりをかしてくれた。それは金無垢きんむくで四寸二分ある海音如来かいおんにょらいのお守であった。そしてそれとともに一心になって読経どきょうせよと云って、雨宝陀羅尼経うほうだらにきょうという経文きょうもんとおふだをくれた。
円朝の牡丹灯籠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
伴「なにらたちにはなんだか訳が分らねえが、幽霊は此奴こいつがあると這入へいられねえという程な魔除まよけのおまもりだ」
これはさる筋の芸妓げいしゃから年玉に買って頂いたので、すべて、おまもり扱いにしているから、途中で雨をくらったために、汚すまいと懐中した。本人は生白い跣足はだしである。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金川門きんせんもんまもりを失いて、帝みずから大内たいだいきたもうに当り、孝孺伍雲ごうんためとらえられて獄に下さる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
定「お禁厭まじないでございますか知らん、随分おまもりを襟へ縫込んで置く事がありますから、疫病除やくびょうよけに」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
諸人に好かれる法、嫌われぬ法も一所ですな、愛嬌のおまもりという条目。無銭で米の買える法、火なくして暖まる法、飲まずに酔う法、歩行あるかずに道中する法、天に昇る法、色を
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鄒公すうこうきん十八人、殿前におい李景隆りけいりゅうってほとんど死せしむるに至りしも、また益無きのみ。帝、金川門きんせんもんまもりを失いしを知りて、天を仰いで長吁ちょうくし、東西に走りまどいて、自殺せんとしたもう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どうしても遁れられないが、死霊よけのために海音如来かいおんにょらいという大切の守りを貸してやる、其の内に折角施餓鬼せがきをしてやろうが、其のおまもり金無垢きんむくじゃにって人に見せると盗まれるよ
懐にしたまま拡げた胸にななめにかかってるまもりひもの下あたりを
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三藏どんのとこで法事があるで、此間こねえだ此処こゝに女が殺されて川へほうり込まれて有って、引揚げて見たら、まもりの中に名前書なめえがき這入へえって居たので、段々調べたら三藏どんがうちめいに当る女子おんなこ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
血をべっとりと塗附けて之を懐中し、又々庭へ出て、お菊の懐中を探して見たが、別に掛守かけまもりもない、帯止おびどめほどいて見ますと中にまもりが入っておりますから、其の中へ右の起請をれ、元のように致して置き
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)