うれし)” の例文
このから、少年せいねんのちいさいむねにはおほきなくろかたまりがおかれました。ねたましさににてうれしく、かなしさににてなつかしい物思ものおもひをおぼえそめたのです。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
今日ふみの来て細々こまごまと優き事など書聯かきつらねたらば、如何いかに我はうれしからん。なかなか同じ処に居て飽かず顔を見るにへて、そのたのしみは深かるべきを。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これがお源には言うに言われない得意なので、お徳がこの風を見せた時、お清が磯に丁寧な言葉を使った時などうれしさが込上げて来るのであった。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
きゝ彌々いよ/\氣の毒に思ひ此事に於ては我等證人と也申すべきにより急ぎ御奉行所へ願ひ出で申さるしと云にぞ七右衞門はいとうれし直樣すぐさま彼の駕籠舁かごかき久七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
どっちみちうれしくない事は知れていますがね、前のは、ず先ずと我慢が出来る、あとのは、堪忍かんにんがなりますまい。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
心持俯向うつむいていらっしゃるお顔のひんの好さ! しかし奥様がどことなくしおれていらしって恍惚うっとりなすった御様子は、トントうれしかった昔を忍ぶとでもいいそうで
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
十日もためし草を一日にやいたような心地して、尼にでもなるより外なき身の行末をなげきしに、馬籠まごめに御病気と聞く途端、アッと驚くかたわらおろかな心からは看病するをうれし
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ところやつ突然とつぜんぼくうちにやつてやがつて、『どうも五個月間かげつかん葉書攻はがきぜめには閉口へいこうしました。あなたの根氣こんきには實際じつさいおどろきました』なんてやがつて、三十ゑんかねいてつたが、ぼくじつうれししかつたよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
何ですか、今の妻君は、あれはどうだから、かう為るとか、ああ為るとか、好いやうなうれしがらせを言つちやをりましたけれど
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
云聞せ明朝みやうてうは其家に至り尋ぬべしと云れたり翌朝よくてう夫婦共に彼是と世話せわくだん茗荷屋みやうがや源兵衞の町所をくはし書認かきしたゝめて渡されしにぞ寶澤はわざうれしげに書付を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それよりは家賃をやすくして私等わっちらが自力で一杯も飲めるようにしてくれた方がほんのこと難有ありがてえや。へこへこ御辞儀をして物を貰うなあちっともうれしくねえてね。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
優鈿うでん大王だいおうとか饂飩うどん大王だいおうとやらに頼まれての仕事しわざ、仏師もやり損じては大変と額に汗流れ、眼中に木片ききれ飛込とびこむも構わず、恐れかしこみてこそ作りたれ、恭敬三昧きょうけいざんまいうれしき者ならぬは
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「おおおお、あれあれ! これはうれしい、自然とお前さんの首が段々細くなつて来る。ああ、それそれ、今にもう落ちる」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
うれしさ、おん可懐なつかしさを存ずるにつけて……夜汽車の和尚の、へやをぐるりと廻った姿も、同じ日の事なれば、令嬢おあねえさまの、袖口から、いや、その……あの、絵図面の中から
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見廻しけるに首はおちず何事も無健全まめ息災そくさいなり依て我が家へ立歸りしぞと物語ものがたりしかば娘はうれしく是全く金毘羅樣こんぴらさまの御利益りやくならんと早々うが手水てうずにて身をきよめて金毘羅の掛物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
行儀学問も追々覚えさして天晴あっぱれ婿むこ取り、初孫ういまごの顔でも見たら夢のうちにそなたの母にっても云訳いいわけがあると今からもううれしくてならぬ、それにしても髪とりあげさせ、衣裳いしょう着かゆさすれば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
撫子 その返り咲がうれしいから、どうせお流儀があるんじゃなし、綺麗でさえあればい、去嫌さりぎらい構わずに、根〆《ねじめ》にしましょうと思ったけれど、白菊が糸咲で、私、常夏と覚えた花が
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ悪戯いたずらにさえうれしい処を、うしろに瓜畑があります。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おかみさんに、お、お前それがうれしいの。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)