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なす
ふりがな文庫
“
塗
(
なす
)” の例文
「それに、君の絵はユニークなものらしい。筆を使わずに、指で絵具を
塗
(
なす
)
る指頭画というのがあるそうだが、君のはその流儀なんだね?」
肌色の月
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
実際、二、三本の棒がいかに彼の上で、または下で、はすかいに置かれるかが、そして彼の住む箱にどんな色が
塗
(
なす
)
られるかが大問題なのだ。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
飛田
(
とびた
)
遊廓の漏洩問題については主務省と府の当事者と
互
(
たがひ
)
に責任の
塗
(
なす
)
りつこをして、自分ばかりが良い
児
(
こ
)
にならうとしてゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
折角
(
せつかく
)
釣れ盛つて来たら三人の小船頭が綸を
縺
(
もつ
)
らかした責任の
塗
(
なす
)
り合ひを始め、『お前がねや』『わしがねや』と語尾にねやねやとつけ乍ら喧嘩を始めた。
坊つちやん「遺蹟めぐり」
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
それは、いつの間にか頭を刈ってしまった理髪師が、私の
襟筋
(
えりすじ
)
を
剃
(
そ
)
るべくシャボンの泡を
塗
(
なす
)
り付けたのであった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
およそ
嬰児
(
あかんぼ
)
の今開けました掌ぐらい、その
痩
(
や
)
せましたこと、からびた
木
(
こ
)
の葉で、
塗
(
なす
)
りつけました形、まるで鳥で。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君達は時局の認識が不足だよ。それだから酔狂な余技に貴重な時間を潰しているんだ。一体、
謡曲
(
うたい
)
を唸ったり、童画を
塗
(
なす
)
ったりしていられる時だろうか?」
妻の秘密筥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼は倒れて居るボーシュレーの
傍
(
そば
)
へ走って、その傷口から出る血を、自分の手や顔に
塗
(
なす
)
り付け、ジルベールに手がかかるや否やいきなり物をも云わず投げ倒した。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
一切の疑いを殿下に
塗
(
なす
)
りつけんがため、わざわざ人目に付くようそうした手数まで演じたものであろう。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
丁度油をコテコテ
塗
(
なす
)
って
鬘
(
かつら
)
のように美くしく
結上
(
ゆいあ
)
げた
束髪
(
そくはつ
)
が如何にも日本臭いと同様の臭味があった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
理由
(
わけ
)
を考え出そうとしても、考え出せない私は、罪を女という一字に
塗
(
なす
)
り付けて我慢した事もありました。
必竟
(
ひっきょう
)
女だからああなのだ、女というものはどうせ
愚
(
ぐ
)
なものだ。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そんなに
塗
(
なす
)
くってどうするつもりだ。まるで粉桶から飛び出したようだ。」
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
盜
(
ぬす
)
み
逐電
(
ちくでん
)
し夫のみならず大門番の重五郎を殺し
罪
(
つみ
)
を
夫
(
をつと
)
へ
塗
(
なす
)
られし
殘念
(
ざんねん
)
さに何卒此方樣に
出會
(
であひ
)
夫
(
をつと
)
が
罪
(
つみ
)
を
免
(
ゆる
)
されんと此
秋葉
(
あきは
)
樣へ
誓願
(
せいぐわん
)
込
(
こめ
)
たる一心
屆
(
とゞ
)
きて今
此處
(
ここ
)
にて出會しも
嗚呼
(
あゝ
)
忝
(
かたじ
)
けなしと
宮居
(
みやゐ
)
の方を
伏拜
(
ふしをが
)
むを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
目
(
め
)
を
半眼
(
はんがん
)
にした、
眉
(
まゆ
)
には
黒
(
くろ
)
も
交
(
まじ
)
つたけれど、
泡
(
あわ
)
を
塗
(
なす
)
つた
體
(
てい
)
に、
口許
(
くちもと
)
から
頤
(
おとがひ
)
へ、
短
(
みじか
)
い
髯
(
ひげ
)
は
皆
(
みな
)
白
(
しろ
)
い。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
王羲之がどんな文句を
塗
(
なす
)
つたか、私はその団扇を買はなかつたから、そこ迄は知らない。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
生涯を学問に貢献しやうといふ先生が嬢様のお気に入らうと
頭髪
(
あたま
)
を
仏蘭西
(
フランス
)
風とかに刈つて香水を
塗
(
なす
)
りつけコスメチツクで髯を堅め金縁目鏡に金指環で
妙
(
おつ
)
ウ容子振つた
態
(
さま
)
は堪らない子。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
足を
引摺
(
ひきず
)
るようにして
密
(
そっ
)
と紋床へ這戻り、お
懶惰
(
なまけ
)
さんの親方が、内を明けて居ないのを
勿怪
(
もっけ
)
の
幸
(
さいわい
)
、お婆さんは
就寝
(
およっ
)
てなり、
姐
(
あね
)
さんは優しいから、いたわってくれた
焼酎
(
しょうちゅう
)
を
塗
(
なす
)
って
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、だらしなく画絹の前に坐ると変な
手附
(
てつき
)
で
馬鈴薯
(
じやがいも
)
のやうなものをさつと
塗
(
なす
)
くつた。そしてとろんこの眼で
凝
(
じつ
)
と見てゐたが「
此奴
(
こいつ
)
あ
可
(
い
)
かん。」と言つて、画絹をさつと放り出した。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
親仁
(
おやじ
)
が、
生計
(
くらし
)
の苦しさから、今夜こそは、どうでも
獲
(
え
)
ものをと、しとぎ
餅
(
もち
)
で山の神を祈って出ました。
玉味噌
(
たまみそ
)
を
塗
(
なす
)
って、
串
(
くし
)
にさして焼いて持ちます、その握飯には、魔が寄ると申します。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大きい文字を書く折には
態
(
わざ
)
と筆を用ゐないで、
帛
(
きぬ
)
をぐるぐる巻にして、その先に
墨汁
(
すみ
)
を含ませて、べたべた
塗
(
なす
)
くるのを
甚
(
ひど
)
く自慢にしてゐたといふ事だが、これなどもまあ一寸した
思
(
おも
)
ひ
付
(
つき
)
の
戯
(
いたづら
)
だ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
入れて
塗
(
なす
)
りつけるように声を
密
(
ひそ
)
めて……(な、端金子を、ああもこうもあるものかい。俺が払うな、と言うたかて払え。さっさと一束にして突付けろ。帰れ!
大白痴
(
おおたわけ
)
、その位な事が分らんか。)
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“塗”の意味
《名詞》
(ぬり)塗ること。また、塗った物。
(ぬり)漆塗り。
(出典:Wiktionary)
塗
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“塗”を含む語句
朱塗
塗籠
塗抹
血塗
蝋塗
泥塗
塗料
糊塗
上塗
丹塗
塗師
漆塗
蝋塗鞘
塗香
塗付
塗板
紅殻塗
黒塗
溜塗
白塗
...