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執念
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しゅうねん
ふりがな文庫
“
執念
(
しゅうねん
)” の例文
カーテンのあいだからは、あのピストルが
執念
(
しゅうねん
)
ぶかく、ねらいをさだめていて、いつまでたっても、立ちさろうとはしないからです。
大金塊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
窯焚
(
かまた
)
きの
百助
(
ももすけ
)
は、無論あのまま黙ってはいない。なお、
執念
(
しゅうねん
)
深く、
兆二郎
(
ちょうじろう
)
の疑点をいくつも探り、佐賀の城下へ出て密告した。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
根城
(
ねじろ
)
としていた六天山塞を焼きはらって、かれらは解散したのであろうか。いやいや、そうは思われぬ。あの
執念
(
しゅうねん
)
ぶかい四馬剣尺のことだ。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
売薬は先へ下りたが
立停
(
たちどま
)
ってしきりに
四辺
(
あたり
)
を
眗
(
みまわ
)
している様子、
執念
(
しゅうねん
)
深く何か
巧
(
たく
)
んだかと、快からず続いたが、さてよく見ると
仔細
(
しさい
)
があるわい。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「しかし、本田、このまま放っとくと危いぜ。ことに狐の奴と来たら
執念
(
しゅうねん
)
深いからな。頬ぺたを下級生にひっかかれて默っちゃおらんだろう。」
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
▼ もっと見る
武道の
執念
(
しゅうねん
)
、
栄辱
(
えいじょく
)
の
憤恨
(
ふんこん
)
、常日頃の沈着を失った平馬は、いまは、両眼に、大粒な口惜し涙を一杯に浮かべてさえいる。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
まことにばかげた話であるけれど、世に
怖
(
おそ
)
るべきは賢明な人の優良な計画だけではない、
執念
(
しゅうねん
)
の一つは
賢愚不肖
(
けんぐふしょう
)
となく、こじれると悪い
業
(
わざ
)
をします。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わしの
生命
(
いのち
)
の根は
執念
(
しゅうねん
)
深く断ちきれない。このあさましいわしの
業
(
ごう
)
をいつまでもさらさせようとするのか。食を断っても断っても死にきれぬ
蛇
(
へび
)
のように。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
馬鹿あ
吐
(
ぬ
)
かせ、三銭の
恨
(
うらみ
)
で
執念
(
しゅうねん
)
をひく
亡者
(
もうじゃ
)
の
女房
(
かかあ
)
じゃあ
汝
(
てめえ
)
だってちと役不足だろうじゃあ
無
(
ね
)
えか、ハハハハ。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
今日のりきみは身を
損
(
そん
)
じ
愚弄
(
ぐろう
)
を
招
(
まね
)
くの
媒
(
なかだち
)
たるを知り、早々にその座を切上げて
不体裁
(
ぶていさい
)
の跡を収め、下士もまた上士に対して
旧怨
(
きゅうえん
)
を思わず、
執念
(
しゅうねん
)
深きは婦人の心なり
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
近藤は
執念
(
しゅうねん
)
深く口を
噤
(
つぐ
)
んで、
卓子
(
テエブル
)
の上の紅茶茶碗へじっと眼を据えていたが、大井がこう云うと同時に、突然椅子から立ち上って、
呆気
(
あっけ
)
に取られている連中を
後
(
あと
)
に
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と堀口生は
執念
(
しゅうねん
)
深いから、ナカナカあきらめない。どうかして花岡家へ遊びにゆきたいのだ。もしこれがかなうなら、正三君初め優良連中と和解してもいいぐらいに思っている。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そもそも、大岡様や泰軒がこの事件に関係しだし、また、剣魔左膳が壺の内容を知って、いっそう
執念
(
しゅうねん
)
の火をもやすようになったについては、こういういきさつがあったのです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すくなくとも、彼はそう感じて、その
自暴自棄
(
じぼうじき
)
の
憤怒
(
ふんぬ
)
——かなり不合理な——が彼を駆って盲目的に、そして
猪進
(
ちょしん
)
的に
執念
(
しゅうねん
)
の刃を
揮
(
ふる
)
わせ、この酷薄な報復手段を
採
(
と
)
らしめたに相違あるまい。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
と卯平の
精悍
(
せいかん
)
な顔にちらと悲しげな影がすぎたが、すぐにもとの元気な顔になって、
執念
(
しゅうねん
)
深い
狐
(
きつね
)
だ、今日で十日になるのにまだ出て行かん、戸まどいして女房に
憑
(
つ
)
いたりなどして阿呆狐めが
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
毎晩の如く現われて尽きる模様もない刑事の
執念
(
しゅうねん
)
——というか、徹底した警戒ぶりに、貫一は日頃の自信が崩れ出したのを認めないわけに行かなかった。
奇賊悲願:烏啼天駆シリーズ・3
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
不貞の女をもなお且つ貞女にし、不孝の子をもなお孝子として、
彼方
(
あなた
)
の世界へ送るのが人情でもあり、
回向
(
えこう
)
でもあるべきに、これはあまりに
執念
(
しゅうねん
)
の残る戒名であります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
気味の悪い平田一郎の
執念
(
しゅうねん
)
から逃れることが出来たので、彼女はホッと胸なでおろす気持だった。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
すでに和するの敵に向うは男子の
恥
(
はず
)
るところ、
執念
(
しゅうねん
)
深きに過ぎて
進退
(
しんたい
)
窮
(
きゅう
)
するの
愚
(
ぐ
)
たるを
悟
(
さと
)
り、
興
(
きょう
)
に乗じて深入りの無益たるを知り、双方共にさらりと前世界の
古証文
(
ふるしょうもん
)
に
墨
(
すみ
)
を引き
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「貴公も
執念
(
しゅうねん
)
ぶかい男だな。なんにしても過ぎたこと。
宜
(
よ
)
いではないかもう……」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
異国の帝王には、この世の宝玉や
愛妃
(
あいひ
)
への
執念
(
しゅうねん
)
を
墳墓
(
ふんぼ
)
にまで
随
(
したが
)
えていったような人もあるが、じぶんは今、臨命にさいして、妻子への未練も、王位や珍宝にたいする妄念も、何ら持ってはいない。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうも鬼というものの
執念
(
しゅうねん
)
の深いのには困ったものだ。」
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私が企てた
復仇
(
ふっきゅう
)
を待つまでもなく今
天涯
(
てんがい
)
にのがれ出でた相良十吉であったが、風間真人の
執念
(
しゅうねん
)
は未だにくつることなく
彼
(
か
)
の人の上にかかっているようだ。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
米友は聖人とは言いにくいけれども、
未
(
いま
)
だ
曾
(
かつ
)
て夢らしい夢を見たことのない男です。彼は何かに激して
憤
(
おこ
)
ることは憤るけれども、それを夢にまで持ち越す
執念
(
しゅうねん
)
のない男でした。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それをまるで気にもしないで、緑ちゃんの
最期
(
さいご
)
も見とどけないで、逃げだしてしまうなんて、あの
執念
(
しゅうねん
)
ぶかさとくらべて考えてみると、おかしいほど大きな手落ちじゃないか。
少年探偵団
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「私はもう阿波へ帰るのは嫌なのでございますけれど、
執念
(
しゅうねん
)
ぶかい宅助が、あの通りつけ廻しているので、川長の家へもウッカリ帰れませぬし、もうどうしていいか、路頭に迷っているところなのでございます」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その鞄は、
執念
(
しゅうねん
)
深いというのか、海上を
漂
(
ただよ
)
ううちに海岸へ
漂着
(
ひょうちゃく
)
した。
元村
(
もとむら
)
の
桟橋
(
さんばし
)
のすぐそばであった。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ゴリラは、四本の手足をめったむしょうに動かして、はらいのけようとしますが、逃げてはあつまり、逃げてはあつまり、
執念
(
しゅうねん
)
ぶかくせめてくるので、どうすることもできません。
魔法人形
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
まるきり
執念
(
しゅうねん
)
のない者と、どこまでも執念の深い者は、どちらも始末に困ります。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
学士は
朦朧
(
もうろう
)
と落ちてゆく意識のうちに、
頻
(
しき
)
りに口を大きくひらいては
喘
(
あえ
)
いでいた。だが彼の
執念
(
しゅうねん
)
ぶかい両手は、なおも大尉の急所を掴んでそれを
緩
(
ゆる
)
めようとはしなかった。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ようございますか、お
内儀
(
かみ
)
さん……お前さんは
江州生
(
ごうしゅううま
)
れとかおっしゃったな。江州女のことは存じませんが、この紀州の女というものは、なかなかその、
執念
(
しゅうねん
)
の強いものでございますよ」
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その
執念
(
しゅうねん
)
ぶかいかこみを切りぬけることは、なかなかむずかしいのです。
妖怪博士
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
白い
航跡
(
こうせき
)
が消えて、元のウルトラマリン色の青い海にかえるところあたりに、
執念
(
しゅうねん
)
ぶかくついてきた白いかもめが五六羽、しきりに円を描いては、
漂流
(
ひょうりゅう
)
するごちそうめがけて
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
明智君、おれは
執念
(
しゅうねん
)
ぶかいぞ。戦いは、これからだ。おれはマユミと俊一を、かならず、とりこにしてみせる。一度は、きみのおせっかいで失敗したが、そんなことで、ひきさがるおれじゃない。
妖人ゴング
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
というわけで、今や醤買石は、
執念
(
しゅうねん
)
の火の玉と
化
(
か
)
し、喰うか喰われるかの公算五十パアセントの危険をおかしても
一矢
(
いっし
)
をむくわで置くべきかと、あわれいじらしきことと
相成
(
あいな
)
った。
戦時旅行鞄:――金博士シリーズ・6――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
もちろん、アトランティス大陸の生物の多くは、その地変のとき死んだが、その
中
(
うち
)
に
執念
(
しゅうねん
)
ぶかく生きのこったのが、今日の海底超人という一族だ。どうだ、これで問題はとけたではないか
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「おンや。この野郎。また生き返って来たぞ。
執念
(
しゅうねん
)
ぶかい野郎だ」
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
“執念”の意味
《名詞》
執 念(しゅうねん)
深く思い込み、片時も忘れない心。
(出典:Wiktionary)
執
常用漢字
中学
部首:⼟
11画
念
常用漢字
小4
部首:⼼
8画
“執念”で始まる語句
執念深