うづも)” の例文
昔わざ/\都の橐駝師うゑきやを連れて來て造らせたといふ遠州流ゑんしうりう前栽せんざいも殘らず草にうづもれて、大きな石の頭だけがニヨキツと見えてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その小さな石塔が持つて来た沢山の花になかばうづもれてゐるのがあるだけだつた。ダリアの黄。シネラリアの薄くれなゐ。えぞ菊の紫。
草みち (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
そと百番のうたひに見えし松山かゞみといふも此地也。そのうたひにある鏡が池の古跡こせきもこゝにあり、今は池にもあらぬやうにうづもれたれど、そのあととてのこれり。
その墓にうづもれた心が、れだけ熱情的で罪深く、また反逆的であつたにせよ、そが上に咲く花は無邪気の眼で我等に視入り、その眼は永遠の調和と無限の生命とを
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
草にうづもれた溝と、梅や桃を植ゑた農家の垣根の間の少し上りになつた凸凹路でこぼこみちを、まだ二十歩とは歩かぬうちに、行手には二三人の生徒らしい男の児の姿が見えた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
燻臭いぶりくさき悪気は四辺あたり充満みちみちて、踏荒されし道は水にしとり、もえがらうづもれ、焼杭やけくひ焼瓦やけがはらなど所狭く積重ねたる空地くうちを、火元とて板囲いたがこひ得為えせず、それとも分かぬ焼原の狼藉ろうぜきとして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
秋の野風にさらして、恨みさびたる其樣は、如何なる大道心者にても、こゝろうごかんばかりなるに、峰の嵐にうづもれて嘆きの聲の聞えぬにや、鈴の音は調子少しも亂れず、行ひすましたる瀧口が心
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
対岸の蘆、河の真中にある洲、水に近いやなぎなどは白い雪にうづもれて、何となく深い物の奥の知れない方から水勢みづせが押し寄せて来て居るやうに見える。高い岸の上の休茶屋には川船を待つ人達が居る。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
夏草は刈りはらはねば葺かずとも菖蒲あやめよもぎにうづもるる庵
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
たづきなさ——わが魂はうづもれぬ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
しかも人知れずうづもれたその池の中にも、生物は絶えずその生と滅とを続けてゐるのであつた。夜はかはづの鳴く声がやかましくそこからきこえた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
苔と落葉と土とにうづもれてしまつた古い石碑のおもてを恐る/\洗ひ清めながら、磨滅した文字もんじの一ツ一ツをさぐり出して行くやうな心持で、自分は先づ第一に
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
人家じんかにちかきながれさへかくのごとくなれば、この二すぢながれ水源みなかみも雪にうづもれ、水用すゐよううしのふのみならず水あがりのおそれあるゆゑ、ところの人ちからあはせて流のかゝり口の雪を穿うがつ事なり。
年久くかはるる老猫ろうみようおよ子狗こいぬほどなるが、棄てたる雪のかたまりのやうに長火鉢ながひばち猫板ねこいたの上にうづくまりて、前足の隻落かたしおとして爪頭つまさきの灰にうづもるるをも知らず、いびきをさへきて熟睡うまいしたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
形骸かたちしや冷土の中にうづもれても、魂は定かに六尺の上に聞こしめされん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
うづもれしわが追憶おもひでや。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
田舎にうづもれ果てゝ了ふのを慨く若い熱い心に促されて、お互にしめし合せて、いくらかの金を持つて、深夜から暁にかけて、積雪を踏んで故郷を出て来た。
田舎からの手紙 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
雪いまだきえず、山々はさら也田圃たはた渺々べう/\たる曠平くわうへい雪面せつめんなれば、枝川えだかはは雪にうづもれ水は雪の下を流れ、大河といへども冬の初よりきしの水まづこほりて氷の上に雪をつもらせ
かの妨げられし恋は、破鏡の再び合ふを得て楽み、吾がさかれし愛は落花のかへる無くしてをはらんのみ! いで、吾はかくて空くうづもるべきか、風にりて飛ぶべきか、水に落ちて流るべきか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)