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含羞
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はにか
ふりがな文庫
“
含羞
(
はにか
)” の例文
尾上
(
おのえ
)
てるは、
含羞
(
はにか
)
むような
笑顔
(
えがお
)
と、しなやかな四肢とを持った気性のつよい娘であった。浅草の或る町の三味線職の長女として生れた。
古典風
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
池には紅葉の木が枝を張り出して、根かたに篠笹がひとかたまり、明るい陽射しの中に福寿草が
含羞
(
はにか
)
むようなすがたで咲いていた。
茶粥の記
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
襟の
辺
(
あたり
)
を引掻くと、爪を
銜
(
くわ
)
える子供のように、
含羞
(
はにか
)
む体に、ニヤリとした、が、そのまま、何を噛むか、むしゃむしゃと
口舐
(
くちなめ
)
ずる。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
眼を伏せて
含羞
(
はにか
)
んでいるじゃありませんか……それで、ついバカなことをいっちゃったんですけど、気がついて、いやァな感じがしたの。
蝶の絵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
生れて間もないらしい
乳呑
(
ちの
)
み
児
(
ご
)
を抱えていたが、外にもう一人、六つぐらいになる男の児が彼女のうしろに
含羞
(
はにか
)
みながら食っ着いていた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
お増は自分の膝に
凭
(
もた
)
れかかって、
含羞
(
はにか
)
んだようにお今の顔ばかり眺めている、静子に言いかけたが、顔には何の表情もなかった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
教授は不似合な山高帽子を
丁寧
(
ていねい
)
に取って、
煤
(
すす
)
けきったような鈍重な眼を強度の近眼鏡の後ろから覗かせながら、
含羞
(
はにか
)
むように
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
まずマアガレットが、着ていたガウンを脱いで、
含羞
(
はにか
)
みながらまだ処女らしいところの残っている若々しい身体を浴槽へ沈めた。浴槽の花嫁だ。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
「え、え」二人は、大勢の人いきれに、何かしら
含羞
(
はにか
)
みと、
恐
(
こわ
)
さを
抱
(
いだ
)
きながら、そっと、隅の柱の
下
(
もと
)
へ、坐っていた。まばゆそうに正面を見る——
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
時雨女史は結婚の結納料でも訊くやうに、心もち
含羞
(
はにか
)
むで言つた。これまで
幾度
(
いくたび
)
か
無償
(
たゞ
)
の原稿を書かされた身には、それだけは訊いておきたかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と若子さんは些っとも
含羞
(
はにか
)
まない。朗らか一方の人だ。小宮君も明るい性格だから、申分のない家庭が出来る。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「済みませんでした」おくみは
含羞
(
はにか
)
みながら顔を伏せた、「あんまり心配が重なるものですから、ついのぼせてしまいましたの、どうか堪忍して下さいまし」
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
女は自分を励ますようにそう言いながら、それでも少し
含羞
(
はにか
)
む風情で、肌を押し脱ごうとしました。
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして
含羞
(
はにか
)
み乍ら笑ひ出した。すると又、駄夫は可笑しな奴である、咄嗟に劇しく感動して自分の右手を仔細に透して眺め廻してゐたが、間もなくハタト行詰り急に当惑しててれてしまつた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
けれど、彼が成長して立派なとても美しい青年になった時、彼女は
含羞
(
はにか
)
むようになり、間もなく夢中になって
恋
(
こ
)
い
焦
(
こ
)
がれるようになった。この恋心は彼女がヤアギチと結婚するその日まで続いた。
大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
蜂谷はその
初々
(
ういうい
)
しく
含羞
(
はにか
)
んだような若者をおげんの前まで連れて来た。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
まるで屈託とか
含羞
(
はにか
)
みとかは、何処にもないような明朗娘だった。
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
しなやかな不動の姿勢を取って、すこし
含羞
(
はにか
)
みながら立っていた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ほんのすこしの
含羞
(
はにか
)
みを輝いた眼のなかに浮べて、正二は
今朝の雪
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は泥だらけの靴の先を瞶めてイヤに
含羞
(
はにか
)
んでゐた。
スプリングコート
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
さて初恋の
如
(
ごと
)
く
含羞
(
はにか
)
める
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
と
言
(
ことば
)
も
極
(
きま
)
って
含羞
(
はにか
)
んだ、
紅
(
あか
)
い
手絡
(
てがら
)
のしおらしさ。一人の婦人が斜めに振向き、手に持ったのをそのままに、
撫子
(
なでしこ
)
に
映
(
さ
)
す扇の影。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、五十嵐が半畳を入れながら途端に
含羞
(
はにか
)
んで
俯向
(
うつむ
)
いてしまった雪子の横顔へ、食卓の
此方
(
こちら
)
の
隅
(
すみ
)
から敏速な視線を投げた。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
どこへ坐ればいいのかと、
含羞
(
はにか
)
み笑いをしながら座を見まわしているので、いい加減腹をたてていた須田が
蝶の絵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
静子は
含羞
(
はにか
)
んだような顔をして、お増が鞄から出す、
土産
(
みやげ
)
ものの寄木細工の小さい鏡台などを
弄
(
いじ
)
っていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
女は自分を
勵
(
はげ
)
ますやうにさう言ひ
乍
(
なが
)
ら、それでも少し
含羞
(
はにか
)
む風情で、肌を押し脱がうとしました。
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
……十郎左、それやあいいことだ! やれよ、やれよ、なにを
含羞
(
はにか
)
む!
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お家へお帰りになると、矢張り
含羞
(
はにか
)
んでいらっしゃいますのね」
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
姉の千賀は
含羞
(
はにか
)
みながらこう云った。
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
でも、ちょっと
含羞
(
はにか
)
んだか、日に焼けた顔を
真赤
(
まっか
)
に
俯向
(
うつむ
)
く。同じ色した渋団扇、ばさばさばさ、と遣った処は
巧緻
(
うま
)
いものなり。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
幸子達の方からは、軍服の背中と、横顔の一部しか見えなかったが、まだ二十台の青年であることは明かで、少し
含羞
(
はにか
)
むような様子で唄っていた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お増も浅井も
空洞
(
うつろ
)
な笑い声を立てた。お今はきついような、不安らしい
含羞
(
はにか
)
んだ顔をして、黙っていた。室との結婚の正体が、はっきり
頭脳
(
あたま
)
に考えられないようであった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
十郎左は、
含羞
(
はにか
)
むような
口吻
(
くちぶり
)
で、うつ向いてしまった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは前に云ったような
僻
(
ひが
)
みだの
含羞
(
はにか
)
みだのゝせいもあろうが、その外にも、滋幹には別に何か、現実の母に会うことを恐れる気持があったのではなかろうか。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
神に祈ったりしていたその長女は、それから一年もたたないうちに死んでしまった。心配そうな
含羞
(
はにか
)
んだようなその娘の幼い面影が、今でもそのまま魂のどこかに
烙
(
や
)
きついていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
貴方
(
あなた
)
はな、とそれ、
赫
(
かつ
)
と
成
(
な
)
る。あの
瞼
(
まぶた
)
の
紅
(
くれなゐ
)
と
云
(
い
)
ふものが、
恰
(
あたかも
)
是
(
これ
)
、
醉
(
よ
)
へる
芙蓉
(
ふよう
)
の
如
(
ごと
)
しさ。
自慢
(
じまん
)
ぢやないが、
外國
(
ぐわいこく
)
にも
類
(
たぐ
)
ひあるまい。
新婚當時
(
しんこんたうじ
)
の
含羞
(
はにか
)
んだ
色合
(
いろあひ
)
を
新
(
あたら
)
しく
拜見
(
はいけん
)
などもお
安
(
やす
)
くない
奴
(
やつ
)
。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
含羞
(
はにか
)
みながら
俯向
(
うつむ
)
いた途端に、見る見る顔を
真
(
ま
)
っ
赧
(
か
)
にして燃えるように上気して行くのに心づいた。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
子供は
含羞
(
はにか
)
んだような、嬉しそうな顔を
赧
(
あか
)
らめて、父親の顔を見あげた。その後から、お銀も母親も出て来た。丈の高いお銀の父親の姿も現われた。弟も茶の
室
(
ま
)
にまごまごしていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
で、知りませんと、鼻をつまらせ加減に、
含羞
(
はにか
)
んで、つい、と
退
(
の
)
くが、そのままでは夜這星の方へ来にくくなって、どこへか隠れる。ついお銚子が遅くなって、巻煙草の吸殻ばかりが
堆
(
うずたか
)
い。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
生れつきの
含羞
(
はにか
)
みやはそう急に直るものではないので、井谷の忠告があったにも
拘
(
かかわ
)
らず、その日も特に勤めているらしい風は見えず、受け答えのはきはきしないことは相変らずであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
含羞
(
はにか
)
んだふうで
硬
(
かた
)
くなっている青年園田を見たとき、その俊秀な風貌と、すくすくした新樹のような若さに打たれながら、庸三の六感に何か
仄
(
ほの
)
かな予感の影の差して来るのを感じはしたが
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お鉄は元気好く
含羞
(
はにか
)
むお雪を
柔
(
やわら
)
かに素直に寝かして、袖を叩き、裾を
圧
(
おさ
)
え
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「へ、何、下らないことを、」と内々恐悦で、少し
含羞
(
はにか
)
む。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
含羞
(
はにか
)
む児だから、小さな声して。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“含羞”の意味
《名詞》
羞じらい。はにかみ。
(出典:Wiktionary)
含
常用漢字
中学
部首:⼝
7画
羞
常用漢字
中学
部首:⽺
11画
“含羞”で始まる語句
含羞草
含羞性
含羞旋風