“右舷(うげん)” の例文
其(その)鋭利(えいり)なる三尖衝角(さんせんしやうかく)は空(そら)に閃(きらめ)く電光(いなづま)の如(ごと)く賊船(ぞくせん)の右舷(うげん)に霹靂萬雷(へきれきばんらい)の響(ひゞき)あり、極惡無道(ごくあくむだう)の海蛇丸(かいだまる)は遂(つひ)に水煙(すいゑん)を揚(あ)げて海底(かいてい)に沒(ぼつ)し去(さ)つた。
すると右舷(うげん)の大砲が一門なぜか蓋(ふた)を開かなかった。しかももう水平線には敵の艦隊の挙げる煙も幾すじかかすかにたなびいていた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
右舷(うげん)に行き、左舷に行き、艦尾に行き、艦橋に上り、縦横に動ける局部の作用たちまち成るを告げて、戦闘の準備は時を移さず整いぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
『吉野』や『千種』はどうしたかしら? と思って、右舷(うげん)の方を見ると、白い波頭(なみがしら)がはてしもなくつづいて、さがす『吉野』らの影もない。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
うれしや犬吠崎が見えだしたとばかり、右舷(うげん)に大きく迂回(うかい)しようものなら、忽(たちま)ち暗礁に乗り上げて、大渦の中へ巻き込まれてしまうというのだ。
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
右舷(うげん)の山には樹木は少ないが、灰白色の山骨は美しい浅緑の草だか灌木(かんぼく)だかでおおわれている。海浜にはまっ白な小さい家がまばらに散らばっている。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
指さす左のほうに、右舷(うげん)を砂浜に膠着(こうちゃく)さして、一せきのボートがうちあげられているのが、かすかにそれと見える。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
私どもは右舷(うげん)後方にさわやかな風を受けて出かけ、しばらくはすばらしい速力で水を切って進み、危険なことがあろうなどとは夢にも思いませんでした。
そうして客は端然として竿先を見ているのです。船頭は客よりも後ろの次の間(ま)にいまして、丁度お供のような形に、先ずは少し右舷(うげん)によって扣(ひか)えております。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
団々(だんだん)として渦巻く煤烟(ばいえん)は、右舷(うげん)を掠(かす)めて、陸(おか)の方(かた)に頽(なだ)れつつ、長く水面に横(よこた)わりて、遠く暮色(ぼしょく)に雑(まじ)わりつ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すべったのかと思うように敏速(びんそく)に走っていく水夫たち。カバーがとられて、二門の砲が現われた。そして砲口は一転して、右舷(うげん)はるかの海上にねらいをさだめた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
葉子は温室のような船室からこのきりっとした空気に触れようとして甲板(かんぱん)に出てみた。右舷(うげん)を回って左舷に出ると計らずも目の前に陸影を見つけ出して、思わず足を止めた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
陰欝(いんうつ)な薄暗がりが、海上にはい出たために、右舷(うげん)に尻屋岬(しりやみさき)の燈台が感傷的にまたたき初めた。荒れに荒れる海上に、燈台の光をながむるほど、人の心を感傷的にするものはない。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
それからずっと甲板に出て、指図をしているうちに、大波が、右舷(うげん)からうちこんで、船長室の戸をうちやぶり、左舷へ通りぬけて、室内の物を、文字通り、洗いざらい持っていってしまった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
左の小高い丘に天保山(てんぽうざん)の燈籠台、右舷(うげん)のすぐ前に安治川屋敷の水見番所(みずみばんしょ)。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春の日ののどかな光が油のような海面に融(と)けほとんど漣(さざなみ)も立たぬ中を船の船首(へさき)が心地よい音をさせて水を切って進行するにつれて、霞(かすみ)たなびく島々を迎えては送り、右舷(うげん)左舷(さげん)の景色(けしき)をながめていた。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そして、右舷(うげん)近くへ走りよつて、敵はどこ? と見渡すと……
怪艦ウルフ号 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
見(み)る/\内(うち)に怪(あやし)の船(ふね)の白色檣燈(はくしよくしやうとう)は我(わ)が弦月丸(げんげつまる)の檣燈(しやうとう)と並行(へいかう)になつた——早(は)や、彼方(かなた)の右舷(うげん)の緑燈(りよくとう)は我(わ)が左舷(さげん)の紅燈(こうとう)を尻眼(しりめ)にかけて
同時にまた海は右舷(うげん)全体へ凄(すさ)まじい浪(なみ)を浴びせかけた。それは勿論あっと言う間(ま)に大砲に跨った水兵の姿をさらってしまうのに足(た)るものだった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
みごとな虹(にじ)が立ってその下の海面が強く黄色に光って見えた。右舷(うげん)の島の上には大きな竜巻(たつまき)の雲のようなものがたれ下がっていた。ミラージュも見えた。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
巨船クイーン・メリー号も、いまや右舷(うげん)も左舷(さげん)もサケの大群にかこまれてしまった。魚の群れは、メリー号と競走しているように、同じ進路をとっておよいでいる。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
神風式偵察機が一機、二機カタパルトから発射されると、戦闘旗がするすると檣の上たかくかかげられ、六十門の十五糎砲が、みな、右舷(うげん)はるかに見える島かげに向けられた。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
ボートは長さ四メートルばかりの伝馬船(てんません)で、帆柱(ほばしら)は根元から折れ、右舷(うげん)はひどく破れていた。きれぎれの帆と、帆綱(ほづな)の断片がちらばっているばかりで、船中にはなにもなかった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「右舷(うげん)投錨」
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
今(いま)から數分(すうふん)以前(いぜん)にかの船(ふね)が本船(ほんせん)右舷(うげん)後方(こうほう)の海上(かいじやう)に於(おい)て不思議(ふしぎ)にも難破信號(なんぱしんがう)を揚(あ)げた事(こと)とで考(かんが)へ合(あは)せると斯(かゝ)る配慮(しんぱい)の起(おこ)るのも無理(むり)はあるまい。
右舷(うげん)へ出ると西日が照りつけて、蝶々に結(ゆ)った料理屋者らしいのが一人欄へもたれて沖をぼんやり見ている。
高知がえり (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
汽船の前には、美しい花壇(かだん)があった。又汽船の後には道路があって、自動車がひっくりかえっていた。右舷(うげん)を見れば、町であった。左舷(さげん)を見ればこれも町であった。これは変だ。
午前右舷(うげん)に双生(ツウイン)の島を見た。一方のには燈台がある。ちょうど盆を伏せたような格好で全体が黄色い。地図で見ると兄弟島(デイブルーデル)というのらしい、どちらが兄だかわからなかった。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「右舷(うげん)メインタンク、排水用意!」
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)