)” の例文
ある橋の上で馬がつまずいたために落ちて怪我をした事など、有る事無い事、紅矢から聞いた話に添えて、詳しく話して聞かせました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
何んだか生温なまぬるい湯にでも入ツてゐるやうな心地こゝち……、うつゝから幻へと幻がはてしなく續いて、種々さま/\な影が眼前を過ぎる、……ると、自分は
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ボートから上つて、雜木林を一丁ほど歩いて、ある空地あきちに出ると、其處に六頭の馬と六人の馬子が私たちを待つてゐた。
湖水めぐり (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
鷲郎は原来猟犬かりいぬにて、かかる路には慣れたれば、「われ東道あんないせん」とて先に立ち、なほ路を急ぎけるほどに、とかくしてある尾上おのえに出でしが。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
するとあとの方から荷を担いで来る人の足音に、見れば幸右衞門の伜圓次郎と云って、今年廿五歳になり、多助とはごく中好なかよしの友達でございます。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ある伯爵家の裏門の前で俥を停めさせて、若干そこばくの代を取らすや否や周章あわてて潜門くぐりの奥深く消えたという新聞は尋常事ただごとならず思われて、噂は忽ち八方に広がった。
するに空腹なる時は途中にてこまるならんとある杉酒屋へ入て酒を五合熱燗あつかんあつらへ何ぞさかなはなきやと問に最早みな賣切うりきれかつを鹽辛しほからばかりなりと答へけるをは何よりの品なりとて五合の酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
剣幕けんまくに驚きまどひて予もあわたゞしく逃出にげいだし、れば犬は何やらむ口にくはへて躍り狂ふ、こは怪し口に銜へたるは一尾いちびうをなり、そも何ぞと見むと欲して近寄れば、獲物えものを奪ふとや思ひけむ
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
或日黄金丸は、用事ありて里に出でし帰途かえるさ、独り畠径はたみち辿たどくに、見れば彼方かなたの山岸の、野菊あまた咲き乱れたるもとに、黄なるけものねぶりをれり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
あとに残った藍丸王は、どっちとも解らず、只その声のる方に迷い迷うて、いつの間にかある谷の奥深く、真暗な杉の木立の中へ這入って仕舞った。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
座敷の真中まんなかほうり出してありますは結構な脇差で、見ると赤銅七子に金の三羽千鳥の縁頭、はてなと取上げて見ると、鍔は金家の作、目貫は三羽千鳥
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ると、持出された書類函が重なって、中から帳簿が喰出はみだしていた。四方が真黒に焦げたカード箱が投出されてる傍には、赤く焼け爛れた金庫が防火の功名てがらを誇り顔していた。
聴水は虚々うかうかと、わがへ帰ることも忘れて、次第にふもとかたへ来りつ、ある切株に腰うちかけて、霎時しばし月を眺めしが。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
そうして全く呼吸いきが絶えて、うつ伏せに倒れたのを見澄まして引き返して来て、助けて行く風をして馬の上にかかえ乗せて、或る森の中へ這入りました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
見ると、文治は痩衰やせおとろえてひげぼう/\、葬式とむらい打扮いでたちにて、かみしもこそ着ませぬが、昔に変らぬ黒の紋付、これは流罪中かみへお取上げになっていた衣類でございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すなはち人知れず稲佐の大文字山に登り行き、有る山蔭の大岩の下に埋め置きつ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よだれをたら/\らし這入ってまいり、見れば先程さっきの奴が自分の形装みなりで居りますから、八右衞門は突然いきなり此の野郎と云いながら、一生懸命に這上がって、小平の胸ぐらを掴んで放しません。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
勘太郎は仕方なしにお弁当を作って、この樫の丸太をにないて、山奥の山奥のその又山奥のとても人間の来そうにもない処に持って行って、ある岩の間へそっと立てかけて置きました。
虫の生命 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
と云いながら被って居た笠を取ったが、多助は心付かず、見ますと昨年鹽原のいえ強談ゆすりに来た道連の小平に、今一人は繼立の仁助という旅稼ぎの悪者二人ですから、多助はびっくりしますと
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お玉はお腹は減るし足は疲れるしただ情無なさけなさに「お母さん/\」と泣き叫びなが何処どこあてども無く広野原を歩いてきましたが其中そのうちに泣き疲れてあるくさむらの中に倒れて眠つてしまひました。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
こゞんで云いましたが、女の子はかしらう横にして下をのぞく様にして口を利くものでございますが、永禪は見ると飛んだ処へ来た、年はかぬが怜悧りこうな娘、こりゃ見たなと思ったから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
のみならずその辛棒の甲斐かいがありまして、脱獄してから一個月目に、新旭川附近のある村外れで、彼女が私に暗示していた、小さな奇術劇団の辻ビラがブラ下っているのを発見しました時の
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
見ると重二郎だからびっくりしましたが、横着者でございますから
そして、「最早もはや今度は勘弁しないぞ」と思いながら、子供達を皆木の上に隠して、自分は直ぐに近所の村に行って何か探しまわった。見るとある小径を横切って沢山の蟻が行列を立てて行くから
猿小僧 (新字新仮名) / 夢野久作萠円山人(著)