危険けんのん)” の例文
旧字:危險
小僧「だからあれはいけないと云うので、危険けんのんな奴ですよ、強請言ねだりごとばかり云ってましたから、お嬢さんが勾引かどわかされるといけませんぜ」
「何、叔母さんさえ信用するんなら、船だけ借りて、ぐことは僕にも漕げます。僕じゃ危険けんのんだというでしょう。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『酔つて? 然うです、然うです、少しつて来ました。だが女一人で此路は危険けんのんですぜ。』
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しているというようなことが言われそうで危険けんのんですよ。その常陸の旦那だんなは荒武者なんだってね
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
屹度きっとひどい恥を掻かすけれど、一度手に入れたら、命懸けになる女だと、何故だか私は独りでめていたから、危険けんのんで手が出せなかったが、はたから観れば、もう余程妙に見えたと見えて
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
危険けんのん極まる事だつた。
國「そんなら旦那様、折角の御親切を無にするも如何いかゞ、このお金は有難く頂戴いたします、御新造様、随分危険けんのん山路やまみちですからお気をお付けなせえまし」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
危険けんのん機関からくりだで、ちひさくこさへて、小児こども玩弄おもちやにもりましねえ。が、親譲おやゆづりの秘伝ひでんものだ、はツはツはツ、」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下りて来ながらスラリと抜きやアがッたから、危険けんのんだから逃げて来たが、魔がさしたんだなア、もう喧嘩ア止めだ
誰か見張ってでもいないと、危険けんのんだからって、ちょいちょい縄を解いて放してやったことが幾度もあった。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たれ見張みはつてでもないと、危険けんのんだからつて、ちよい/\なはいてはなしてつたことが幾度いくたびもあつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
安「これは誠に有難うごぜえやす、うちのおとっさん、此処においでなさる親方さんは何処の親方さんか知らねえが、わっちのような者に金を呉れるてえのは何だか危険けんのんだ」
「だからさ、私に限らず、どこにどんな者が居ないとも限らないからね、うっかりしちゃあ危険けんのんだよ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
有「気味の悪い、そいつア御免をこうむりやす、お金は欲しいが、彼奴あいつの側へ無闇に行くのは危険けんのんです、おのれは何だと押え付けられ、えゝとたれりゃア一打ひとうちで死にやすから」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
頬被ほおかぶりを取りてちりを払い、「危険けんのん々々。御馬前に討死をしようとした。安くは無い忠臣だ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むこうの女も亭主があるのにお前に姦通くッつくくらいだから、惚れているに違いないが、亭主が有っちゃア危険けんのんだから、貰い切って妾にしてお前の側へお置きよ、そうして私は別になって
まあ、人間わざかなわん事に、断念あきらめは着きましたが、危険けんのんな事には変わりはないので。いつ切尖きっさきが降って来ようも知れません。ちっとでもたてになるものをと、みんな同一おなじ心です。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しお侍が気でも違いまして抜身ぬきみ振𢌞ふりまわされたら、本当に危険けんのんではありませんか。
「もう目がくらみました。何、どんな目に合おうかと危険けんのんだからふさぐんで、卑怯ひきょう生命いのちおしいと思うんじゃありませんけれども、さぞ痛かろうと、あらづもりをするんでさ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幸「初めてで勝手が知れぬから、代りばんこに気を付けて、湯場ゆば危険けんのんだから」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いえ、その縁側に三人揃って立ったんでは、桟敷さじきが落ちそうで危険けんのんですから。」
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それを綱で張ってありますが、乗損のりそくなって落ちて死んだ時には、ツクの下へ其の死骸をうめるのがの祭の法だと云いますが、危険けんのんわざであります。なれども慣れて上手なものでございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あとのは張詰めた気がゆるんだか、足取が乱れて、あっちへふらり、こっちへひょろり、一人は危険けんのんな欄干にもたれかかりましたし、もう一人は何の事はない、そこへ打坐ぶっすわってしまったんです。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの時萩原とお嬢との様子がおかしいから、万一まんいちの事があって、事のあらわれた日には大変、坊主首ぼうずッくびを斬られなければならん、これは危険けんのん君子くんしあやうきに近寄らずというからかぬ方がよいと
沢はざるに並んだ其の柿を鵜呑うのみにしたやうに、ポンと成つた——実は……旅店りょてんの注意で、暴風雨あらし変果かわりはてた此のさき山路やまみちを、朝がけの旅は、不案内のものに危険けんのんであるから、一同のするやうに
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
若し向うで愈々いよ/\斬掛きりかけるようなる事があると、坐ったなりでずうっとさがり、一刀を取って抜こうと云う真影流の坐り試合、油断をしませんで襖の所へ置いて掛合うという危険けんのんな掛合でございます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お胸を少し切りますので、お動きあそばしちゃあ、危険けんのんでございます」
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見物「危険けんのんだ、確かりやって呉れ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
返事と、指図と、受取ろう、をほとんど三人に同時に言われて、片手に掴んだ蝙蝠傘こうもりがさを、くるりと一ツ持直したのを、きょとんとしてみまわしたが、まかり違うと殺しそうな、危険けんのんな方へまず不取敢とりあえず
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
好事ものずきさ、好事ものずきで、変つた話でもあつたら聞かう、不思議なことでもあるなら見ようと思ふばかり、しかしね、其を見聞みきくにつけては、どんな又対手あいてに不心得があつて、危険けんのんでないとも限らぬから
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なんでも剛胆なやつが危険けんのんな目にえば逢うほど、いっそう剛胆になるようで、何かしら邪魔がはいれば、なおさら恋しゅうなるものでな、とても思い切れないものだということを知っているから
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃ、わたしが見ても恋煩こいわずらいをしそうですね、危険けんのん危険けんのん。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)