傾斜けいしゃ)” の例文
川を戻るよりはここからさっきの道へのぼったほうがいい、傾斜けいしゃもゆるく丁度ちょうどのぼれそうだ。〔みんなそこからあの道へ出ろ。〕
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
夏はさ中にも近づいたが山の傾斜けいしゃにさしかかって建て連らねられたF——町は南の山から風が北海にけるので熱気の割合に涼しかった。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
轟然ごうぜんと砲門は黒煙こくえんをぱっと吹き出して震動しんどうした。甲板かんぱんも艦橋も、こわされそうに鳴り響き、そしてぐらりと傾斜けいしゃした。
向こうがわ傾斜けいしゃを見ると、しばいたようなやわらかさである。しかし、その傾斜は目がまわるほど深く、きわまるところに、白い渓流けいりゅう淙々そうそうと鳴っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたまのとがった、三角形かくけいあかいガラスの建物たてもの傾斜けいしゃしたおかうえにあって、かたむいていました。そして、この建物たてものには、ふしぎにぐちがついていませんでした。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小高いおかの上。丘の向う側には広大な竹林が遠々と連なっているらしい。前面はゆる傾斜けいしゃになっている。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
かれはしかしわたしを助けようとしたはずみに足をふみはずしたか、足の下の石炭がくずれたか、つるり、傾斜けいしゃの上をすべって、まっさかさまに暗い水の中に落ちこんだ。
たこが傾斜けいしゃせず、頭をふらず、つねに平衡へいこうをたもっているからである、糸は最後のひとまき三百六十メートルがのびた、地面をぬくことまさに二百数十メートルの高さである
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
近頃ちかごろは、弓形になった橋の傾斜けいしゃが苦痛でならない。つかれているのだ。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それが風にらぐと、反射でなめらかながけの赤土の表面が金屏風きんびょうぶのようにひらめく。五六じょうも高い崖の傾斜けいしゃのところどころに霧島きりしまつつじがいている。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
まったく霧は白くいたりゅうひげの青い傾斜けいしゃはその中にぼんやりかすんで行きました。諒安はとっととかけ下りました。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ほかにのぼる道があればいいが、ないとすると、この傾斜けいしゃでは、馬を乗りあげることがむずかしい。それに、下に見える渓流けいりゅうもはたして騎馬きばせるかどうか?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その地軸は、二十三度半の傾斜けいしゃをもち、太陽に対して一年を周期とする大きなかぶりを振っている。
この仕事は困難こんなんであった。なにしろわたしたちがかくれた竪坑たてこうはひどい傾斜けいしゃになっていて、むやみとすべった。しかも足をふみはずせば下は一面の水で、もうおしまいであった。
子供こどもたちは、おはかまえにならんで、わせてあたまげました。みなみほうへゆるやかに傾斜けいしゃして、のよくたるおかのなかほどに、つばきのおおきながあって、あかはないていました。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふたりは船へ帰って、一同にこのことをかたり、それから急に、修繕しゅうぜんにとりかかった。船はキールをくだかれ、そのうえに船体ががっくりと傾斜けいしゃしたものの、しかし風雨をふせぐには十分であった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
渓流に架かっているつたのかけはし、そこをわたると部落の盆地、あなたに四、五けんかわべりに七、八軒、また傾斜けいしゃの山のにも八、九軒、けむりを立てている人家じんかがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋根はかなりの傾斜けいしゃだが、身のかるい少年には、天窓のところまでっていくのは、大してむずかしい仕事でもなかった。天窓には厚い針金入りガラスがはまっている。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆる傾斜けいしゃを、二つほどのぼりしました。それから、黒い大きなみちについて、しばらく歩きました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
急角度きゅうかくど傾斜けいしゃしている屋根やねへはいがろうとしました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところがそのへん、ふもとゆる傾斜けいしゃのところには青い立派りっぱ闊葉樹かつようじゅ一杯いっぱいえているでしょう。あすこは古い沖積扇ちゅうせきせんです。はこばれてきたのです。割合わりあい肥沃ひよく土壌どじょうを作っています。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
用箋を繰れば、偶然にわく傾斜けいしゃをして紙と縁と三角形をなしていることもないとは言い切れぬことです。万年筆のさきも三角なら、女のひたいも三角形をなしているのでしょう。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第一だいいち、その粘土のところはせまくて、みんながはいれなかったし、それに大へんつるつるすべる傾斜けいしゃになっていたものだから、下の方の四、五人などは上の人につかまるようにして
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
山を切りとり、がけ補強ほきょうし、傾斜けいしゃのゆるやかな道路を作っていった。どんなせまいところでも六メートルのはばを持っている道路をこしらえた。重要な道路は幅が三十メートルもあった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
というのは、ここは山のすそで、ひどい傾斜けいしゃになっている。稲荷神社のまわりには、古い大きい木がぎっしりとり囲んでいて、枝がはりだして隙間すきまのないほどだ。それに境内けいだいもごくせまい。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ええ、もうこのへんから下りです。なんせこんどは一ぺんにあの水面すいめんまでおりて行くんですから容易よういじゃありません。この傾斜けいしゃがあるもんですから汽車はけっしてこうからこっちへは来ないんです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
又じっさい急げないようでした。傾斜けいしゃもよほど出てきたのでした。
(新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
甲板がゆるやかな傾斜けいしゃで、上り坂になっていた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ええ、もうこの辺から下りです。何せこんどは一ぺんにあの水面までおりて行くんですから容易じゃありません。この傾斜けいしゃがあるもんですから汽車は決して向うからこっちへは来ないんです。そら、もうだんだん早くなったでしょう。」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)