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うつむき
ふりがな文庫
“
俯向
(
うつむき
)” の例文
逆
(
さか
)
しまに天国を辞して奈落の暗きに落つるセータンの耳を切る地獄の風は
我
(
プライド
)
!
我
(
プライド
)
! と叫ぶ。——藤尾は
俯向
(
うつむき
)
ながら下唇を
噛
(
か
)
んだ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
抱起
(
だきおこ
)
して「これ、
俯向
(
うつむき
)
に
轉倒
(
ころ
)
ばしゃったな?
今
(
いま
)
に
一段
(
もっと
)
怜悧者
(
りこうもの
)
にならッしゃると、
仰向
(
あふむけ
)
に
轉倒
(
ころ
)
ばっしゃらう、なァ、
孃
(
いと
)
?」と
言
(
い
)
ふとな
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
「泳ぎ自慢の若旦那が、
舷
(
ふなばた
)
に
俯向
(
うつむき
)
になつてゲエゲエやつて居るから、つい
惡戯
(
いたづら
)
がして見度くなつたまでのことですよ、親分」
銭形平次捕物控:201 凉み船
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
つまり、ソバカスと思った
小
(
ち
)
いさな斑点は、被害者が心臓を突き刺されて、
俯向
(
うつむき
)
になった
儘
(
まま
)
バッタリとノビて
了
(
しま
)
ったトタンに、めり込んだ鉄屑なんだ。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
お
前
(
まへ
)
は
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
りが
宜
(
よ
)
すぎるからいけない
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
手紙
(
てがみ
)
をやつて
御覽
(
ごらん
)
、
源
(
げん
)
さんも
可愛
(
かあい
)
さうだわなと
言
(
い
)
ひながらお
力
(
りき
)
を
見
(
み
)
れば
烟管掃除
(
きせるそうじ
)
に
餘念
(
よねん
)
のなきは
俯向
(
うつむき
)
たるまゝ
物
(
もの
)
いはず。
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
いつも子供が寝ると、自分も一しょに横になっているのが、その晩は据わって
俯向
(
うつむき
)
加減になっていて、末造が
蚊屋
(
かや
)
の中に這入って来たのを知っていながら、振り向いても見ない。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
知ずやと仰せ有ければ
流石
(
さすが
)
不敵
(
ふてき
)
の段右衞門も
只
(
たゞ
)
茫然
(
ばうぜん
)
として
暫時
(
しばらく
)
物をも言ず
俯向
(
うつむき
)
て居たりしが何思ひけんぬつくと顏を
上
(
あげ
)
今迄
(
いままで
)
包
(
つゝ
)
み隱せし我が
惡行
(
あくぎやう
)
成程穀屋平兵衞を殺害し金子百兩を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そして、家と家に挟まれた耕地の所まで乗り付けた時、左側の家の背戸畑の上に
俯向
(
うつむき
)
に倒れている人影を見た。彼は馬から飛び下りて人影の側へ走って行き、その人間を抱き起した。
死の復讐
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
直接の関係はなくとも、
斯
(
か
)
く間接の
感化
(
かんくわ
)
をうくるものなれば、尊敬の意をうしなふまじきものなりなど、花は見ずして
俯向
(
うつむき
)
ながら庭を
巡
(
めぐ
)
るに、
斯
(
か
)
く
花園
(
はなぞの
)
を
開
(
ひら
)
きて、人の心を
楽
(
たのし
)
ます
園主
(
ゑんしゆ
)
の
功徳
(
くどく
)
隅田の春
(新字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
彼女は押入れから布団を出して、頭からそれを引っかむって
俯向
(
うつむき
)
になった。
窃む女
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
ぺたんことも
曲
(
ゆが
)
んだとも、
大
(
おほ
)
きな
下駄
(
げた
)
を
引摺
(
ひきず
)
つて、
前屈
(
まへかゞ
)
みに
俯向
(
うつむ
)
いた、
瓢箪
(
へうたん
)
を
俯向
(
うつむき
)
に、
突
(
つ
)
き
出
(
で
)
た
出額
(
おでこ
)
の
尻
(
しり
)
すぼけ、
情
(
なさけ
)
を
知
(
し
)
らず
故
(
ことさ
)
らに
繪
(
ゑ
)
に
描
(
か
)
いたやうなのが、ピイロロロピイと
仰向
(
あふむ
)
いて
吹
(
ふ
)
いて、すぐ
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それに始終
俯向
(
うつむき
)
加減に伏目になって、あまり口数もきかず、どこかまだ座敷馴れないような風だから、いかにも
内輪
(
うちわ
)
なおとなしい女としか思われません。長くこんな商売をしていられる身体じゃない。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「話しにくい?」と云いながら主人は武右衛門君の顔を見たが、先方は依然として
俯向
(
うつむき
)
になってるから、何事とも鑑定が出来ない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
わだかまりもなく言つて、
俯向
(
うつむき
)
加減に
莞爾
(
につこり
)
します。こんな無禮な仕打は、日頃の家光には見ようつたつて見られません。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
亡夫
(
やど
)
が「これ、
俯向
(
うつむき
)
に
轉倒
(
ころ
)
ばしゃったか?
今
(
いま
)
に
適齡
(
としごろ
)
にならッしゃると
仰向
(
あふむけ
)
に
轉倒
(
ころ
)
ばッしゃらう、なァ、
孃
(
いと
)
?」といふとな、
啼止
(
なきだま
)
って「
唯
(
あい
)
」ぢゃといの。(笑ふ)。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
お前は思ひ切りが宜すぎるからいけないともかく手紙をやつて御覧、源さんも可愛さうだわなと言ひながらお力を見れば烟管掃除に余念のなきか
俯向
(
うつむき
)
たるまま物いはず。
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
改るに質物と見え
皆
(
みな
)
質札
(
しちふだ
)
の付たる
儘
(
まゝ
)
にて大風呂敷に一包みあるゆゑヤイ
汝
(
おのれ
)
は
何
(
いづ
)
れの者ぞ尋常に申立よと有りしかば久兵衞は
俯向
(
うつむき
)
居
(
ゐ
)
たりしが
首
(
かしら
)
を
上
(
あげ
)
私しは山崎町油屋五兵衞方の番頭を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
八五郎が避けたのを見ると、五十年輩の浪人者が一人、一刀を提げたまま、自分も脇腹をえぐられて、土間の
床几
(
しょうぎ
)
に
俯向
(
うつむき
)
になって死んでいるではありませんか。
銭形平次捕物控:101 お秀の父
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがて女の頬は
熱
(
ほて
)
って赤くなった。
白粉
(
おしろい
)
をつけていないせいか、その熱った頬の色が著るしく私の眼に着いた。
俯向
(
うつむき
)
になっているので、たくさんある黒い髪の毛も自然私の注意を
惹
(
ひ
)
く種になった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手に持たり是別人ならず島田宿の旅籠屋水田屋藤八成ば別て惣内源藏の兩人は
愕然
(
ぎよつ
)
としたる樣子にて
俯向
(
うつむき
)
居るに藤八は一同へ向ひ茲な名主惣内殿并に手代の源藏兩人
盜賊
(
たうぞく
)
と見たは違ひなしコレ名主手代の
衆
(
しう
)
昨日
(
きのふ
)
の
朝
(
あさ
)
此九助殿の親類周藏嘉平次と
云
(
いつ
)
て確な
證據
(
しようこ
)
日蓮樣の
曼陀羅
(
まんだら
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「もう一つ、喉を刺されて膝も崩さずに
俯向
(
うつむき
)
になつて居るのをお前は變だと思はないか」
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
俯向
(
うつむき
)
になつて死んで居るお縫の姿は不思議に夜の寢卷姿ではなく、見よげな晝の姿——帶は解いて居りますが銘仙の袷に、キリキリと赤い
扱帶
(
しごき
)
を卷いて居るのが、異樣に目立ちます。
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
娘はさすがに極りが惡かつたものか、床の上へ起き直らうとしましたが、
眩暈
(
めま
)
ひでもしたものか、あわてて
前褄
(
まへづま
)
を掻き合せて
俯向
(
うつむき
)
になつてしまひました。どこかひどく痛む樣子です。
銭形平次捕物控:229 蔵の中の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「井戸端の石の上に
俯向
(
うつむき
)
になつてゐました。もう正氣もなかつたやうです」
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「井戸端の石の上に
俯向
(
うつむき
)
になっていました。もう正気もなかったようです」
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
凄まじい
恐怖
(
きようふ
)
が、花火のやうに
炸裂
(
さくれつ
)
したのも無理はありません。部屋の中に若い娘が一人、首に
強靱
(
きやうじん
)
な
麻繩
(
あさなは
)
を卷かれ、その繩尻を二間ばかり疊から縁側に引いて、
俯向
(
うつむき
)
になつたまゝ死んでゐたのです。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「お寢卷のまゝ、
俯向
(
うつむき
)
になつて居ました」
銭形平次捕物控:145 蜘蛛の巣
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
俯
漢検1級
部首:⼈
10画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“俯向”で始まる語句
俯向形
俯向加減
俯向伏
俯向勝