おさ)” の例文
科挙かきょに応ずることのできるように学問文章をおさめることになっているので、宣揚もしかたなく夫人を家に残して山寺へ往った。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小学校四年生しかおさめていない子どもには手紙をかくすべもわからなかったのだろうか。それとも本人の手に渡ったかどうかもあやしい……。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
これはネパール国王の王妃おうひがおかくれになった時分に、その功徳くどくおさむるためにこの四里の大林の間には一滴も水がないから、一里毎に溜池ためいけを設けて
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「おれも、ともに心がけて、良い師と良い主人を見つけてやろう。なにも学問はひまでやるのじゃないから、主人に仕えながらでもおさめられることだし」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法律などをおさめないで、植物学か天文学でもやったらまだしょうに合った仕事が天から授かるかも知れないと思う。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わがくににおいては道徳に関する文字は漢語より成るもの多きがゆえに、学問なければ、道もおさぬ心地す。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
と風景画家のうわさをした。正太はずっと以前、染物織物なぞに志して、その為に絵画をおさめようとしたことが有る位で、風景画家の仕事にも興味を持っていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかるに、このような、あるいさらに小さなものをもあきらかに見て、すこしもあやまらない人はむかしからけっして少くありません。この人たちは自分のこころをおさめたのです。
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
僕は何が為に医学をおさめ、現にこの研究室で、どんな変てこな研究を続けているか、という様なことだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
神主かんぬし宮氏の家に貞和ぢやうわ文明ぶんめいの頃の記録きろく今にそんせり。当主たうしゆ文雅ぶんがこのみ吟詠ぎんえいにもとめり、雅名がめい正樹まさきといふ。同好どうこうを以てまじはりおさむ。幣下へいしたとなふ社家しやけ諸方しよはうにあまたある大社也。
メンデルは、この時もはや三十歳にもなっているので、普通の学生とは年齢の上でもちがうわけですが、ひたすら学問をおさめたいという心から、一生懸命に勉強したのでした。
グレゴール・メンデル (新字新仮名) / 石原純(著)
ずそのころ私達わたくしたちけた教育しつけにつきて申上もうしあげてみましょうか——時代じだい時代じだいゆえ、教育しつけはもういたって簡単かんたんなもので、学問がくもん読書よみかき習字てならいまた歌道かどうとおり、すべて家庭かていおさめました。
竪固なる意思に制せられて謹厳に身をおさめたる彼が境遇は、かりそめにもうそをつかじとて文学にも理想を排したるなるべく、はた彼が愛読したりという杜詩としに記実的の作多きを見ては
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
貴方あなたは園長を殺すために、医学をおさめ、理学を学び、スマトラまで行って蟒の研究に従事じゅうじせられた。そして日本へ帰られると、多額の寄附をしてこの爬虫館を建て、貴方は研究を続けられた。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それで、私はれに居たかと云えば、此の正則の方であったから、英語はすこしも習わなかったのである。英語をおさめていぬから、当時の予備門に入ることがむずい。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
剣は真陰流しんかげりゅうをきわめ、幼年から朱舜水しゅしゅんすいに師事し、また心越禅師しんえつぜんじ侍座じざして、侍ひとかどのたしなみはおさめた者とは——老公の眼からも、今は見えないほどな彼の困り方である。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで何か学問をおさめたいという心がしきりに起って来たので、ついに決心を定めて、一八五一年にオーストリーの首都であるヴィーンにおもむき、そこの大学に入って、数学、物理学
グレゴール・メンデル (新字新仮名) / 石原純(著)
ペンのごときは僕らが始めて洋学ようがくおさめるころには筆またはかねの筆と訳したものだ。しかるに今は日本のすみずみに行ってもペンで通る。かねの筆というよりはペンというほうがむしろ簡便である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
要するに彼ぐらいの年輩の青年が、一人前の人間になる階梯かいていとして、おさむべき事、つとむべき事には、内部の動揺やら、外部の束縛やらで、いっさい手が着かなかったのである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大学でおさめた博物学に大いに興味を感じていたので、それからは僧院のなかに自分でいろいろの動物を飼ったり、また植物を栽培して、それらをこまかく観察することを楽しみとしました。
グレゴール・メンデル (新字新仮名) / 石原純(著)
敬太郎けいたろう須永すながという友達があった。これは軍人の子でありながら軍人が大嫌だいきらいで、法律をおさめながら役人にも会社員にもなる気のない、至って退嬰主義たいえいしゅぎの男であった。少くとも敬太郎にはそう見えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)