きょう)” の例文
近来きんらい澱粉でんぷん製造の会社が設立せられ、この球根を集めくだきそれを製しているが、白色無毒な良好澱粉が製出せられ、食用にきょうせられる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
人がみずから働く昔からの運搬法のなかでは、ただこの背を使うものだけが遠方の輸送にきょうせられ、したがってまた職業になっていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ここにおいてわがはいは日々の心得こころえ尋常じんじょう平生へいぜい自戒じかいをつづりて、自己の記憶きおくを新たにするとともに同志の人々の考えにきょうしたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ところが、大寺が犯罪にきょうしたナイフは彼自身のものではなく、被害者小田清三のものである事は明かになって居ります。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
テイラー博士「実は本日ここへ試作のテイクロトロンを持参して、諸君の高覧こうらんきょうしたいと思っていたところ、出掛けるときまでに間に合わなかった」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わずか収入しゅうにゅうはは給養きゅうようにもきょうせねばならず、かれついにこの生活せいかつにはれず、断然だんぜん大学だいがくって、古郷こきょうかえった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
以て汝のために恋歌れんかきょうし(ソロモンの雅歌)、汝のために軍談ぐんだんを述ぶべし(約書亜ヨシュア記士師記)、貞操美談あり(路得ルツ記)、慷慨歌あり(耶利米亜エレミア記)
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
地上ちじゃうそんするものたるかぎり、如何いかしいしな何等なにらかのえききょうせざるはく、また如何いかいものも用法ようはふたゞしからざればそのせいもとり、はからざるへいしゃうずるならひ。
ここもと御覧にきょうしまするは、神変不思議の大魔術、美人の獄門とござりまして、これなる少女をかたえの箱の中へ入れ、十四本の日本刀をもちまして、一寸だめし、五分だめし
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ですから、これよりおもむろにご高覧こうらんきょうします。……せいてはことを仕損ずる。……まあまあ、手前の凧あげでも見ておいでなさい。……仙波阿古十郎、これから凧をあげます。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それを買う人びとも品がよくてあたいやすいのを内々不思議に思っていたのであるが、さてその正体があらわれると、その油を食用にきょうした者はみなわずらい付いて、俄かに吐いたりくだしたりした。
たとえ身体の脂を悉く絞り出して他人の膏薬こうやくの材料にきょうしてしまおうとも。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一般に、私達の日常に於ては、言葉はもっぱら「代用」のきょうされている。
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
この鞠ぬすみは伊賀流いがりゅう甲賀流こうがりゅうのものが、かつて信長のぶなが在世ざいせい当時、安土城あづちじょうで試合をしたこともあるし、それよりいぜんには、仙洞御所せんとうごしょのお庭さきで月卿雲客げっけいうんかくの前で、叡覧えいらんきょうしたこともあって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう風で三回あるいは四回の美食を日々にきょうしますので、その間にも茶と酒とは絶えず飲ませ、その飲食の間にはあるいは面白い話をします。チベットの舞踏は俗謡を唄って舞踏をやるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
躊躇なく農奴や領地の半ばを犠牲にきょうするだろう。
信越二国を流れる信濃川の水系では、翌年の種子にきょうすべき種籾たねもみをスヂと謂い、すなわちそのスヂ俵を中心とした正月の色々の祭儀がある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
芍薬は宿根性しゅっこんせい草本そうほんで、その根を薬用にきょうする。春に根頭こんとうからいきおいのよい赤い芽を出し、見てまことに気持がよい。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
僕がここに自分のまよいの径路けいろを述べたのは、同じ問題に苦しめる人の参考にきょうしたいからである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
また博士を送り調査の必要ありという思召おぼしめしなれば、私はその往来ゆききの旅費を支弁しその博士をして首尾しゅびよく法王に復命し得らるるようの便宜をきょうしますから、この二つうちその一つを聞いて戴きたい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
主たる用途は薬もしくは呪法じゅほうであったが、なお稀々まれまれにはこれを食餌しょくじきょうすることもあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
イチジクは変形せる花軸部かじくぶを食用にきょうしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
異人答えて曰く、もと修するの法なし、かつて九郎判官ほうがんに随従して高館にいるとき、六月衣川ころもがわつりして達谷たっこくに入る。一老人あり招きて食をきょうす。肉ありその色はしゅのごとく味美なり、仁羮じんこうと名づく。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)