代々だいだい)” の例文
若い頃の自分にはおや代々だいだいの薄暗い質屋の店先に坐ってうららかな春の日をよそに働きくらすのが、いかに辛くいかになさけなかったであろう。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あおたまは、ずうっとむかし先祖せんぞのだれかが、このうみべのすなのなかからほりして、それが代々だいだいいえにつたわったのだということでありました。
青い玉と銀色のふえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
なににしろ婦女おんな亀鑑かがみとしてられた御方おかた霊場れいじょうなので、三浦家みうらけでも代々だいだいあそこを大切たいせつ取扱とりあつかってたらしいのでございます。
信玄公しんげんこうのご在世ざいせいまで、代々だいだい武田家たけだけより社領しゃりょうのご寄進きしんもあったこの山のことゆえ、もしや、ご承知しょうちもあろうかと、おうかがいにでましたしだいで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるむらなかに、大きな川がながれていました。その川はたいへんながれがつよくてはやくて、むかしから代々だいだいむらの人が何度なんどはしをかけても、すぐながされてしまいます。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「なんでもいいから早く出して来う。俺家おらがうちは、代々だいだい駆落者かけおちものなんか出したことのねえ家だ。犬共め!」
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
かならず身のこなしや足の運びように、祖母そぼから母への代々だいだいの練習が、積み重なっているのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「あの志保田の家には、代々だいだい気狂きちがいが出来ます」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
は、とりをいちばんおそれていたのです。それは、代々だいだいからの神経しんけいつたわっている本能的ほんのうてきのおそれのようにもおもわれました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくし生家さとでございますか——生家さと鎌倉かまくらにありました。ちち大江廣信おおえひろのぶ——代々だいだい鎌倉かまくら幕府ばくふつかへた家柄いえがらで、ちち矢張やはりそこにつとめてりました。
仲麻呂なかまろんでからは、日本にっぽんのこった子孫しそん代々だいだい田舎いなかにうずもれて、田舎侍いなかざむらいになってしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
天下てんかぴんといいますので、やすくて千りょうだと、あのりこうものがいいました。なにしろ先祖せんぞ代々だいだい宝物ほうもつでございまして、なるたけりたくはないと、おもっています。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いかにもとおむかしのこと、ところひとも、きゅうにはむねうかびませぬ。——わたくしうまれたところは安芸あき国府こくふちち安藝淵眞佐臣あきぶちまさをみ……代々だいだいこのくにつかさうけたまわってりました。
悪右衛門あくうえもんおどろいてかえると、それはおな河内国かわちのくに藤井寺ふじいでらというおてら和尚おしょうさんでした。そのおてら石川いしかわいえ代々だいだい菩提所ぼだいしょで、和尚おしょうさんとは平生へいぜいから大そう懇意こんい間柄あいだがらでした。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
むかし、あるくに有名ゆうめい陶器師とうきしがありました。代々だいだい陶器とうきいて、そのうちしなといえば、とお他国たこくにまでひびいていたのであります。代々だいだい主人しゅじんは、やまからつち吟味ぎんみいたしました。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)