あらそい)” の例文
旧字:
かんじんの娘がなくなってからも土人達はあらそいをつづけました。そうして一人一人死んで行き遂々土人達は一人残らず滅びて行って了いました。
一体塾生の乱暴と云うものはれまで申した通りであるが、その塾生同士相互あいたがい間柄あいだがらと云うものはいたって仲のいもので、決してあらそいなどをしたことはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
われ主家を出でしより、到る処の犬とあらそいしが、かつてもののかずともせざりしに。うえてふ敵には勝ちがたく、かくてはこの原の露ときえて、からすえじきとなりなんも知られず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
フランスにおいてこれら両極端の意見の間に存するあらそいは、経済学はある所のものの説明であるかまたはあるべき所のもののプログラムを立てるべきものであるか。
二人のあらそいの原因となったのは、組頭伊奈長次郎いなちょうじろうの娘おあやといって、十九の厄の素晴らしい美人でした。
実は理性のあらそいに、意志が容喙したと云うのは、主客を顛倒てんどうした話で、その理性の争というのは、あの目の磁石力に対する、無力なる抗抵こうていに過ぎなかったかも知れない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
或は西南の騒動そうどうは、一個の臣民しんみんたる西郷が正統せいとうの政府に対して叛乱はんらんくわだてたるものに過ぎざれども、戊辰ぼしんへんは京都の政府と江戸の政府と対立たいりつしてあたかも両政府のあらそいなれば
『上杉記』にると天正六年三月に上杉謙信が卒して、養子三郎景虎と甥喜平次景勝との間に家督あらそいが起り、景虎の実家北条氏が応援の為に此峠を踰えて越後へ出兵した。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
わがはいは決して道徳問題は、みなみな無造作むぞうさに解するものと言うのではない。一生の間には一回二回もしくは数回はらわたち、胸をこがすようなあらそいが心の中に起こることもある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ヘラクレイトスがあらそいは万物の父といったように、実在は矛盾に由って成立するのである、赤き物は赤からざる色に対し、働く者はこれをうける者に対して成立するのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
庄左衞門は堅いから向うで金を出したのを立腹して、一言二言ひとことふたことあらそいより遂にぴかつくものを引抜き、狭い路地の中で白昼に白刃はくじんひらめかし、斬合うという騒ぎに相成りましたから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ああ事業よ事業よ幾干いくばくの偽善と卑劣手段と嫉妬とあらそいとは汝の名により惹起ひきおこされしや。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
人間として衝突は自然の約束であります。先生もよく/\思い込まるればこそ、彼死様しにようをされた。そうしていつわることをぬトルストイ家の人々なればこそ、彼あらそいもあったのでしょう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一、上野介殿御屋敷へ押込おしこみはたらきの儀、功の浅深せんしんこれあるべからず候。上野介殿しるしあげ候者も、警固けいご一通ひととおりの者も同前たるべく候。しかれ組合くみあわせ働役はたらきやくこのみ申すまじく候。もっとも先後のあらそい致すべからず候。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
しかれども程朱の学、一世の士君子の奉ずるところたるの日において、抗争反撃の弁をたくましくす。書のおおやけにさるゝの時、道衍既に七十八歳、道の為にすとうと雖も、亦あらそいを好むというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
黒金くろがねなすあらそいの声が響いたのを8705
ああ 饑餓と窮乏のあらそいには
飢えたる百姓達 (新字新仮名) / 今野大力(著)
そのあらそいは五百が商業を再興させようとして勧めるのに、やす躊躇ちゅうちょして決せないために起るのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
佐幕家の進退は一切いっさい万事、君臣の名分から割出して、徳川三百年の天下云々うんぬんと争いながら、その天下が無くなったらあらそいの点も無くなって平気の平左衛門へいざえもんとは可笑おかしい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
けれどもそれは小競合こぜりあいの競争であって小兵こものの戦争であって、匹夫ひっぷあらそいというものである。
今世風の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
『鬼あらそい』の大名は、臆病者でありますし、『萩大名』の大名は、無学無風流でござりますし、『墨塗すみぬり』『伊文字いもじ』『つり女』などに、姿を現わす大名と来ては、好色でしかたがございません。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この始末は「寛政重修諸家譜かんせいちょうしゅうしょかふならびに「二川随筆ふたかわずいひつ」に詳しく見えましたが、私のあらそいは厳重な法度はっとで、長坂家は断絶、井上外記の子半十郎正景、稲富喜太夫の子喜三郎直久きさぶろうなおひさは、共に士籍を削って追放
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
このあらそいは週をかさね月を累ねてまなかった。五百らは百方調停を試みたが何の功をも奏せなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
成程なるほど、爾う云えば分らないことはないが、何分ドウもあらそいと云う文字が穏かならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)