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上草履
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うわぞうり
ふりがな文庫
“
上草履
(
うわぞうり
)” の例文
新らしい
上草履
(
うわぞうり
)
を買ってはいていると、受持ちの図画の市河と云う教師に呼ばれて、その草履は誰それのものではないかと云われた。
私の先生
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
彼は
上草履
(
うわぞうり
)
の音をわざとらしく高く鳴らして、自分の室に入るや否や、「やっと済んだ」と云った。自分は「どうだった」と聞いた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかしその言葉が終らない内に、もうそこへはさっきの女中が、ばたばた
上草履
(
うわぞうり
)
を鳴らせながら、泣き立てる
赤児
(
あかご
)
を
抱
(
だ
)
きそやして来た。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「待て、あんな恰好で逃げ出す人間があるものか、トボトボと地獄へでも行く人の姿じゃないか。あッ
上草履
(
うわぞうり
)
を履いたきりだ。八」
銭形平次捕物控:107 梅吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこへ来ると、
上草履
(
うわぞうり
)
が
綺麗
(
きれい
)
に一足脱ぎ揃えてあるのを見て、ホッと安心したような思い入れで、外からそっと障子を引き
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
云うより早く、彼女は
木履
(
サボ
)
も穿かずに、
上草履
(
うわぞうり
)
を突かけたままで不意に外へ飛びだすと、駆けるようにして真直に停車場のある町の方へ行った。
情状酌量
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
足が、障子の合せ目に揃えて脱いだ
上草履
(
うわぞうり
)
にかかった……当ったのです。その蹈心地。ほんのりと人肌のぬくみがある。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
葉子はやむを得ず、かつかつと鳴る二人の
靴
(
くつ
)
の音と、自分の
上草履
(
うわぞうり
)
の音とをさびしく聞きながら、夫人のそばにひき添って
甲板
(
かんぱん
)
の上を歩き始めた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と云ううちに浅黄色の垂幕を
紮
(
から
)
げて出て来た。生々しい青大将色の琉球
飛白
(
がすり
)
を素肌に着て、洗い髪の
櫛巻
(
くしまき
)
に、女たちと同じ麻裏の
上草履
(
うわぞうり
)
を
穿
(
は
)
いている。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と
手水場
(
ちょうずば
)
の
上草履
(
うわぞうり
)
を
履
(
は
)
いて庭へ
下
(
お
)
り、
開戸
(
ひらき
)
を開け、折戸の
許
(
もと
)
へ
佇
(
たゝず
)
んで様子を見ますと、本を読んでいる声が聞える。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
廊下には
上草履
(
うわぞうり
)
の音がさびれ、台の物の遺骸を今
室
(
へや
)
の外へ出している所もある。遥かの三階からは甲走ッた声で、喜助どん喜助どんと
床番
(
とこばん
)
を呼んでいる。
里の今昔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
りよは着換えぬうちで好かったと思いながら、すぐに起って
上草履
(
うわぞうり
)
を
穿
(
は
)
いて、廊下
伝
(
づたい
)
に老女の部屋へ往った。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
廊下には
上草履
(
うわぞうり
)
の音がさびれ、台の物の
遺骸
(
いがい
)
を今
室
(
へや
)
の外へ出しているところもある。はるかの三階からは甲走ッた声で、喜助どん喜助どんと床番を呼んでいる。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
涼しい雨がやって来て
離座敷
(
はなれ
)
の縁先を
濡
(
ぬら
)
すような日もあった。雨はよく深い
廂
(
ひさし
)
の下まで降り込んだ。
母屋
(
おもや
)
へ通う廊下のところなぞは
上草履
(
うわぞうり
)
でも
穿
(
は
)
かなければ歩かれなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
食事の時には
迚
(
とて
)
も座って
喰
(
く
)
うなんと
云
(
い
)
うことは出来た話でない。足も
踏立
(
ふみた
)
てられぬ
板敷
(
いたじき
)
だから、皆
上草履
(
うわぞうり
)
を
穿
(
はい
)
て
立
(
たっ
)
て喰う。一度は銘々に
別
(
わ
)
けてやったこともあるけれども、
爾
(
そ
)
うは続かぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「
間夫
(
まぶ
)
」、「結び文」、「床へさし込む
朧
(
おぼ
)
ろ月」、「
櫺子
(
れんじ
)
」、「胸づくし」、「
鶏
(
とり
)
の
啼
(
な
)
くまで」、「
手管
(
てくだ
)
」、「
口舌
(
くぜつ
)
」、「
宵
(
よい
)
の客」、「傾城の誠」、「
抓
(
つね
)
る」、「廊下をすべる
上草履
(
うわぞうり
)
」
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
朝の
爽
(
さわや
)
かな心持に、勝平は昨夜の不愉快な出来事を忘れていた。
尨大
(
ぼうだい
)
な身体を、寝台から、ムクムクと起すと、
上草履
(
うわぞうり
)
を突っかけて、朝の快い空気に吸い付けられたように、
縁側
(
ヴェランダ
)
に出た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
社へ行くと、下足番の
爺
(
じい
)
さんが、彼の
上草履
(
うわぞうり
)
を出しながらにやにや薄笑いして何か彼に言いそうにした。彼は何か言われないうちにと努めて不愛そうな顔つきをして急いで梯子段を上った。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
我等もことごとく下駄のままあがった。
上草履
(
うわぞうり
)
や
素足
(
すあし
)
で歩くような学校じゃないのだから仕方がない。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
同じ露地の隅田川の岸には
娼妓
(
じょろう
)
の用いる
上草履
(
うわぞうり
)
と男物の麻裏草履とが脱捨ててあッた事が知れた。
里の今昔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大塚さんはその食卓の側に坐って、
珈琲
(
コーヒー
)
でも持って来るように、と田舎々々した小娘に
吩咐
(
いいつ
)
けた。廊下を隔てて勝手の方が見える。働好きな婆さんが
上草履
(
うわぞうり
)
の音をさせている。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その跡にはただ長い廊下に、時々
上草履
(
うわぞうり
)
を響かせる、女中の足音だけが残っている。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
上草履
(
うわぞうり
)
の
爪前
(
つまさき
)
細く
※娜
(
たおやか
)
に腰を掛けた、年若き夫人が、博多の
伊達巻
(
だてまき
)
した
平常着
(
ふだんぎ
)
に、お
召
(
めし
)
の
紺
(
こん
)
の
雨絣
(
あまがすり
)
の羽織ばかり、
繕
(
つくろ
)
はず、
等閑
(
なおざり
)
に
引被
(
ひっか
)
けた、
其
(
そ
)
の姿は、
敷詰
(
しきつ
)
めた
絨氈
(
じゅうたん
)
の
浮出
(
うきい
)
でた
綾
(
あや
)
もなく
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
かつらのまま楽屋から出口まで飛び出して来て我輩に
上草履
(
うわぞうり
)
を進めたりなどする態度は甚だ
慇懃
(
いんぎん
)
のものだ、しかしもう開幕間際だったから、楽屋へは行かず直ちに
桟敷
(
さじき
)
に出て見物したが
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
おりからじめじめと降りつづいている
五月雨
(
さみだれ
)
に、廊下には夜明けからの薄暗さがそのまま残っていた。白衣を着た看護婦が暗いだだっ
広
(
ぴろ
)
い廊下を、
上草履
(
うわぞうり
)
の大きな音をさせながら案内に立った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
其の内華魁が
上草履
(
うわぞうり
)
を
穿
(
は
)
いて
跡尻
(
あとじり
)
から廻って参りますのを見て。
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
がらりと障子を明けて、赤い
鼻緒
(
はなお
)
の
上草履
(
うわぞうり
)
に、カシミヤの
靴足袋
(
くつたび
)
を無理に突き込んだ時、下女が来る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私も、さっさと台所を片付けたいと思い、鍋は伏せ、皿小鉢は仕舞い、物置の炭をかんかん割って出し、猫の足跡もそそくさと
掃
(
ふ
)
いて、
上草履
(
うわぞうり
)
を脱ぎまして、奥様の御部屋へ参りました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いたいたしいと言えば、それがね、素足に
上草履
(
うわぞうり
)
。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この
棟
(
むね
)
に不自由な身を託した患者は申し合せたように黙っている。寝ているのか、考えているのか話をするものは一人もない。廊下を歩く看護婦の
上草履
(
うわぞうり
)
の音さえ聞えない。
変な音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
後
(
のち
)
患者は入れ代り立ち代り出たり入ったりした。自分の病気は日を積むにしたがってしだいに快方に向った。しまいには
上草履
(
うわぞうり
)
を
穿
(
は
)
いて広い廊下をあちこち散歩し始めた。
変な音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
草
常用漢字
小1
部首:⾋
9画
履
常用漢字
中学
部首:⼫
15画
“上”で始まる語句
上
上手
上下
上方
上海
上衣
上野
上総
上人
上﨟