麥酒ビール)” の例文
新字:麦酒
なんとなく心配しんぱいさうなかほで、左樣々々さやう/\々々/\、と、打濕うちしめつてつてるかとおもふと、やれヴオツカをせの、麥酒ビールめろのとすゝめはじめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
私は喪心者のやうに空を見ながら、自分の幸福に滿足して、今日も昨日も、ひとりで閑雅な麥酒ビールを飮んでる。虚無よ! 雲よ! 人生よ。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
宿で麥酒ビール明罎あきびんへ酒をこめて貰つた。八瀬尾やせをへ提げて行くのだ。爺さんの晩酌がいつも地酒のきついので我慢して居るのだと知つたからである。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「それは此の次にしよう。麥酒ビールとサンドウイツチでもとゝのへて、舟で淀川をさかのぼるのもいゝかもしれない。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
宿へ歸つて鹽燒にさせて、先生大得意で天賜の佳肴に一盞の麥酒ビールを仰いだところは如何にも樂しさうであつた。但しその魚の大さ三尺五寸也、十倍にして。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
お光は焦々いら/\した揚句に、またコートを取り出し、それを着て、シヨールを掛けて、四季袋を提げて、洋傘を持つて、柱にかけてある麥酒ビールの廣告附きの細長い鏡の前に進み
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
『休暇で歸るのに見送りなんかて貰はなくつても可いと言つたのに、態々俥でやつて來てね。麥酒ビールや水菓子なんか車窓まどン中へはふり込んでくれた。皆樣に宜敷よろしくつて言つてたよ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それなら一ことんなでかへらうとて、發掘はつくつ中止ちうしし、天幕てんとたゝみ、飮餘のみあましたる麥酒ビールびんたづさへて、うら池邊ちへんき、其所そこにてまた小宴せうえんり、食物しよくもつのこりをいけうを投與とうよして、かるくし
兄は麥酒ビールのコツプを差出しながら、こんな事を云ひ初めた。
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
ペテルブルグにつてからもドクトルは猶且やはり同樣どうやう宿やどにのみ引籠ひきこもつてそとへはず、一にち長椅子ながいすうへよこになり、麥酒ビールときおきる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しな豆腐とうふかついでとき麥酒ビール明罎あきびん手桶てをけくゝつてつた。それでかへりの手桶てをけかるくなつたとき勘次かんじきなさけがこぼ/\とびんなかつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
廣漠とした廣間ホールの中で、私はひとり麥酒ビールを飮んでた。だれも外に客がなく、物の動く影さへもない。煖爐ストーブは明るく燃え、ドアの厚い硝子を通して、晩秋の光が侘しく射してた。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
車やに連れこまれたのはきたない旅人宿だつた。麥酒ビールと林檎を持つて直に姨捨に登つた。稻が延びてゐるので田毎の月の趣は無かつたが、蟲の音が滿山をこめて幼稚な詩情を誘つた。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
とき丁度ちやうど時過じすぎ。いつもなら院長ゐんちやう自分じぶんへやからへやへとあるいてゐると、ダリユシカが、麥酒ビール旦那樣だんなさま如何いかゞですか、と刻限こくげん戸外こぐわいしづか晴渡はれわたつた天氣てんきである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と答へて、先生は麥酒ビールを飮んでゐるのに、彼はアプサンを命じた。赤木桁平氏ではないけれども、此の少年を前にして自分は遊蕩文學撲滅論をしないでは安心してゐられない心持に惱まされた。
かれ股引もゝひき草鞋わらぢ穿いて大風呂敷おほぶろしき脊負せおつてつた。麥酒ビール明罎あきびんほんへ一ぱい醤油しやうゆ莎草繩くゞなはくゝつてげた。それからかれまた煎餅せんべいを一ふくろつた。醤油しやうゆこめとがいので佳味うま煎餅せんべいであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「僕は麥酒ビールの方がいゝなあ。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)