馬鈴薯じゃがいも)” の例文
馬には、大豆、馬鈴薯じゃがいもわら麦殻むぎがらの外に糯米もちごめを宛てがって、枯草の中で鳴く声がすれば、夜中に幾度か起きて馬小屋を見廻りました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
うしろに、細君であろ、十八九のひっつめにって筒袖つつそで娘々むすめむすめした婦人が居る。土間には、西洋種の瓢形ふくべがた南瓜かぼちゃや、馬鈴薯じゃがいもうずたかく積んである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
馬鈴薯じゃがいも甘藷かんしょ胡羅蔔にんじん雪花菜ゆきやさいふすまわら生草なまくさ、それから食パンだとか、牛乳、うさぎとり馬肉ばにく、魚類など、トラックに満載まんさいされてきますよ
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
星はおもむろに石ころに変り、石ころは又馬鈴薯じゃがいもに変り、馬鈴薯は三度目に蝶に変り、蝶は最後に極く小さい軍服姿のナポレオンに変ってしまう。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その結果がビフテキ主義となろうが、馬鈴薯じゃがいも主義となろうが、厭世えんせいの徒となってこの生命をのろおうが、決して頓着とんじゃくしない!
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
兵糧ひょうろうが尽きて焼芋やきいも馬鈴薯じゃがいもで間に合せていたこともあります。もっともこれは僕だけです。叔母は極めて感じの悪い女です。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
トマトは我国のそれと全く同じ味のする唯一の果実である。馬鈴薯じゃがいもは極めて小さく、薩摩芋は我国のによく似ているが、繊維が硬く味は水っぽい。
依ては年中絶えず第一には馬鈴薯じゃがいもを多く常喰する事にて、第二は諸種の豆類をも多く喰するを以て、馬鈴薯と豆類には足りて忌むべきを覚ゆるあり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
足のぐらぐらする餉台の上には馬鈴薯じゃがいもと大根とのごった煮と冷たい飯とだけだった。それでもすきっ腹には旨かった。
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
お婆あさんは馬鈴薯じゃがいもを煮てゐたんですが、暫く鍋の中を見ないで放つておいたものですから、水が一雫もなくなつて了つて、半焦げになつてゐましたよ。
午前十時が鶏卵けいらん半熟はんじゅく一つとやきパン二十瓦即ち五匁、昼食ちゅうじきがよく叩いたビフステーキ百瓦即ち二十五匁、砕きたる馬鈴薯じゃがいも二百瓦即ち五十匁、あめ二十瓦即ち五匁
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「ああ、」と母親は言った、「大きい馬鈴薯じゃがいもを三つと塩を少し。ちょうど火があるから焼いたんだよ。」
「牛肉と馬鈴薯ばれいしょ」といえば、独歩の小説から連想しても、北海道には野となく丘となくふかし立ての馬鈴薯じゃがいもが雪のように積り、熊の毛皮を着た髭むじゃのアイヌやシャモが
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
草をむしれ、馬鈴薯じゃがいもを掘れ、貝を突け、で、焦げつくやうな炎天、よる毒蛇どくじゃきり毒虫どくむしもやの中を、むち打ち鞭打ち、こき使はれて、三月みつき半歳はんとし、一年と云ふうちには、大方死んで
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「僕あ、そんなことより、一度でいいから、馬鈴薯じゃがいもの揚げたのを、皿から、手づかみで食ってみたい。それから、桃を半分、種のあるほうだぜ、あいつをしゃぶってみたいよ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
大鋸おおがのひびきも斧の音もきこえず、馬鈴薯じゃがいも辣薤らっきょうか、葉っぱばかりさやさや揺れているしんとした山岨やまそばの段々畑から派手なような寝ぼけたような歌ごえが聞えてくるというのは
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
コトレツ・ミラネーズとウィンナー・シュニッツレルのことなるところは前者は伊太利風のマカロニかスパゲチを付けあわせとしてり、後者が馬鈴薯じゃがいもを主な付け合せとしていることで
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
馬鈴薯じゃがいもとにんじんを賽の目に切ったのをつけ合せたカツレツと、焦げめのつくほどコロコロに揚げたカキのフライを、六区の池のまえにあったある店のどんぶりに入れたシチューを、ちんや横町の
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ボリビアでは馬鈴薯じゃがいもに粘土のソースをかけて食う。ペルシアでも塩気のある土を食う。それからセネガル地方では米に土を交ぜて食うが、これは単に腹をふくらせるためで味がよいためではないらしい。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
炉には馬に食わせるとかの馬鈴薯じゃがいもを煮る大鍋が掛けてあったが、それが小鍋に取替えられた。細君が芋を入れれば、亭主はその上へふたを載せる。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
英国の天子が印度インドへ遊びに行って、印度の王族と食卓を共にした時に、その王族が天子の前とも心づかずに、つい自国の我流を出して馬鈴薯じゃがいも手攫てづかみで皿へとって
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
馬鈴薯じゃがいもうて来ることを巳代公みよこうに頼むと云って、とめやがくわで地をる真似をして、ゆびまるいものをこさえて見せて、口にあてゝ食うさまをして、東を指し北を指し
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「イヤ実地ったのサ、まア待ち給え、追い追い其処そこへ行くから……、その内にだんだんと田園が出来て来る、おも馬鈴薯じゃがいもを作る、馬鈴薯さえ有りゃア喰うに困らん……」
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
このホテルは日本風ではあるが、西洋風に経営されていて、それ迄の、各様な日本食の後をうけて、半焼のビフテキ、焼馬鈴薯じゃがいも、それからよい珈琲コーヒーは、誠に美味であった。
馬鈴薯じゃがいものスープ 冬付録 病人の食物調理法の「第四十六 ジャガ芋のスープ」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
あんずの罐を開き、とりの毛をむしり、麺麭パン屋へ駈けつけて、鶏の死骸が無事にパン焼竈やきかまどに納ったのを見届けて駈けもどり、玉菜ぎょくさいをゆで、菠薐草ほうれんそうをすりつぶし、馬鈴薯じゃがいもを揚げ、肉にころもをつけ、その合間には
国土くにつちのはたてに我は来りけり薄紫の馬鈴薯じゃがいもの花
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
ソバ、馬鈴薯じゃがいも、大根、黍は霜害にて無し。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
馬鈴薯じゃがいもの皮をく器械
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ある日、音吉が馬鈴薯じゃがいもの種をかごに入れて持って来て見ると、漸く高瀬は畠の地ならしを済ましたところだった。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
少しはむらさきがかった空気の匂う迷路メーズの中に引き入れられるかも知れないくらいの感じがあんに働らいてこれまで後をけて来た敬太郎には、馬鈴薯じゃがいもや牛肉を揚げる油のにおい
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此夕台所だいどこで大きな甘藍きゃべつはかりにかける。二貫六百目。肥料もやらず、移植いしょくもせぬのだから驚く。関翁が家の馳走ちそうで、甘藍の漬物つけもの五升藷ごしょういも馬鈴薯じゃがいも)の味噌汁みそしるは特色である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「だって北海道は馬鈴薯じゃがいもが名物だって言うじゃアありませんか」と岡本は平気でたずねた。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
馬鈴薯じゃがいも 七六・八〇 一・四九 〇・一〇 一九・二二 一・三六 一・〇三
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「や、驚いた。馬鈴薯じゃがいもの花だな。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
裏の畠には、学校の小使に習って、豆、馬鈴薯じゃがいも、その他作りやすい野菜から種をいた。葱苗ねぎなえを売りに来る百姓があった。三吉の家では、それも買って植えた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬鈴薯じゃがいも煮方にかた 春 第三十二 料理の原則
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
裏のはたけの野菜も勢よく延びて、馬鈴薯じゃがいもの花なぞが盛んに白く咲く頃には、ようやく三吉も暇のあるからだに成った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
貯えた野菜は尽き、ねぎ馬鈴薯じゃがいもの類まで乏しくなり、そうかと言って新しい野菜が取れるには間があるという頃は、毎朝々々若布わかめ味噌汁みそしるでも吸うより外に仕方の無い時がある。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私はまた、裏の流れに近いはたけの一部を仕切って借りて、学校の小使に来て手伝わせたり、自分でもくわを執って耕したりした。そこには、馬鈴薯じゃがいも、大根、豆、菜、ねぎなどを作って見た。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)