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鎚
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つち
ふりがな文庫
“
鎚
(
つち
)” の例文
たちまち
姿
(
すがた
)
は見えずなって、四五
軒
(
けん
)
先の
鍛冶屋
(
かじや
)
が
鎚
(
つち
)
の音ばかりトンケンコン、トンケンコンと残る。亭主はちょっと考えしが
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
何よりは、そなたに取って、共に
鎚
(
つち
)
を持ち、刀の鍛錬を
究
(
きわ
)
めるに、よい相手がない。弟子もない。それを環は苦にしていやる。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心臓の扉を
黄金
(
こがね
)
の
鎚
(
つち
)
に
敲
(
たた
)
いて、青春の
盃
(
さかずき
)
に恋の血潮を盛る。飲まずと口を
背
(
そむ
)
けるものは片輪である。月傾いて山を慕い、人老いて
妄
(
みだ
)
りに道を説く。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鳥の身体や脚はただ
鎚
(
つち
)
でたたいて鍛え上げたばかりの鉄片を組合せて作ったきわめて簡単なもののように見える。鉄はところどころ赤く錆びている。
夢
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
弓掛の部落を
遮
(
さえぎ
)
っている
蛇骨峠
(
じゃこつとうげ
)
を一つ越すと、天蓋山の鉱山で、昼夜分かたず噴煙が硫気を含んで立ち昇り、熔鉱炉の煮える音、
鉱石
(
かないし
)
を砕く
鎚
(
つち
)
の音
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
なれども、ルルがあの噴水を
治
(
なお
)
してしまうまでは待ってたもれよ。それももう長いことではない。ミミよ、お聞きやれ。あのルルの打つ
鎚
(
つち
)
の
音
(
ね
)
の勇ましいこと
ルルとミミ
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
とだけん
(著)
平生は鉄工所でどんがんする
鎚
(
つち
)
の音、紡績会社の器械のうなり、汽笛の響、
有
(
あ
)
らゆる諸工場の雑多な物鳴り等、大都会の騒々しさも、今日は一切に耳に入らない。
大雨の前日
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
カーン……カーン! ときょうも近所の刀鍛冶で
鎚
(
つち
)
を振る音がまのびして聞こえる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
人のごとく物を
抛
(
な
)
げ、物を取り寄せ杖で他を打ち、
鎚
(
つち
)
で栗を破り、
梃
(
てこ
)
で箱の
蓋
(
ふた
)
を開き、棒をへし折り、毛箒の柄の螺旋を捻じ入れ捻じ戻し、握手を交え、
燭
(
しょく
)
に点火してその燃ゆるを守り
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
印半纏
(
しるしばんてん
)
の威勢のいいのでなく、田船を
漕
(
こ
)
ぐお百姓らしい、もっさりとした
布子
(
ぬのこ
)
のなりだけれども、船大工かも知れない、カーンカーンと打つ
鎚
(
つち
)
が、一面の湖の北の
天
(
そら
)
なる、雪の山の頂に響いて
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこへ防護団本部から急ぎの使がやってきて、「至急集合!」を知らせてきたので、仕事はあともう一息だったけれど、そのまま
鎚
(
つち
)
をなげだして、団服を着るのももどかしく、往来へ走りでた。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
火気
(
くわき
)
の
満
(
みち
)
たる
室
(
しつ
)
にて
頸
(
くび
)
やいたからん、
振
(
ふり
)
あぐる
鎚
(
つち
)
に手首や痛からん
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
この村に
鍛冶
(
かぢ
)
が
鋼鉄
(
かうてつ
)
を鍛へ居り
鎚
(
つち
)
のひびきも
日本
(
にほん
)
に似たり
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
赤裸
(
まはだか
)
の
男子
(
おのこ
)
むれゐて
鉱
(
あらがね
)
のまろがり砕く
鎚
(
つち
)
うち
揮
(
ふり
)
て
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
鎚
(
つち
)
で金鉱たゝいてる。
光
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
鎌
(
かま
)
と
鎚
(
つち
)
がとんだ
赤い旗
(旧字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
小説構成の都合などで、
強
(
し
)
いてそれを
歪
(
ゆが
)
めれば、ぼくの仕事は、自分で造った彫像を自分の
鎚
(
つち
)
で砕いてしまうのと同じ結果になってしまう。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「自由をわれらに」における工場の
鎚
(
つち
)
の音、「人生案内」の線路工事の
鉄挺
(
てってい
)
の音の使用などのようなのがそれである。
映画芸術
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鍛冶、染物、
皮革
(
ひかく
)
などの職人のみが多く住んでいる裏町の一
劃
(
かく
)
は、
鞴
(
ふいご
)
の赤い火や、
鎚
(
つち
)
の音や、働くものの
喚
(
わめ
)
きなどで、夜も日もあったものではない。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
桃太郎が鬼が島を征服するのがいけなければ、東海の
仙境
(
せんきょう
)
蓬莱
(
ほうらい
)
の島を、
鎚
(
つち
)
と
鎌
(
かま
)
との旗じるしで征服してしまおうとする赤い桃太郎もやはりいけないであろう。
さるかに合戦と桃太郎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
『いや、止しましょう。刀を見ると、又、鍛冶小屋が恋しくなって、兄のように、自分も
鎚
(
つち
)
を持ちたくなります』
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ビオルンは
斧
(
おの
)
をふるってその背を
鎚
(
つち
)
にして敵の肩を打つとフンドはよろめいて倒れんとした。トールスタイン・クナーレスメドは斧で王を撃って左のひざの上を切り込んだ。
春寒
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
『兄は、上田の御城下に住む、
河村寿隆
(
かわむらかずたか
)
の門に
習
(
まな
)
び——私はその兄から、十三四歳の頃より、
鎚
(
つち
)
の打ち方、重ね
鉄
(
かね
)
の仕方、土取り、火入れまで教わりました』
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なんでも大きなラッパのようなものをこしらえて、それをあの池の水中に沈め、別の所へ、小さなボイラーを沈めたのを
鎚
(
つち
)
でたたいて、その音を聞くような事をやったように覚えている。
池
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
真っ黒な小屋の中には、あら金のような、男たちが、
韛
(
ふいご
)
をかけたり、炭を
焚
(
た
)
いたり、
鎚
(
つち
)
を振ったり、そして
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしそれよりも、もっと直接に自覚的な筋肉感覚に訴える週期的時間間隔はと言えば、歩行の歩調や、あるいは
鎚
(
つち
)
でものをたたく週期などのように人間
肢体
(
したい
)
の自己振動週期と連関したものである。
空想日録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この部落には、
鍬鍛冶
(
くわかじ
)
が住んでいるとみえて、どこかで
鎚
(
つち
)
の音が、かあーん、てえーん、
長閑
(
のどか
)
に聞える。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
欒廷玉
(
らんていぎょく
)
が、加勢に飛んで来たのである。はッと、
欧鵬
(
おうほう
)
は馬を
交
(
か
)
わした。けれど、欒廷玉が振り下ろしたくろがねの
鎚
(
つち
)
は、せつな、欧鵬のどこかにぶつかったらしい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
桶狭間
(
おけはざま
)
の一戦の
大捷
(
たいしょう
)
は、さすがに十日余りも、
清洲
(
きよす
)
の城下を昂奮の
坩堝
(
るつぼ
)
と化して、盆も夏祭も一緒に来たような騒ぎだったが、それも常態に
回
(
かえ
)
ると、
鍛冶
(
かじ
)
の家には
鎚
(
つち
)
の音が聞え
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それをいま、高時が、さも憎げに「この時もよそにして、久しく顔も出しおらん」と、怒りをもらしたので、道誉にすれば、高氏の
殻
(
から
)
を割る、
勿怪
(
もっけ
)
な
鎚
(
つち
)
の
柄
(
え
)
と、すぐ考えられていた。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宋江は
耳朶
(
じだ
)
の辺に、じんと
鎚
(
つち
)
で
焼
(
や
)
き
鉄
(
がね
)
を打たれたような鈍痛を感じた。ぐらとしてくる。
下袴
(
したばかま
)
をはくのも帯を締めたのも夢中だった。両手で扉を突くやいな、どどどと階段を降りて行った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鎚
(
つち
)
の音が近くなる。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鎚
(
つち
)
の音がする。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“鎚(
槌
)”の解説
槌(つち)とは、物を打ち付けたり、潰したりする工具の総称。英語からハンマー(hammer)とも。漢字では、打撃部分が木製のハンマーを槌、打撃部分が金属製のハンマーを鎚と書く。「かなづち」はもっぱら「鎚」の方を意味する。
(出典:Wikipedia)
鎚
漢検準1級
部首:⾦
17画
“鎚”を含む語句
鉄鎚
鉗鎚
相鎚
大鉄鎚
大鎚
金鎚
鎚音
石鎚
小鎚
流星鎚
鐵鎚
鎚矛
蒸気鉄鎚
一鎚
本鎚
才鎚環
向鎚
合鎚
反鎚