あか)” の例文
金蔵の南の方に用水井戸がありますが、井桁いげたが栗材で、これは石に縁がなく、雨樋あまどいは水に縁があっても、あかですからかねに縁を生じます。
というように、緋錦紗ひきんしゃの厚い座ぶとんへ右門をすわらせると、女はあか銅壺どうこのふたをとってみて、ちょっと中をのぞきました。
あか鬢盥びんだらいへ殆んど一杯ほども吐き、そのまま気を失ってしまった。お豊のはせきたんも出ず、躯が痩せるというのでもなかった。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
万年筆といってもその実小児瞞こどもだましの玩具にすぎぬ。あかの薄く延ばしたのを長さ二寸ぐらいの管にして、先を細くすぼめて、元口へ木の栓をする。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
そら近頃このごろ出来たパン屋の隣に河井さんて軍人さんがあるだろう。彼家あそこじゃア二三日前に買立のあかの大きな金盥かなだらいをちょろりとられたそうだからねえ
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
すぐそこにえられたあかの金具の光るかさ箪笥だんすの一番下の抽斗ひきだしを開けた。そうして底の方から問題の外套がいとうを取り出して来て、それを小林の前へ置いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それがあたしの手腕うででさあね。もとはあかなんだけれど、ちょいとしたこつで黄金こがねに見えるんだよ。あたしはこの術を切支丹屋敷きりしたんやしき南蛮人なんばんじんに聞いたんでね。
薄いあかの早鍋は蓋の隙間から白い湯氣を吹き立たしてゐた。横の方に据ゑた四斗樽は杉の香がまだ新しくて、呑口からは芳ばしい滴がしたゝりさうであつた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「よく寝た」そう言って道太が高い流しの前へ行くと、彼女は棚からあか金盥かなだらいを取りおろして、ぎいぎい水をあげはじめた。そして楊枝ようじや粉をそこへ出してくれた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そのお盆は日本のようなものではなくあかの皿のような風になって中に白鍍金しろめっきがしてあるのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この宿の内儀さんは未だ處女むすめらしいところのある人で、爐邊ろばたで吾儕の爲に海苔を炙つた。下女は油差を見るやうなあかの道具へ湯を入れて出した。こゝの豆腐の露もウマかつた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あかだって、一分もある厚いやつを使ってあるんで……。それにあの針と来たら、少し曲ってはいるが、ああいう風にだんだんと尖端さきの方にゆくにつれて細くするには、とても骨を折った。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
ほんのり色付いた桜の梢を雲のようにして、その上に寛永寺かんえいじあか葺屋根が積木のようになって重なり合い、またその背後には、回教サラセン風を真似た鋭い塔のさきや、西印度式の五輪塔でも思わすような
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
がらくた壇上に張交はりまぜの二枚屏風にまいびょうぶ、ずんどのあかの花瓶に、からびたコスモスを投込んで、新式な家庭を見せると、隣の同じ道具屋の亭主は、炬燵櫓こたつやぐらに、ちょんと乗って、胡坐あぐらを小さく、風除かぜよけに
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だが、この彩色にもおつ魂消るけれど、このあかの把手と来ちやあ
「金の茶釜を盗むあわて者があったんだろう、家へ持って帰ってき込むとあかになる奴さ。銅壺どうこの代りにもなるめえ」
頭の天辺てっぺんの薄くなった亭主が、あか延片のべぎれを型へ入れて巻いている。すると、櫛巻の女房が小さい焼鏝やきごてを焼いて、管の合せ目へ、ジューとハンダを流す。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
天秤棒は細手の、飴色あめいろみがきこんだ、特別製のようであり、手桶はすぎ柾目まさめで、あかたががかかっていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ひょいとみると、あか銅壺どうこに好物がにょっきりと一本かま首をもたげていたものでしたから、ことごとくもう上きげんで、とくりのしりをなでなでかんかげんを計っていると、突然でした。
長火鉢と云うとけやき如輪木じょりんもくか、あか総落そうおとしで、洗髪あらいがみの姉御が立膝で、長煙管ながぎせる黒柿くろがきふちへ叩きつける様を想見する諸君もないとも限らないが、わが苦沙弥くしゃみ先生の長火鉢に至っては決して
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
惜し気もなくあか大火鉢おおひばちちまけたが、またおびただしい。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きんの性はわるいで、見いあかの色がしてるやないか。」
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
佐久間家の表掛りの磨き立てたあかの金具に、クヮッと夕陽の照りはえる頃、一本歯の足駄を踏み鳴らした修験者玄沢坊、表の入口一パイに立ちはだかって
その男はきれいな手桶ておけを二つ、天秤棒てんびんぼうで担いでやって来た。天秤棒は細手の、飴色あめいろに磨きこんだ、特別製のようであり、手桶は杉の柾目まさめで、あかたががかかっていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「親分、香爐はまが備前燒びぜんやきのと、あかのと、たつた二つ切りで青磁なんかありませんぜ」
長火鉢にはよく磨いたあか銅壺どうこがあり、かん徳利が二本はいっている。その部屋は帳場を兼ねた六帖の茶の間で、徳利や皿小鉢やさかずきなどを容れる大きな鼠不入ねずみいらずと、茶箪笥ちゃだんす、鏡台などが並んでいる。
ひとでなし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「親分、香炉はまが備前焼びぜんやぎのと、あかのと、たった二つきりで青磁なんかありませんぜ」
金の鈴、銀の鈴、眞鍮しんちうの鈴、あかの鈴、——足結あゆひの鈴、手の鈴、くしろの鈴、大刀の鈴、鈴鏡すゞかゞみ。さては犬の鈴、たかの鈴、凡そ鈴と名の付くものなら何でもある——鈴は要りませんかな——
金の鈴、銀の鈴、真鍮しんちゅうの鈴、あかの鈴、——足結あゆいの鈴、手の鈴、くしろの鈴、大刀の鈴、鈴鏡、さては犬の鈴、鷹の鈴、およそ鈴と名の付くものなら何でもある——鈴はりませんかな——
鍋のかけら、あかの薬缶、鉄鍋、真鍮の煙管きせる、何でも同じこと、お望みなら山吹色の小判でも、貴方あなたがたの鼻の先で、見事瞬きする間に銀にしてお目にかける、嘘だと思う方は煙管でも、かんざしでも