金毘羅こんぴら)” の例文
八幡さま、金毘羅こんぴらさま、春日かすがの宮の神さま達! あれあれ、お師匠様はだんだん敵の前へ歩いてゆきます。正気の沙汰ではありません。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘を連れて金毘羅こんぴらまいりと申したのも、実は四国西国の信者をたずねて、それと同じような有難い絵像をたくさん拝んで来たのでござります。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
このあたりで航海者はよく金毘羅こんぴらへ向ってお賽銭を上げたものである。それは薪を十文字に結わえ、それに銭を結付けて海に投込むのである。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
私は近頃数寄屋橋外すきやばしそとに、虎の門金毘羅こんぴらの社前に、神田聖堂せいどうの裏手に、その他諸処に新設される、公園の樹木を見るよりも
忘れて打喜うちよろこびやれ/\嬉しや南無金毘羅こんぴら大權現だいごんげん心願しんぐわん成就じやうじゆ有難やとなみだを流して伏拜ふしをがみテモマア此寒さに御機嫌ごきげんよくと藤三郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
五百石積の金毘羅こんぴら船が、皆それぞれ、紅白の幟を風にひるがへして、川口を海へのり出した時の景色は、如何いかにも勇ましいものだつたさうである。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
伊勢いせへ、津島へ、金毘羅こんぴらへ、御嶽おんたけへ、あるいは善光寺への参詣者さんけいしゃの群れは一新講とか真誠講とかの講中を組んで相変わらずこの街道にやって来る。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
金毘羅こんぴらさんの坊ちゃんでしたわね。いつかお目にかかったことのある方だと思っていたんですよ。」
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「何んぼ何んでも、お時さんを忘れるちふことがあるか。……千代さんとこのお時さんやないか、お前がお針を教へたし、金毘羅こんぴらさんへも一所に參つたやないか。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
金毘羅こんぴらで講元をしていた大きな無尽の掛け金を持って、お庄は取りすがるこの子供をおぶいながら、夕方から出かけて行った。ここから金毘羅まではかなりの道程みちのりであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
尤も越後屋の主人の金兵衞が、今から五年前讃岐さぬき金毘羅こんぴら樣へお詣りに行つた時、志度しどの浦の海女あまだつたのを見染めて、江戸へ連れて來て磨き拔いた女だといふことだがね
「先生、ぼくはもう、金毘羅こんぴらさんやこい、うちの網船あみぶねで、三べんもいったから、いきません」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ほんのこったがわっしゃそれご存じのとおり、北廓なかを三年が間、金毘羅こんぴら様にったというもんだ。ところが、なんのこたあない。はだ守りを懸けて、夜中に土堤どてを通ろうじゃあないか。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分たちと一緒に京大阪から金毘羅こんぴらまでも……とまでは言わず、いずれその辺は今晩にも、ゆっくり御相談を致しましょう、お疲れでございましょうから……お風呂をお召しになって
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分も一死がその分であるとは信じている。しかし晴がましく死なせることは、家門のためにも、君侯のためにも望ましくない。それゆえ切腹に代えて、金毘羅こんぴら起請文きしょうもんを納めさせたい。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
金毘羅こんぴら宮なりなどの霊験いと皓著なるをいかんとかする
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
お千代さんとこはこの間金毘羅こんぴらさまの帰りに表まで一緒に来ましたから。それでお知らせしに来ましたの。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
太神楽だいかぐらもはいり込む。伊勢いせへ、津島へ、金毘羅こんぴらへ、あるいは善光寺への参詣さんけいもそのころから始まって、それらの団体をつくって通る旅人の群れの動きがこの街道に活気をそそぎ入れる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お供で行つた鳶頭かしらにおだてられて、草鞋わらぢをはいたついでに、路用もふんだんにあることだし、親の骨を高野山に納めたら、讃岐さぬき金毘羅こんぴら樣に廻つて、嚴島いつくしまにお詣りして、京、大阪を見物して
六年生の秋の修学旅行は、時節じせつがらいつもの伊勢いせまいりをとりやめて、近くの金毘羅こんぴらということにきまった。それでも行けない生徒がだいぶいた。働きにくらべて倹約けんやく田舎いなかのことである。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
年来の宿願しゅくがんであった金毘羅こんぴらまいりを思い立って、娘のおげんと下男の儀平をつれて、奥州から四国の琴平ことひらまで遠い旅を続けて、その帰りには江戸見物もして、今や帰国の途中であると話した。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とら此乞食このこじきめと人中ひとなかにて散々さん/″\のゝしはづかしめければ今は四郎右衞門もはらすゑかね大いにいきどほりけれどもとてもうでづくにてはかながたしと思ひ其日もこらへて歸りしが不※ふと心付こゝろづき日來ひごろ信心しんじんなす金毘羅こんぴら祈誓きせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
多度津たどつへ着いて、金毘羅こんぴらへ參つて、其處で二晩泊つて、鞘橋さやはしの上で魚のやすいのに驚いたりして、善通寺から丸龜へ出て、其處から便所のない和船に乘つて、つうじをもよほしたのをこらへ/\て備中びつちゆうへ渡つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いつか普及せられてコスモスの流行はやるころには、西河岸の地蔵尊、虎ノ門の金毘羅こんぴらなどの縁日えんにちにも、アセチリンの悪臭鼻を突く燈火の下に陳列されるようになっていた。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
旧暦四月はじめの旅するによい季節を迎えて、上り下りの諸講中こうじゅうが通行も多い。伊勢いせへ、金毘羅こんぴらへ、または善光寺へとこころざす参詣者さんけいしゃの団体だ。奥筋へと入り込んで来る中津川の商人も見える。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「時やん、此處へ來て金毘羅こんぴら參りの話でもしいんかいな。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「あらそう。でもみんなといくの、はじめてでしょう。いきなさいよ。あんたは網元だからこれからだって毎年いくでしょうがね。先生いっとくから。修学旅行の金毘羅こんぴらまいりが一ばんおもしろかった、とあとできっと思いますからね」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
得たれば江戸風えどふうに氣がきいて居るとか云れて評判ひやうばんよく少光陰わづかの中に仕出して段々だん/\普請ふしん建直たてなほし今にては勿々なか/\立派りつぱなる身上しんしやうになりしといふ金毘羅こんぴらへ行たる者が歸りてのはなしなり丸龜にて江戸屋清兵衞と云ば一番の旅宿はたごやだと云事なればよろこ旁々かた/″\たづね度は思ひしか共五日や十日にては
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
毅堂の新に居をぼくした竹町四番地の家は旧寄合生駒よりあいいこま大内蔵の邸内にまつられた金毘羅こんぴら神社とその練塀ねりべいを連ねた角屋敷かどやしきで、旧幕府作事方さくじかたの役人が住んでいた屋敷であったということである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そりゃ権現ごんげんさまもあり、妙見みょうけんさまもあり、金毘羅こんぴらさまもある。神さまだか、仏さまだかわからないようなところは、いくらだってある。あらたかでありさえすれば、それでいいじゃありませんか。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)