趨勢すうせい)” の例文
それで、各地方でこういう風の日々変化の習性に通じていれば、その変化の異常から天気の趨勢すうせいを知る手がかりが得られるわけである。
海陸風と夕なぎ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
さればいやしくも社会の表面に立ちて活動せんと欲するものは、政治家であれ、実業家であれ、教育家であれ、絶えず時代の趨勢すうせいに着目して
我輩の智識吸収法 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
生贄の是認せらるべき趨勢すうせいは有りもしようが、觳觫こくそくたる畜類の歩みなどを見ては、人の善良な側の感情から見て、神に献げるとは云え
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そしてしだいに世論の趨勢すうせいを一定さして、故国の名誉たる大芸術家に故国の門を開いてやるべき勅令を、皇帝から得させようとつとめた。
この趨勢すうせいの間に伍して、閑却せられた民藝の価値を私は語ろうとするのです。なぜ語るに足りるか、語るべきであるか、語らねばならぬか。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
私は一人の婦人教育家をも加えない教育会議というものは全く世界の趨勢すうせいを透察せず、日本の女子を蔑視べっしした不親切きわまる組織だと考えます。
三面一体の生活へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
酒の個人的または家長専制的なるに反して、菓子の流布には共和制の趨勢すうせいといおうか、少なくとも男女同等の主張が仄見える。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
止むを得ない、社会の趨勢すうせいで、青年がドウしても海軍に行きたがるようになった時には、これを押え附けることは出来ない。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
山名時氏のごときは、きのうまで尊氏の下にいたのに、この趨勢すうせいを見ると、尊氏を離れ、一夜、とつぜん直義方の八幡やわたの陣へ投じてしまった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるにそののち趨勢すうせいとみに一変して貿易市場における信用全く地に落ち、輸出高益〻ますます減退するの悲況を呈するに至れり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
禁裡きんり守衛総督摂海防禦せっかいぼうぎょ指揮の重職にあって、公武一和を念とし、時代の趨勢すうせいをも見る目を持ったこの人は、何事にも江戸を主にするほど偏頗へんぱでない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
現今の露西亜文壇ぶんだん趨勢すうせいの断えず変っている有様やら、知名の文学者の名やら(その名はたくさんあったが、みんな余の知らないものばかりであった)
長谷川君と余 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つらつら琉球史の趨勢すうせいを見るに、向象賢や蔡温や宜湾朝保の案内するがままに、歩一歩安全なる世界の大勢という潮流に向って進んだのでございます。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
内潰ないかい外逼がいひつ趨勢すうせいは、遂に徳川幕府において、天保の改革を喚起せしめたり。天保の改革は則ち水野忠邦の改革なり。彼は何人なんぴとぞ、彼は何事をせしぞ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「だけど運命の趨勢すうせいはそうはさせませんね。僕は世の中は大たい妥当に出来上っていると思うんです」
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
然れども大正年間に及びていはゆる新傾向の称道を見るに至り俳諧も遂に本来の面目めんもく体裁ていさいを破却せられ漸く有名無実のものとならんとす。これ現代俳句界の趨勢すうせいなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
必要があればいつでも同盟し、必要がなくなればいつでも同盟をやめる。過去の歴史これを証明し、現在の事実これを明示し、将来の趨勢すうせいもまたそのとおりであろうと思う。
人類の生存競争 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
米國經濟界べいこくけいざいかい全般ぜんぱんには何等なんら懸念けねんすべき状態じやうたいみとめざるも、人氣にんき中心ちうしんたる證劵市場しようけんしぢやう大變動だいへんどうきたしたことであるからいきほ生糸相場きいとさうばにも波及はきふして十ぐわつ初旬しよじゆんより低下ていか趨勢すうせいとなり
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
世の中の進歩趨勢すうせいはその停止する所を知らずという有様で、したがってすべての思想界にも、頻々ひんぴん新主義を産出してくる今日であるのに、ことに文学美術の上に写実主義の大潮流は
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こうした発達の趨勢すうせいは無限に存在しているのであって、従って、只、同様に長石類を研究することに依って、より以上に廉価なる材料が発見されようとしてさえいる現状である。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
思想簡単なる時代には美術文学に対する嗜好しこうも簡単を尚ぶは自然の趨勢すうせいなり。わがくに千余年間の和歌のいかに簡単なるかを見ば、人の思想の長く発達せざりし有様も見え透く心地す。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
従って、将来とてもこの趨勢すうせいは更に加速度的に続くものと見なして差支えなかろうと思う。そこで今日の問題について語るに先だって、過去の状態をざっと顧みることにすると——。
これは明治維新以来の欧化趨勢すうせいの一般的な時潮の中にあったものであり、自覚的には、思想的・文化的水準の低かった日本の学者や、思想家としてはやむをえない状態でもあったのである。
現今科学の趨勢すうせいはできるだけ客観的ならんことをつとめている。それで心理現象は生理的に、生理現象は化学的に、化学現象は物理的に、物理現象は機械的に説明せねばならぬこととなる。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
誠に我らが希望のぞみとはことごとく反対の有様じゃ。これがいまの日本ひのもと趨勢すうせいでござるよ。——そこでこの私は考えたのじゃ。せめて我らのご主君たる脇屋殿と神保様とを是非とも和睦させねばならぬ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こういう趨勢すうせいって来たるところは、電子の粒子性の実験結果に誘導されて、いつの間にか、誰もが電子を、野球のボールを極端に小さくしたものというふうに、思い込んでいたからである。
比較科学論 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
また当時の美術界に重きをせる人々の所説をも聞き、明治十三年以降その当時に及んでいる斯界しかい趨勢すうせいの大略をも知ることが出来、また、その現在の有様をも了解することが出来たようなわけで
とくと観察するに、壺中の石の配置や光線が網眼に映る工合、蠅を飛び下す小孔の位地から蠅を持ち行きやる人の手の左右など、雑多の事情に応じて、蠅が孔より飛び入る方角趨勢すうせいがほぼ定まりある。
自然の趨勢すうせいは逆ふこと能はず、吾は彼の一種の攘夷論者と共に言を大にし語を壮にして、東洋の危機を隠蔽せんとするにあらず、もしつまびらかに吾が宗教、吾が政治、吾が思想、吾が学術を究察する時は
一種の攘夷思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
もし俳句の趨勢すうせいがいよいよ進んで
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
愉快に感じると同時に自分も知らず知らずその趨勢すうせいに刺激されて、ついがらにない方面にまで空想の翼を延ばしたくなったようなわけである。
日本楽器の名称 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
後者が圧迫のために蒙昧もうまいなる山人の状態に退歩して行った趨勢すうせいも、このわずかなる共通の言語から想像し得らるるのである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼は、書簡のうちに、天下の趨勢すうせいやら、利害やらこまごま書いて、公私の両面から、説破を筆に尽したが、なお念のために
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はこれ等の趨勢すうせいが、時代の要求として成し遂げた大きな働きについて疑うものではありません。幾多の個人的天才が立派な仕事を残しました。
民芸の性質 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
新刊書なり新聞雑誌なり、時代の趨勢すうせいを知るものを備えて、業務の暇に新智識の吸収に努めたならどんなものであろうか。
我輩の智識吸収法 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
あれは時代の趨勢すうせいに着眼して幕政改革の意見をいだいた諸国の大名や識者なぞの間に早くから考えられて来たことだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
君は九州のいなかから出たばかりだから、中央文壇の趨勢すうせいを知らないために、そんなのん気なことをいうのだろう。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
英国の富豪モーズレーは、世界の趨勢すうせいかんがみるに、独逸と亜米利加とは国運勃興の徴候が見えている。然るに独逸は国土に限りがあるが、亜米利加はトント限りがない。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
藤田は佐久間に比すれば芸術なり、横井に比すれば眼界小なり、しかれども国家経綸の大綱を提げ、社会動乱の趨勢すうせいを握るの辣快らっかい雄敏なるにおいては、おのずから独歩の地なくんばあらず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
我邦わがくに現代における西洋文明模倣の状況をうかがひ見るに、都市の改築を始めとして家屋什器じゅうき庭園衣服にいたるまで時代の趣味一般の趨勢すうせいに徴して、うたた余をして日本文華の末路を悲しましむるものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
必然な時代の趨勢すうせいと、無用の死は、真の勇者のとる道でない所以ゆえんを説いて、城の一門を、戦わずに、解かせたのであった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この趨勢すうせいが世界を支配している故、敢えて「民藝」の声を強めるのである。もしこの輿論よろんが起らなかったら、工藝はその正しい歴史を閉じるであろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
苫田とまた郡が四つ、勝田郡が二つというように小さく分れていたが、荘郷分合の趨勢すうせいもすべてこれと同様であってその命名法のごときもきわめて自然である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だからして世界向後こうご趨勢すうせいは自殺者が増加して、その自殺者が皆独創的な方法をもってこの世を去るに違ない
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
松平春嶽、山内容堂、この二人ふたりはそれぞれの立場にあり、領地の事情をも異にしていたが、時代の趨勢すうせいに着眼して早くから幕政改革の意見をいだいたことは似ていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
環境の趨勢すうせいや民心の流露を無視したのでは、到底その機関の円滑な運転は望まれないらしい。
「手首」の問題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「この現状を、一山の大衆はなんと見らるるか。この趨勢すうせいのまま、っておいてよいものか。しからずんば一山皆吉水へくだって、袈裟けさを脱ぐか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現在の組織と機械と労働とは、誠実な器物を産むには適しないのです。今の趨勢すうせいを見ると、誠実な品は、愚鈍な品であるとあざけられるようにさえ見えます。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
人間としてこの性質を帯びている以上は作物の上にも早晩この性質を発揮するのが天下の趨勢すうせいである。
文壇の趨勢 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
間接には数千年来の国内植民の趨勢すうせいも明らかになることであるが、不幸なることにはわが邦にはこの種の書籍もなく、しかもたびたびの混乱を経た今日となっては
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)