赤黒あかぐろ)” の例文
広田先生は又立つて書斎につた。かへつた時は、手に一巻の書物を持つてゐた。表紙が赤黒あかぐろくつて、くちほこりよごれたものである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
じゅくしたイチゴのばっかり、もうすっかり赤黒あかぐろくうれているのがいっぱい、雪のなかからあらわれてきたではありませんか。
そのために、うちわのいてあるおもてが、赤黒あかぐろげてしまったのです。そして、しょうちゃんのおかあさんもげてしまいました。
遠方の母 (新字新仮名) / 小川未明(著)
十時を過ぎた頃、一呼吸ひといきかせて、もの音は静まったが、裾を捲いて、雷神はたたがみを乗せながら、赤黒あかぐろに黄を交えた雲が虚空そらへ、舞い舞いあがって、昇る気勢けはいに、雨が、さあと小止おやみになる。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かかるとき、偶偶たまたますゝけたる赤黒あかぐろき空氣の幕が
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
赤黒あかぐろい島
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おじいさんと、おばあさんは、その赤黒あかぐろこなめしにかけてべました。しかし、そのにおいほど、あまり、うまくはありません。
片田舎にあった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぎたころ一呼吸ひといきかせて、ものおとしづまつたが、すそいて、雷神はたゝがみせながら、赤黒あかぐろまじへたくも虚空そらへ、ひ/\あがつて、のぼ氣勢けはひに、あめが、さあと小止をやみにる。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御米およねのぶら/\ししたのは、あきなかぎて、紅葉もみぢ赤黒あかぐろちゞれるころであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みんなは、毎日まいにち潮風しおかぜにさらされているとみえて、かおいろが、って、赤黒あかぐろかった。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふゆことでの、前兆ぜんてうべい、八尺余はつしやくよつもつたゆき一晩ひとばんけて、びしや/\とえた。あれまつあをいわ、とうちに、てん赤黒あかぐろつて、きものといきものは、どろうへおよいだての。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すこしくると、魚屋さかなやがありました。みせさきのだいうえに、おおきながおいてありました。そのにくいろは、おどろくばかり毒々どくどくしく、赤黒あかぐろくて、かつて、さかなでは、こんなのをたことがありません。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
てつぼうつゑをガンといつて、しりまくりのたくましい一分刈いちぶがり凸頭でこあたまが「麹町かいぢまち六丁目ろくちやうめやけとるで! いまぱつといたところだ、うむ。」と炎天えんてんに、赤黒あかぐろい、あぶらぎつたかほをして、をきよろりと、かたをゆがめて
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)